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キリスト生誕

キリスト生誕日。マリア様が3月25日に受胎告知を受けて、ぴったり9カ月です。



人間は、アダムとイヴが犯した罪のため生まれながらにして罪人でしたが、イエス(=救世主)の誕生により罪から解放されます。そのため生誕直後の場面は、救済の希望の光が世界に現れた瞬間として大切です。このテーマを扱った数々の名作が生み出されてきました。



私のお気に入りの作品はヒューゴ・ファン・デル・フースの「ポルティナーリ祭壇画」です。主が誕生して、羊飼い達がすぐに駆けつけた様子が描かれています。


ヒューゴ・ファン・デル・フース 「ポルティナーリ祭壇画」 1477-78年 ウフィツィ美術館


左右のパネルの裏(事実上祭壇画の扉)にはモノクロの「受胎告知」が描かれる

作品の名になっているポルティナーリは、依頼者のトンマーゾ・ポルティナーリというフィレンツェの銀行家です。メディチ家が今のベルギーにあるブリュージュという街に支店を開く時、その責任者として派遣されました。在任中、ポルティナーリ家縁の病院に送るために、現地の画家ヒューゴ・ファン・デル・フースに依頼したのがこの祭壇画です。



制作された1470年代、フィレンツェではルネッサンスが花開き、立体的な人体、遠近法を用いた奥行き感のある描写が一般的でした。ですが、ベルギーの辺りではまだ人物はひょろっとした体で人物の配置が不自然でした。



ですが細部の描写は素晴らしく、本物の花や衣がつけられている様に明確です。いつもこの作品の前に立つ時、手前の天使が着た荘厳な衣装に目が奪われます。鮮やかな色も模様を織りなす線も、光の当たり具合によって繊細に輝く金も見ていて飽きません。



それと、右手奥でイエスを礼拝する羊飼いたちの表現も素晴らしいです。優しい目もさることながら、彼らの手にも注目です。ゴツゴツとした手からは力仕事や土仕事をしていることが伺えます。仕事を急いで切り上げてきたのか、爪が黒く汚れています。



この様な細やかさは当時フランドルと呼ばれた、ベルギー周辺の画家たちの特徴です。



この作品はウフィツィ美術館にあります。ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロなどのイタリアの画家達の方が目立つきらいがありますけど、フランドル絵画も魅力的です。見れば見るほど、顕微鏡を覗いたような細部の描写に驚かされます。



ウフィツィ美術館にいらした時の参考になさって見てください。

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フィレンツェ歩き ここだけの話
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