自分からの質問で、他者をコントロールしている可能性がある、というお話。
「うーん、原田さん。質問しすぎね。それは誰のための質問かしら?」
産業カウンセラー講座に通い始めて1ヶ月目のとある対面授業。
私のカウンセリング実践に対して、先生からもらった言葉に、ブワッと冷や汗が出たのを覚えている。
「え、3つしか質問していないのに?」
その言葉を聞いて、まず頭に思い浮かんだのはこれだ。
だって、ほんとにそう思ったのだ。
3つしか質問してないですよ、先生。
むしろ、質問しないでどうコミュニケーション取るんですか。
ひとりで冷や汗をかきまくっている私に先生は容赦なく続ける。
「クライエントが沈黙した時間があったのはわかる?その沈黙を待たずに原田さんが矢継ぎ早に質問したのよ。クライエントはどう感じたか聞いてみましょう」
クライエント役の人が答える。
「ちょっとペースが早くて、自分の呼吸が早くなりました」
まじか。
えーーーーーーーまじか。
私の聴き方、人の呼吸を早くさせるの?
え、めちゃくちゃプレッシャー与えてるやん。まじか。
ショックで、その日の振り返りシートにこう書いたのを覚えている。
「わたしはカウンセラーに向いていない気がします。」
たぶん、人の話をある程度聴けていると元々自信があった私は、ピノキオのように高かった鼻をへし折られ、その日はかなりしょんぼりして帰路についた。
とはいえ、しょんぼりしても仕方ないので(立ち直りは早め)頑張るぞと奮い立たせて、さあ再挑戦。
クライエント役「そうですねえ......................................」
カウンセラー役(原田)「........................................」
クライエント役「........................................」
カウンセラー役(原田)「........................................」
なんなんだこれは。
いつまで待てばいいんだ。
待っている間にたぶん、カップラーメンは1つできたと思う。
てか、クライエント役の人、質問待ってない?
ぶっちゃけ、質問、待ってますよね?
沈黙に耐えられず、質問。
カウンセラー役(原田)「今、どんな感情が湧いていますか?」
クライエント役「えっ.....どんな感情ですか.......うーん...........................」
カウンセラー役(原田)「..........................................」
クライエント役「...............................................................。」
クライエント役の人の顔をみて、瞬時に察した。
失敗した。この質問は、まずかった。
そして、この時、初めて先生に言われた言葉の意味がやっと分かった。
「それは誰のための質問かしら?」
Q.沈黙に耐えられないのは誰ですか?
A.原田です。
Q.相手の感情を知りたいのは誰ですか?
A.原田です。
Q.沈黙を破りたいのは誰ですか?
A.原田です。
Q&Aにするとまさにこんな感じ。
クライエント役の人のための質問でも沈黙でもなく、ただただ私自身が安心するためのコミュニケーションを取っていたということに。
加えて、先生からの追撃フィードバック。
「カウンセリングというのは、クライエントがカウンセラーからの質問を待つ状態をつくることではないのです。クライエントが質問を待っているというのは、カウンセラーに依存している状態。クライエントが自分の中の言葉を探って、言葉を出せるように、待ち続けるのがカウンセラーの役割です。」
自分の身体に衝撃が走った。本当に衝撃が走った。初めて衝撃が走る経験をした。
こちらが積極的に質問をして、相手がそれに対して答えるというコミュニケーションを意識せずしていたけれど、相手が次の質問を待ちだしたら、その先、依存関係になりうる可能性があるのか、と。
きっとそのコミュニケーションを繰り返していると、この人に話せば回答がもらえる、質問をしてくれる、道標を示してくれる。
「この人に聞けば良いんだ。この人が言ってることが正しいんだ。」につながってしまうということに全く気づかなかった。
来談者中心療法の生みの親、アメリカの臨床心理学者カールロジャーズがこんな言葉を残している。
この言葉を見た時に、まさに私の聴き方はコントロールに近いものだったのか、と。グサグサッ
ロジャーズ先生、刺さりすぎて痛いです。
カウンセリングと普段の会話は大切にすべきことが違うので、全てが当てはまる訳ではないけれど、このことがあってから、人から相談を受けるときの私の聴き方はコントロールが含まれていないか、を意識するようになった。
コントロールが含まれていないかなんて、普段は意識していなかったから、気づかずやってしまっていることのほうが多い。が、それが、まさに怖い。
これが、産業カウンセラー講座に通った1番の私の収穫。
相談を聴く時に、無意識に他者をコントロールしている可能性がある、ということを忘れないように。
あと、沈黙は、言葉にならない意思表示ということ。
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