おひとりさま旅行記vol.4 仙台・塩釜
さいちのおはぎ、いたがきのフルーツロール、白謙のかまぼこ、阿部かまのひょうたん揚げ…
このあたりを知る人はなかなかの仙台ツウだろう。
仙台には4年ほど住んでいたことがある。
初めて関東を離れて住んだところだったから妙な高揚感があったし、引っ越す前に訪れた時の「私、ここ好き!」と強く湧き上がった感覚を今でも覚えている。
いわゆる都会育ちの私にとっては宮城のどこへ出掛けても新鮮で、仙台中心部の便利さと田舎の恵みを両方味わえる暮らしというのは毎日がお祭りみたいな気分だった。
関東へ帰ってきてからしばらくは水も空気も魚も美味しくなくて、仙台へ帰りたいと毎日めそめそしていたなぁと思い出す。
今はもうあの冬の寒さに耐えられそうにないから諦めたけれど、私にとってはずっと特別な場所だ。
最後の晩餐というものがあるとしたら、仙台人が年越しに食べるというナメタガレイの煮付けと決めている。
そんな宮城に対する想いを語りだしたら止まらないので、とりあえず話を進めようか。
久しぶりの吉方位東北である。
去年の9月にも訪れる予定だったのに某感染症にかかってしまい、泣く泣くキャンセルをしたので3年ぶりくらいだろうか。
6月の仙台は結構寒い日があるので、寒がりレベル100くらいの私は警戒していたのだが、天気予報を見ると晴れて暑くなる予定。
とはいえクーラー対策で結局同じだけ荷物は増えた。痩せ女の私は寒さも暑さもダイレクトに響くので、いつも荷物が多いのだ。
(大げさなほどの冷房対策用品は結局全部使いましたの。)
おまけに数日暑い日が続いたからどこへ行ってもクーラーがギャンギャンで体が冷やされていたのと、寝不足がたたって前々日から絶不調だった。
どうにか仙台へやって来たものの、あちこち出掛けるパワーはない。
美味しいもの食べてゆっくりするかなと、調べておいた駅ビルのはらこ飯と牡蠣フライが食べられるお店に向かった。
いざ、お店に入ろうとしたら、いきなり強烈な香水のような匂いがした。
さすがにこの状態で食事をするのは無理かなと半ば諦め気味で近くのお店を見て回ったら、辺り周辺まで匂ってくる。まるで香水を打ち水のように撒いたんじゃないかってくらいに。
すると私の頭痛アラートが作動し始め、過去最大レベルの警報だったので、後ろ髪引かれながらも慌ててその場を離れた。
結局別フロアのレストラン街へ行き、宮城の食材を使った定食にありつけて、お肉も野菜もご飯も美味しかった。
けれど、本命ではないもので空腹を満たした物足りなさは、叶わなかった恋の亡霊のようにいつまでも私にまとわりつき、なんだか切ない旅のスタートとなってしまったのだった。
翌朝、早くに仙台朝市へ行ってみる。
まだ7時前だったせいか、準備中のお店が殆どだった。
ここに早朝からやっているおにぎり屋さんがあるので行ってみたかったのだ。
おにぎり屋さんは路面店ではなく、ビルの3階だった。珍しい。
恐る恐るエレベーターで上がってみると閉まっている。なんと、土曜日は9時からとの貼り紙があった。
2日続けて当てが外れたショックを想像してみて欲しい。しかも腹ペコだ。
とはいえ仙台まで来てコンビニ飯は絶対イヤ、朝からラーメンも無理だったので、駅のおにぎり屋さんまで頑張って歩く。
そしたらお目当ての店舗は7時半からとのこと。
あと20分だったが、たった20分すら私の体は持ち堪えられない。
そこで7時15分からの別のおにぎり屋さんへ入った。
すでに10人くらい並んでいたけれど、もう移動する余力がない。
虫の息で梅と南蛮味噌のおにぎりとお味噌汁を注文し、どうにか食べ物にありつけた安心感は半端なかった。
ただ、伊達なんやらというもっちりした美味しいお米だったのに、コンビニのようなプラのラップに入れたまま温めたからか、プラスチック臭がする。なんか勿体ないなと思った。
衛生面とかいろいろあるんだろうけど、ちょっと残念よね。
ちなみに私はふだん登米のササニシキを食べている。もっちり系のお米はアミロペクチンが多いので消化しにくく、お腹の負担が大きいためアレルギーをおこすのだ。
外出先でたまに食べるぶんには問題ないが、やはり強烈な眠気が襲う。
実際朝食後、眠くてだるくて松島とかもう面倒で行ぎたぐねーなーってなっていたので、鹽竈(しおがま)神社だけ行くことにした。
鹽竈神社は仙台に暮らしている頃何度も来ていたんだけど、電車で来るのは初めてだ。
本塩釜駅に着いて暑い中歩いていたらじんわりと汗をかいた。そしたらいつの間にか体の不調は軽くなっていて、やはり冷えから来てたのかなーなんて思いながら見覚えのある景色にたどり着きホッとする。
新緑の美しい鹽竈神社。
鹽竈桜の咲く時期は最高に素敵だけど、この時期もいいもんだね。
今日は結婚式が2組あるようだ。タイミングよく挙式が終わった二人が近くに歩いてきた。
和装にはちょっと暑かったけど、お天気が良くてよかったねとあたたかな気持ちになる。
これが幸せのお裾分けというものだろうか。ついもっと欲張ってしまうけれど、あやかりたいなんて強欲はほどほどにしておこう。
本塩釜駅の海側にはマリンゲート塩釜という旅客ターミナルがあって、そこに美味しいパスタ屋さんがあるので是非行ってみて欲しいのだが、多分並んでるしさすがにもう歩きたくない。
しかも私は昨日の雪辱を果たすため、何が何でも海鮮を食べなければいけないのだ。
ということで駅周辺で見つけた海鮮丼と書いてあるお店に即入ってみた。
そしてここが、今回の旅のクライマックスを飾ってくれた。
一見普通に見える海鮮丼だが、どのネタも新鮮で、普段タコや貝など苦手で食べないのに、これが柔らかくて絶品だった。
酢飯も程よく上品な味で、材料を吟味し、とても丁寧なお仕事をされていることがよくわかる。あら汁も魚卵がたっぷり入りいい出汁がきいていて、ほんとうにおいしい。
あ〜、来てよかった。
そんな満足感に浸っていたら新幹線の時間が結構迫っている。
新幹線に乗る前に友達の勤めているお店に寄って少し話そうと思っていたのに、全然余裕がないじゃないか!
出発の30分前に仙台駅に着いてホテルに預けた荷物をピックアップし、友達と5分程度の立ち話をしてお土産渡してダッシュで仙台駅へ向かう。
土地勘があるからまだマシだったが、絶対買おうと思っていたイタガキのフルーツロールを買ったら間に合わない。新幹線の中で優雅におやつにしようと思っていたのに…涙
泣きたい気持ちを抑え、かろうじて新幹線改札前の売店で喜久福を買い、ギリギリどうにか間に合った私は珍しく汗だくだった。
旅の終わりはあっけないものだ。
寂しさに浸っている暇もない。
首都圏のラッシュ時をはずしたかったから早めに出てきたけれど、もう少し居たかったな。あと10日くらい(笑)
そうすればイタガキのフルーツロールもさいちのおはぎも白謙のかまぼこも阿部かまのひょうたん揚げも季節外れのはらこ飯も牡蠣フライも牛タン焼きもホヤも食べられたし、松島も秋保も白石も大河原町も行けたのになぁって、思うわけ。
年に4回くらい東北が吉方位だったらいいのにって思うけど、今年はこれでおしまい。
そして来年は五黄殺(※1)という最悪最凶の大凶方位なので、仙台までは行けないんだ。
仕方がないので冬になったらとんかつの和幸でカキフライを買って、しみじみ仙台に想いを馳せようと思う。
そうそう、最後の晩餐はナメタの煮付けだけじゃなくて、松島の焼き牡蠣とイタガキのフルーツロールも追加したことをここに残しておく。
※1 三大大凶方位の一つ。(他に暗剣殺、歳破がある。)
この方位での転居や旅行は本当にめちゃくちゃヤバいのです。
実は五黄殺で仙台へ転居していた私はそれはそれはいろんな
ことが大変だった。それでも仙台が大好きなのは、この土地と
人の温かさなんだろうな。
【今回の旅で使ったお金】
ツアー料金 24,100円
クリームパン 237円
夕飯 1,980円
朝ご飯 580円
現地交通費 660円
海鮮丼 1,100円
喜久福 180円
ジュース 140円
合計 28,977円
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?