見出し画像

【後編】アウトサイダー・アートフェア2021

毎年1月にニューヨーク、10月にパリで開催されているアウトサイダー・アートフェア(Outsider Art Fair)。


前の記事で、ニューヨーク会場のことを書いたので、この記事では同じ年に訪れたパリ会場のことも含めて書きたいと思います✍️

パリ会場で感じたニューヨークとの違い

画像9

2018年10月にパリで開催されたアウトサイダー・アートフェア。
同じアートフェアでもニューヨークとパリではちょっと違った雰囲気。

ちょうどこの時期、市内ではアートイベントが複数開催されていて、パリ全体がアートウィークとして盛り上がっていました。
毎年10月に開催されている国際的な現代アートのフェア、「FIAC(La Foire Internationale d'Art Contemporain ※英:International Contemporary Art Fair)」や、「Asia Now – Paris Asian Art Fair」。

画像4


2010年から2011年にかけて開催されたアール・ブリュット・ジャポネ展の第2回目となる展覧会、アール・ブリュット・ジャポネ II(Art Brut Japonais II)も同時期に開催され、日本全国から52作家の作品が紹介されていました。

画像2

アウトサイダー・アートフェアの会場は、市内の2区にあるアトリエ・リシュリュー(Atelier Richelieu)という場所。
2区というとパリ市内の中央部。有名な百貨店、ギャラリー・ラファイエットやオペラ座、ルーブル美術館が近くにある観光の中心エリアです。

ニューヨークの会場がパビリオンのワンフロアだったのに対して、アパートメントの1階と2階のフロアで構成された会場は少しコンパクトな印象。観光名所からも少し離れた場所にあって、落ち着いた雰囲気の場所でした。

画像1

画像9

画像7

会場に入ると、外から感じた落ち着いた雰囲気とは一転(!)
会場には出展者のブースが密集状態。壁やスペースなど、使える場所を埋め尽くすかのように、所狭しと作品が展示されていました。

どうやらこの年の会場は例年よりも狭かったのだとか。
運営側から作品の展示制限を伝えられるけれど、それでは場所が足りず...
止むを得ず、制限以上に作品を展示しているという出展者も多かった模様。
本来は壁に3段以上作品を展示することは禁止されているそうですが、ほとんどの出展者が壁一面に作品を展示していて、かなりインパクトのある光景に。

画像5

画像6

パリで感じた特徴は、20世紀に活躍したフランスの画家、ジャン・デュビュッフェが提唱したアール・ブリュット(生の芸術)と呼ばれる作品の傾向が強いこと。会場では精神障害の重いアーティストによく描かれる傾向にある、細かくて緻密な作品が多く目に止まりました。

画像8

作品や人々の熱気で密度の高い会場では、まるで宝探しをしているよう。

訪れている人もこの分野のコアなファンやコレクターが多そうな印象。
ニューヨークのような子ども連れの家族やカップルというよりも、美大生ぽい人やアート関係者が訪れているように感じました。

2021年、オンライン開催でみえた可能性

さて、29回目の開催となる今回のアウトサイダー・アートフェア。

新型コロナウイルスの影響で、例年と同じように会場で直接開催されることは難しそうですが、その代わりに、オンラインでのプレゼンテーションと対面イベントを組み合わせた形式で開催されていました。


会期は通常よりも1週間ほど長い、2021年1月29日〜2月8日の10日間。
世界9ヶ国28都市から45のギャラリーが参加。マンハッタン市内の5つの会場では、キュレーションされた7つの展覧会が開催されていました。

ちなみに、オンライン会場への参加料は無料。市内の展覧会鑑賞は有料で、共通チケットは15$。

今回の取り組みについて、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は、パンデミックの影響を受けながらも良いアイディアだとコメント。
規模は縮小したけれど、“アートフェアの未来のモデルになる”と評価しています。

例えば、各ギャラリーが出展料を抑えて参加できること。オンラインによって様々な都市のギャラリー間の連携を促進できること。
アート業界に見られる競争的で熱狂的なマーケットの実情に反して、緩やかな流れの新たなスタイルを確立できる可能性があるなど、いくつかの利点が挙げられていました。

各国からの出展アーティスト

今回、特設サイトからは、アーティスト名や作品タイトル、サイズや素材、価格帯など様々なソート機能から作品を検索することができたのも印象的。


なかには、アウトサイダー・アート界で著名なアーティスト、ヘンリー・ダーガー(Henry Joseph Darger,Jr)も。
作品は数千万円の価格が付いていました。

また、その他にも
アドルフ・ヴェルフリ(Adolf Wölfli)
ビル・トレイラー(Bill Traylor)
ダン・ミラー(Dan Miller)
など、この分野の巨匠クラスの作品も。

自分がアクセスしたい時間に、自分の居る場所から参加できる。
ニューヨークやパリへ足を運んでいたイベントに、日本から気軽に参加することができるのは本当に魅力的。
オンラインの可能性をつくづく感じました。(今後も続けてほしい...)

一方で、“作品を購入する”というのは、その価格に関わらず、きっと大きな決断が必要なこと。画面越しに作品を見るのと、作品を目の前にして見るのでは、大きな違いがあると思います。購入する前に、実際に作品を見たい人は展覧会に足を運んだ上で購入を決めることもできる。今回はオンラインとリアルな取り組みが両立していることも良いなと思います。

日本からの出展アーティスト

日本からは東京千代田区鍛冶町にギャラリーを構える、Yukiko Koide Presentsから、滋賀県のやまなみ工房の所属作家、鵜飼結一朗、鎌江一美、中川ももこ、森田郷士、吉川秀昭の5名が出展していました。
京都市中京区にギャラリーを構える、ギャルリー宮脇からは、3名のアーティストが出展。独学で絵画を学び、近年ではスイスのローザンヌにあるアール・ブリュット美術館や京都市京セラ美術館に作品が収蔵されているという、西村一成。京都在住で伝統的な仏教画家として活動する傍ら、迷路のようで幻想的なアート作品を生み出している、山下壮。

画像10

東京でグラフィックデザイナーとして活動する一方で、宮古島に代々伝わる霊能者カンカカリャでもあり、先祖からのメッセージを受信し、文字のような線画を書き下ろす、宮川隆。


どの作品もとても興味深い...。いつか実際の作品を見てみたい!

ちなみに、やまなみ工房の鵜飼結一朗さんは、2020年にニューヨークのAmerican Folk Art Museumに作品が収蔵されたアーティストです。

次回のアートフェアは?

次のアウトサイダー・アートフェアは、2021年秋にパリで開催される予定。今後も引き続き、情報をチェックしていきたいと思います。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?