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<ラグビー>2024年シーズン(11月第三週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

〇 ラヴェルの「ボレロ」は、今では名曲とされてあちこちで演奏されているが、発表当初は、同じフレーズの繰り返しという構造から、失敗作・駄作と評されることも多かった。小太鼓の囁くようなリズムで始まり(そして最後まで小太鼓は同じリズムを刻む)、次にフルートが同じリズムを繰り返す。それが木管楽器から金管楽器まで広がり、やがて弦楽器や打楽器を含む全オーケストラの演奏になって、そのリズムがまるで壮大なドラマのように響き渡り、最後のオチのような音の崩壊で終わる。その組み立て方は、音楽のリズムという小さなピースを、下から上に順に積み上げていく作業のように見えてくる。

  そして、ピラミッドのような巨大なリズムの建造物が完成した瞬間、まるでダルマ落としのように、土台からガラガラと一瞬で崩壊してしまう。この解放感あるいはカタストロフは、オーケストラの魔術師と呼ばれたラヴェルにして初めて出来たものだろう。そして、そのピースとなるべきリズムは、複雑な構成ではなく、このボレロのような単調なものでなければならなかったのだ。

〇 自分がギックリ腰になって、さらに脊椎菅狭窄症で歩行に苦しんでいると、駅などで階段を使わずにエレベーターを無遠慮に使う健常者には、いささか嫌悪感を持ってしまう。特に、恋愛ごっこをしている中高生カップルが、使う人の少ないエレベーターを個室代わりに使用するのを見ると、「親の顔が見たい!」と叫びたくなる。


1.テストマッチ等の結果

アイルランド22-19アルゼンチン(HT22-9)

 アルゼンチンは、イタリア戦のレッドカードで出場停止になっていた107キャップのパブロ・マテーラが、6番FLに戻って来た。4番LOにベテランのグイド・プッティが戻り、フランコ・モリナはリザーブに下がった。12番CTBにマティアス・モローニが先発し、マティアス・オランドーはメンバー外となった。また、22歳のフスト・ピッカルドが23番のリザーブに入り、プレーすれば初キャップだったが、残念ながら出番はなかった。

 オールブラックスに完敗したアイルランドは、CTBバンディー・アーキをメンバー外にし、12番はロビー・ヘンショウが先発した。18番PRトマス・クラークソンと22番SOサム・プレンダーガストの二人が初キャップとなった。17番PRキアン・ヒーリーは、ブライアン・オドリスコルの持つアイルランド最多記録に並ぶ133キャップを達成した。

 試合は、先週のアイルランド対オールブラックスのような激戦となり、両チーム2枚ずつ計4枚のシンビンが出る荒れた内容となった。前半3分、アルゼンチンがシンビンをなったのを利したアイルランドは、4分のSOジャック・クロウリー、6分の14番WTBマック・ハンセンの連続トライで12-0とリードする。その後17分にアイルランドもシンビンを出すが、アルゼンチンの反撃を、12分、18分、26分の、SOトマス・アルボルノズの3PGに抑える一方、32分に4番LOジョー・マッカ―ティーがトライを挙げ、22-9と大量リードした。

 13点差を追うアルゼンチンは、後半46分にFBファンクルーズ・マリアのトライが挙げ、51分のアイルランドのシンビンから52分にアルボルノズがPGを決めて、22-19と3点差に迫る。さらに攻勢を続けるアルゼンチンだが、56分のアルボルノズのDGは失敗し、76分にはシンビンを出すなどしてなかなか得点できない。ノーサイド直前にアイルランド陣ゴール前まで迫ったが、ついに逆転することはできずに時間切れとなった。アイルランド相手に惜敗したアルゼンチンだが、来週は相性の良いフランスと対戦するので、この調子を維持できれば勝利するのではないか。

 ノーサイド直前にアイルランド陣ゴール前に攻め込んだアルゼンチンは、DGを決めれば劇的な逆転勝利の可能性があったが、そのポイントとなるラックで、アイルランド選手からの「ノッコン」という声につられるようにして、レフェリーのポール・ウィリアムスはアルゼンチンのノッコンを取ってプレーは止まり、試合はノーサイドとなった。しかし、この判定については、プレーをTMOでチェックしなかった一方、TV映像では明確なノッコンは確認できないため、「見えないノッコン」がアイルランドに勝利をもたらせたとSNSで話題になっている。そうした事実があるとはいえ、ラグビーではレフェリーの判定が試合後の覆ることは絶対にないので、これはいわゆる「ホームアドバンテージ」の影響があったのだろう。

イングランド20-29南アフリカ(HT17-19)

 南アフリカは、先発12人を交代させ、4番LOエベン・エツベス、1番PRオックス・ノッチェ、2番HOボンギ・ムボナンビ以外はスコットランド戦から入れ替えているが、14番WTBチェスリン・コルベ、両CTBのダミアン・デアレンデとジェッシー・クリエルが戻るなど、ベストメンバーに戻したように思える。また3年振りの試合となるウィルコ・ロウを3番PRで先発させ、SOは先発がマニー・リボック、リザーブ22番がアンドレ・ポラードになっている。

 イングランドは、オールブラックスとオーストラリアに連敗したことから、13番CTBオリー・スレイトホルム、SHジャック・ファンプールヴィレ、FBフレディー・スチュワードをそれぞれ先発に入れた。WTBインマヌエル・フェイワボソとFLトム・カリーは、怪我でメンバー外となったが、SHベン・スペンサーとFBジョージ・ファーバンクがメンバー入りした。キャプテンはHOジェイミー・ジョージ。

 試合は、後半51分にイングランドがPGで20-19と逆転したが、南アフリカは58分のPGで20-22と再逆転し、62分の14番WTBコルベの二つ目のトライで、勝負を決めた。イングランドは、25分にトライを取った7番FLサム・アンダーヒルが奮闘したが、チームの連敗を止められなかった。これでテストマッチ5連敗(このうちオールブラックスに3敗)となったイングランドは、監督スティーヴ・ボーズウィックの進退を問う声が浮上している。しかし、来週は格下の日本相手となるため、圧勝できればひとまず落ち着くものを見られている。

フランス30-29オールブラックス(HT10-17)

 オールブラックスは、アイルランド戦の激闘により、FLサム・ケーンが脳震盪、WTBマーク・テレアが手の怪我で欠場となった。代わりに6番FLサミペニ・フィナウと14番WTBセヴ・リースがメンバー入りした。アイルランド戦でMOMの活躍をしたダミアン・マッケンジーは23番のリザーブに下がり、SOの先発にボーデン・バレットが戻った。脳震盪から復帰のコーディ・テイラーがHOで先発し、アイルランド戦で活躍したアサフォ・アウムアは16番のリザーブに下がった。フィナウが6番に入ったことで、ワレス・シティティがNO.8に、またアーディ・サヴェアが7番FLに移動したが、それぞれ最適なポジションと見られている。FW3列のリザーブである20番にピーター・ラカイが入った。SHはキャメロン・ロイガードが先発し、コルティス・ラティマーは21番のリザーブに下がった。

 フランスは、圧勝した日本戦から先発4人を交代した。FBに初キャップとなるロメイン・ブロを、14番WTBにギャビン・ヴィリエールをそれぞれ先発させた。13番CTBにガエル・フィクウが戻り、パウル・ブウデアンが6番FLに入った。リザーブは、SHマキシム・リュクとSOマチュウ・ジャリベールに代わって、ノラン・ルガレとエミラン・ギャリトンが入り、FW6人+BK2人としている。

 テストマッチでは、ファーストジャージの色合いが被る場合は、通常ホームチームがセカンドジャージを使用するのが慣例だが、2023年RWCプールマッチ同様に、フランスがファーストジャージを使用し、オールブラックスが白基調のセカンドジャージを使用する異例なものとなった。また、この試合は、第一次世界大戦のガリポリの戦いでアンザック軍の一員として参加して戦死した、伝説的なオールブラックスのキャプテンであるデイヴ・ギャラハーの名を冠したトロフィーを賭けて闘われるため、オールブラックスとしては勝利したいゲームとなっている。

 試合は、開始早々にオールブラックス6番FLサミペニ・フィナウがHIAで退場となり、急遽20番FLピーター・ラカイが7番に、7番のアーディ・サヴェアが6番に移動するアクシデントが起きる。その影響もあり、6分にフランスがPGで先行するが、オールブラックスは8分に、交代出場したラカイがサヴェアの突破をサポートしたトライを挙げ、3-7と逆転する。さらに26分には、SHロイガードが相手ボールのスクラムが崩れたところから、インターセプトするトライを挙げ、3-14と引き離した。36分にオールブラックス12番CTBジョルディ・バレットが退場し(怪我?)、22番アントン・リエナートブラウンと交代するアクシデントが起きたが、さらにPGを加える一方、フランスの反撃を1トライに抑えて、10-17で前半を終えた。

 後半に入り、フランスは43分、50分(パスミスが無ければオールブラックスがトライした可能性が高かったが、タックルのターゲットを外れたフランス選手が運よく前でボールを拾った)の連続トライで、24-17と一気に逆転した。オールブラックスは、23番SOダミアン・マッケンジーが、54分にPGを入れて24-20と迫るが、フランスは56分のPGで27-20と7点差を維持する。その後オールブラックスは、62分、66分とPGを刻んで27-26の一点差に迫ったが、フランスは72分のPGで30-26に引き離し、PGの3点では逆転できない4点差にする。それでも攻勢を続けるオールブラックスは、73分のPGで30-29の1点差に迫ったが、最後は時間切れでフランスに逃げられてしまった。

 フランスは、1番PRジャンバプティスト・グロがスクラムで貢献し、またNO.8グレゴリー・アルドリッドを中心にFWが活躍した一方、オールブラックスは、SHロイガードがデュポン相手に素晴らしいプレーを見せ、想定外の早期交代となったFLラカイもトライを取る活躍を見せたが、1番PRタマイティ・ウィリアムス、NO.8ワレス・シティティ、13番CTBリエコ・イオアネらの不調も影響して、連敗しているフランス相手にリベンジができなかった。オールブラックスは、今回の北半球遠征で、日本に圧勝、イングランドに辛勝、そしてアイルランドに快勝することで、ようやく本来のオールブラックスらしいゲームを見せられるようになっていたが、セカンドジャージ着用というトラウマが影響したのか、順当なら勝てる試合を落としてしまったのは、大変に残念な結果となった。

日本36-20ウルグアイ(HT18-13)

 日本は立川理道が足の怪我で帰国し、SO不足という緊急事態となったため、経験値の浅い2キャップの松永拓朗がSOで初先発し、リザーブのBKは、22番ニコラス・マッカランと23番梶村祐介というともにCTB専門の選手となった(なお、後半交代したマッカランはSOの位置に入った)。立川に代わりSH齋藤直人がキャプテン代行を務め、チーム最多キャップの30を持つ姫野和樹はNO.8に移動し、11番WTBに1キャップの浜野隼大が入った。元々、経験値の浅いキャップ数の少ないメンバー主体の日本代表だが、格下のウルグアイ相手とはいえ、さらに未熟な陣容となっているのは否めない。なおスコッドには、ブラックラムズ東京のSO伊藤耕太郎が追加招集されていたが、試合での出番はなかった。

 得点を見れば一目瞭然だが、今シーズンの日本代表のゲームで最低最悪の内容となった。開始早々の6分にウルグアイに先制トライをあっさりと取られた上に、後半開始直後の43分には、15人一体となった良いトライで18-20と逆転されるなど、ウルグアイは日本が目指す超速ラグビーのお手本をアタックで見せていた。一方の日本は、度々ゴール前に迫っても自滅的なエラーで加点できないことを繰り返し、ストレスが溜まるプレーを続ける。さらにレフェリングに適合できずに不本意な反則を取られる中、38分にキャプテンのSH斎藤のシンビン、65分の5番LOワーナー・ディアンズのレッドカードという、不用意なプレーで自らの足を引っ張ってしまった。

 ようやく77分に、ウルグアイに攻めこまれたゴール前のモールから、19番LOサナイラ・ワクァが値千金のターンオーバーをし、そこから10番SO松永拓郎が右タッチライン際を大きくブレイクして、これをサポートした13番CTBディラン・ライリーがトライを挙げたことで、どうにか勝利を確定できたが、逆転負けをしなかったのが不思議なくらいの拙劣な、評価できるものが皆無という試合内容だった。

 個々の選手では、立川不在で専任のSOがいない中、先発した松永はゴールキックが決まらない上に、タッチキックも距離が出ないという苦しいプレーだった。キャプテンの斎藤はハイボール処理でシンビンとなり、孤軍奮闘していたディアンズはハイタックルでレッドカードになった。また、チームとしては、ウルグアイのモメンタムを捉えるアタックに対して、緩いタックルで次々とラインブレイクされるなど、引き続きディフェンスに難があることを露呈している。「超速」というお題目を連呼しているが、代表チームに必要となる選手の育成(特にSO!)、基本的プレーの正確さ、タックルの強さなど、土台となる部分を整備せずに上辺だけを言葉で飾り立てるようなコーチングでは、ウルグアイのような格下チーム相手でも簡単に勝てないというのが、この試合の教訓となったのではないか。

ウェールズ20-52オーストラリア(HT13-19)

 10連敗中のウェールズは、フィジー戦から先発4人を代えた。メイソン・グラディとトモス・ウィリアムスの怪我により、14番WTBトム・ロジャースとSHエリス・ベヴァンを先発させた。7番FLジャック・モウガンが、RWC以来の先発に戻った。テイン・プラムツリーがメンバー外となり、ジェイムズ・ボッサムが6番FLで先発した。リザーブでは、先発から下がった20番トミー・レッフェリ、21番SHロードリ・ウィリアムス、23番BKエディー・ジェイムズが入り、FW5人+BK3人に戻している。

 オーストラリアは、イングランド戦の劇的勝利から先発6人をローテーションなどで代えた。MOMのジョセフ・スアアリイを23番のリザーブに下げ、サム・ケレヴィを12番CTBで先発させた。ディラン・ピーチの怪我により、マックス・ジョーゲンセンが11番WTBにリザーブから上がり、SHはローテーションして、先発はニック・ホワイト、リザーブ21番はテイト・マクダーモットとなった。NO.8ハリー・ウィルソンが脳震盪で欠場し、ロブ・ヴァレティニが先発し、ケレヴィとともに50キャップを達成した。6番FLはセル・ウルが初先発となり、5番LOにウィル・スケルトンが戻って来た。タニエラ・ツポウがメンバー外となり、3番PRはキャプテンのアラン・アラアラトア、リザーブ18番はザーン・ノッゴアーになった。

 試合は、前半15分、19分、24分とオーストラリアが3連続トライを挙げて、0-19と大きくリードする。その後29分にウェールズがトライを返し、さらに31分と34分にPGで加点して、6点差で前半を終える。後半に入り、オーストラリアは12番CTBサム・ケレヴィがハイタックルでレッドカードになったが、14人になった数的不利は影響せず、47分、52分、61分と3連続トライを挙げて、13-40とリードを拡げた。ウェールズは、69分にトライを返したが、15人に戻ったオーストラリアは75分、80分の連続トライで止めを刺し、不調のウェールズ相手に圧勝した。

 オーストラリアの個々の選手では、HOマシュウ・フィエスラーがモールから3トライ(ハットトリック)を記録した他、MOMに選ばれたFBトム・ライトもハットトリックを達成し、ようやく期待されていた能力を発揮してみせた。なお、23番に入ったスアアリイは、退場となったケレヴィに代わって63分からプレーしたが、他の選手たちの好プレーもあり、特筆するものはなかった。オーストラリアは、シュミット監督によって完全に調子を持ち直しており、来週のアイルランド戦が非常に楽しみとなった。

 一方、オーストラリア相手にさんざんな結果となった上に、11連敗を記録したウェールズは、監督ワレン・ゲイトランドが辞任をほのめかすコメントをしている。ウェールズは、来週南アフリカと対戦するため、さらに連敗が続く可能性が高い。こうした現状を受け、ゲイトランドは「ウェールズにとって最善のことであれば、100%協力する」として、自らの辞任をほのめかしている。しかし、オーストラリア相手には大敗したものの、11連敗の内訳は強豪相手に惜敗したものが多いことに加え、ゲイトランドに代わる有望な監督候補も見当たらないため、苦境はしばらく続きそうだ。

イタリア20-17ジョージア(HT6-17)

 イタリアは、SOパオロ・ガルビシの22分のPGでようやく先制点を挙げたが、続く23分にジョージアにトライを取られて、3-7と逆転される。しかし、31分のPGで6-7と迫るが、33分にPGを返され、さらに37分にはジョージアに二つ目のトライを取られて、6-17の11点差とジョージアにリードされて前半を終える。

 後半に入り、イタリアは53分のペナルティートライで13-17とし、さらにジョージアにシンビンが課されたことで、4点差に迫ったイタリアに試合の流れは傾いたが、イタリアが得点できずに時間が過ぎていく。そして、イタリアはようやく64分のトライで20-17と逆転したが、その後は加点できずに3点差で逃げ切るという、薄氷の勝利となった。

 イタリアに惜敗したジョージアは、長年話題になっているシックスネーションズ最下位チーム(ほぼイタリア)との入替戦の実現に向けて、その必要性を大きくアピールできたのではないか。シックスネーションズは一種の固定したブランド(イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、フランス、イタリア)という構成により、多大な経常利益を上げているが、実力主義に基づけば、下部リーグで優勝を続けるジョージアと最下位が多いイタリアとの入替戦実施は、継続して無視することは難しい。

スコットランド59-21ポルトガル(HT33-7)

 フィジー戦で4トライを稼いだダーシー・グラハムが、脳震盪から14番WTBに戻った。5番LOアレックス・サムエル、7番FLベン・ムンカスター、リザーブ20番FLの19歳のフレディ・ダグラスがそれぞれ初キャップとなり、ダグラスは1963年のドナルド・ホワイトの記録を抜く、最年少のキャップ獲得となった。キャプテン代行は、12番CTBスタッフォード・マクドワル。試合は、スコットランドが9トライの猛攻で、格下ポルトガルに圧勝した。ここ数年強化されているポルトガルだが、シックスネーションズの上位チーム相手では、勝負にならなかった。

スペイン19-33フィジー

 フィジーのWTBセミ・ラドラドラは、ウェールズ戦のレッドカードで3試合の出場停止処分となり、スペイン戦及び次週のアイルランド戦でのプレーが出来なくなった。試合は、フィジーが、前半は10-7とスペインにリードされたが、後半53分以降に4トライを重ねる一方、スペインを3PGのみに抑えて、格下相手に完勝した。

イングランドA38-17オーストラリアA(HT5-10)

 オーストラリアAは、ブリストル戦から6番FLトム・フーパー以外は全員入れ替えた。3番PRに20歳のマッシモ・ルイイスが入ったが、彼はタニエラ・ツポウを越えるベンチプレスを記録している注目の選手だ。SOには、マイケル・ライナーの次男トム・ライナーが入り、キャプテンのSHライアン・ロナーガンとHB団を組む。

 試合は、イングランドが先制トライを挙げた後、オーストラリアがトライとPGで、前半を5-10とリードする。しかし、後半に入ると、イングランドが42分、56分、61分と連続トライを挙げ、24-10と逆転する。オーストラリアも65分のトライで、24-17と迫るが、イングランドは67分と77分にトライを加えて、最後に突き放した。イングランド14番WTBケイダン・マーレイが2トライを記録した。ハーレクインに所属するマーレイは、イングランドのU18、U20、イングランドAと年代別代表から注目されているが、25歳の現在は代表に届かないでいる。しかし、ワラビーズ経験者複数がいるオーストラリアA相手の活躍で、少しは代表入りに近づいたかもしれない。

その他の試合結果

アメリカ36-17トンガ

 トンガは調子の波が大きいチームだから、アウェイのゲームではこの結果も仕方ない。

ルーマニア35-27カナダ

 現在のカナダはかなり弱いし、ホームゲームでFW勝負ならルーマニアは強い。

オランダ20-17チリ

 RWC初出場で話題になったチリだが、フィジカルに優るオランダ相手だと負けるレベルというのが現状。

香港38-17ブラジル

 先週負けた香港が、今回は雪辱した。しかし、香港の凋落は止まらないだろう。

2.関東大学対抗戦Aグループ

11月10日

 早稲田44-7筑波

 慶應39-14立教

11月17日

 青学36-19日体

 帝京48-28明治

 早稲田にまさかの負けを喫した帝京が、前半にトライを重ねて勝負を決めた。この後明治が早稲田に勝てば、三すくみになって面白いと思うのだが、果たしてどうなるか?

3.主なニュース

(1)WRが、元ワラビーズのブレット・ロバートソンを新会長に選出

 WRは、任期満了で退任する元イングランド代表のビル・ビューモント会長に代わり、元オーストラリア・ワラビーズのFLとして16キャップを持ち、オーストラリア協会のアドミニストレーター(管理者)であるブレット・ロビンソン、54歳を新会長に選出した。会長選挙では、元フランス代表NO.8のモロッコ系フランス人アブデラティフ・ベナジとの争いとなったが、27票対25票の接戦でロビンソンが勝利した。WRが南半球出身者を会長に選出するのは史上初めてとなったが、新会長のロビンソンは、8年間に渡り君臨した(元イングランド代表の)ビューモント会長のやり残した多くの仕事を引き継ぐこととなった。

 ロビンソン会長は、(ア)賃金上昇に伴う持続的な財政改善、(イ)次の世界拡大へ向けたテーマの着実な実行、(ウ)視聴者増と商業利益に寄与する大会の実施、(エ)選手の安全、ルール改正、イノヴェーションを通じたファンと選手の成長、(オ)規律の維持及び的確な目標を持つことなどを、新たな運営方針として述べている。

(2)WRが試行ルールを世界規模で適用

 WRは、現在の秋のテストマッチで実施されている試行ルールを、試合のスピードアップを目的として、来年1月より世界規模で実施することを決めた。試行ルールは以下のとおり。なお、キックオフの「マーク」(22mの内側でキャッチした後の、フリーキック)、モール停止を1回に限定することは実施されず、レッドカードでの数的不利を20分間に縮小することについては、実施の決定が先延ばしされた。

試行ルール:

1.PG及びコンバージョンキックは60秒以内に行う。

2.スクラム及びラインアウトは30秒以内に行う。

3.相手が競らないラインアウトの場合は、ノットストレートを黙認する。

4.スクラムハーフへのタックルは、スクラム・ラック・モールが成立している場合、制限される。

5.TMOは、得点があった場合やノッコン・スローフォワード・ラインタッチについて明白な違反があった場合、これを特定できる。また、得点前の2フェイズにおける、オフサイド・モールのオブストラクション・タックル成立の可否についても、同様に特定する権限を持つ。

(3)2025年スーパーラグビーのスコッド発表

 2025年シーズンのスーパーラグビー各チームのスコッドが発表された。スコッドの全容はリンク先を参照されたい。

 参考までに、NZをホームにする6チームの注目選手を紹介したい。

ハリケーンズ:

 ブレット・キャメロンの怪我とアイダン・モルガンのアイルランド移籍で、SOが手薄となっているが、22歳のルーカス・キャッシュモアと29歳のリレイ・ホヘパが加入した。また、SOもできるFBとして、ルーベン・ラヴとハリー・ゴッドフレイがいる。一方、ベテランSHのTJ・ペレナラ、NO.8アーディ・サヴェア、CTBジョルディ・バレットの海外移籍は影響が大きい。しかし、SHにはキャメロン・ロイガードとU20のジョルディ・フィルヨーン、CTBにはリレイ・ヒギンズとビリー・プロクターという有望な選手がいることに加え、セヴンズで活躍したフェヒ・フィネアンガノフォが加入した。また、FLには今回オールブラックスのスコッド入りした、ピーター・ラカイやデュプレッシー・キリフィ、そしてブライドン・イオセがおり、さらにベテランのブラッド・シールズが控えている。また、LOのザック・ギャラハーがクルセイダーズから移籍したのは心強い。

クルセイダーズ:

 リッチー・モウンガの日本移籍とファーガス・バークのイングランド移籍で、SOが手薄であるため、ワラビーズ63キャップのジェイムズ・オコナーが加入した。オコナーは、若手のリヴェズ・ライハナとタハ・カマラの良きプレーイングコーチになることが期待される。また、CTBブライドン・エンノーが怪我から復帰し、フランスでプレーしていたWTBレスター・ファインガアヌクも戻って来た。キャプテンのスコット・バレットなど10人のオールブラックスがいる強豪チームなので、体制は万全だ。

チーフス:

 HOブロディー・マカリスターを獲得したのは朗報となった。マカリスターは、クルセイダーズではコーディ・テイラーとジョージ・ベルに次ぐ三番手だったので、良い活躍場所を見つけられるだろう。アキレス腱を怪我したHOサミソニ・タウケイアホは、シーズン中盤以降に復帰できる見込みだ。オールブラックスXVで活躍しているSOのジョシュ・ジェイコムは、先発SOダミアン・マッケンジーの良いリザーブになる。また、セヴンズで活躍するレロイ・カーターは、WTBとしてトライを取れる一方でSHもプレー可能な万能型だ。

モアナパシフィカ:

 なんといってもオールブラックスのアーディ・サヴェア加入は大ニュースとなった。また、ワラビーズのPRポーン・ファウマウシリ、ウェリントン代表で活躍したSOジャクソン・ガーデンバショップ、WTBロス・フィリポ、NRLから移籍のソロモン・アライマロを獲得した。さらに、パトリック・ツイプロツの弟ティトがPRとして加入している。

ハイランダーズ:

 SOとFBができるテイン・ロビンソンを獲得した。また、NZラグビーで最速といわれるWTBマイケル・マンソンのプレー振りが楽しみである他、FBジェイコブ・ラツマイタヴキニープケンスが怪我から復帰した。また、オールブラックスのスコッドへ怪我人対応で入った、LOファビアン・ホランドは期待の成長株だ。

ブルーズ:

 SOボーデン・バレットが、サブバティカルから復帰した。バレットの他に、スティーヴン・ペロフェタとハリー・プランマーがいるSOは潤沢な構成となっている。セヴンズからチェ・クラークが加入したことが話題になったが、最も注目するのは、元オールブラックスSOカルロス・スペンサーの息子ペイトンがFBとして加入したことで、父のような華麗なプレー振りを見せて欲しい。

(4)フランスU20代表PRが、ハリケーンズのトレーニングスコッド入り

 フランスU20代表FLのパトリック・ツイフアは、ニューカレドニア生まれということでU20代表入りしたが、現在NZのヘイスティングスのリンディスファーム・カレッジに通っており、ハリケーンズのトレーニングに参加している。191cm、113kgのツイフアは、フランストップ14の各クラブが獲得を目指している若手だが、2020年から5年間をNZのラグビー環境で過ごすことで、将来のオールブラックス入りを目指している。

 なおツイファは、ハリケーンズの来シーズンの38人のスコッドには入っていないが、監督のクレイグ・レイドローは、既にハリケーンズのU20やセヴンズでプレーしていることもあり、将来スーパーラグビーのハリケーンズでプレーすることを規定路線と見ている。また、ホークスベイでプレーしていたツイフアは、プレシーズンマッチのウェリントンで、ピーター・ラカイ、デュプレッシー・キリフィ、ブライドン・イオセ(怪我)不在の穴を埋めているため、ハリケーンズ入りの可能性は極めて濃厚となっている。

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