人事評価を人材育成に繋げるとはどういうことか?
当社では最近人事評価制度を改訂したいというお問い合わせをいただくのですが、ありがちな人事評価制度の運用事例と目指すべき人材育成への繋げ方についてご紹介します。
1.人事評価制度に関するアンケート調査の結果
株式会社カオナビの研究機関である「カオナビHRテクノロジー総研」が2019年に「人事評価」について行ったアンケート調査の結果では、従業員が日ごろから抱える人事評価に対しての満足度や不満の原因が浮き彫りとなっています。
上記のアンケート結果から、人事評価制度は従業員の満足度向上ひいてはエンゲージメントを高めるために必要不可欠な人事施策の一環であることが理解できます。そのため制度そのものの内容や運用によって不満を生じているケースがあるのであれば、人事評価制度の改訂に踏み切る必要があります。
2.ありがちな人事評価制度とその運用とは?
人事評価制度を改訂されたいとお問い合わせいただく企業での現行の人事評価制度における問題点は主に以下の2点となっています。
①のケースは、評価項目がないため従業員は自分が何をどのように頑張れば評価が良くなるのかが分からず、上司の頭の中にある評価軸に左右され、結果として不満につながりやすいケースです。
②については、同じようなパフォーマンスを挙げていたとしても、自分の上司より隣の組織の上司の方が甘くor厳しく評価しているケースなどで、こうした不公平感が不満につながりやすいケースです。
ただし、このケースは自分の評価を従業員同士で共有しなければ分からないので課題感が浮き彫りになりにくいのですが、人事評価を昇進や昇格に繋げているケースでは不公平感を感じられる可能性も出てきます。
また、②のケースにおいては、上司が変わることでこれまでと同じパフォーマンスを発揮していたにもかかわらず評価が上下することなどから不満や不信感につながってしまうことがあります。
3.人事評価を人材育成に繋げるために必要なこととは?
では、前述した問題点を踏まえながらも人事評価を単なる評価で終わらせることなく、人材育成に繋げるために必要なことについてご紹介します。
①階層ごとに求める人材像を設定し、評価項目を言語化することで評価の場面だけでなく、日々のマネジメントの中で活かしていきます。
具体的には、「○○さんにはこういうことができるようになって欲しい、そのために今期■■の業務を通じて△△を発揮して欲しい」などです。
こうした対話を業績評価の期初に行うことで、自分が何を期待されているのか、自分の課題は何かを認識した上で日々の業務に従事することができます。
②評価者研修を実施することで同じ人を評価する行為においても評価のばらつきが発生するということを体験してもらいます。
先日、ある総合病院で評価者研修をさせていただきました。評価項目が定まっていない状態で、架空のケーススタディとして動画を視聴しながら特定のAさんを決められた評価項目に沿って評価を実施していただきました。
結果、評価項目とその定義があるにもかかわらず評価にばらつきが発生しました。このケースを通じて参加者からは、「評価項目が定まっているのにここまで評価がばらつくとは驚いた」というコメントが沢山でてきました。
そして、「うちでは評価項目さえも定まっていないので、実態はかなりばらついている状況だということが想像できました」というコメントもありました。
評価者研修を終えた後は、必ずしも自分の評価軸が”正”とは限らない、ということを念頭に置きながら評価を実施する必要があるということを再認識されています。
更には、部下の評価を公平に行うためには、部下の日々の言動をしっかり把握しておく必要があります。また、どんなフィードバックが部下の心に刺さり次のポジティブな行動につながるのかということを念頭に置きながら日々のマネジメントを行う必要があります。
いかがでしたでしょうか?皆さんの企業では評価制度がうまく機能していますか?どのような制度や運用があれば評価を単なる”評定”作業ではなく、人材育成に繋げられるのかという視点で一度見直してみてはいかがでしょうか?