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逆境を克服するコシノ ヒロコの仕事学
コシノ三姉妹の長姉コシノヒロコ。重鎮ファッションデザイナーだ。
パワフルな人という印象で、彼女の尺では弱冠86歳と表現しても違和感ないだろう。
しかし、仕事人生は決して順風ではなかった。
30代で離婚を経験。パリへ進出し高い評価を得るものの、急激な円高で会社は赤字。さらに日本でバブルが崩壊し窮地に立たされる。
しかし、同業他社の倒産が続くなか、コシノの会社はみごと回復を果たすのだ。
大なり小なり今の状況を逆境と感じている人がほとんどだろう。コシノヒロコの経験が参考になるかもしれない。
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苦境に立たされたコシノは、それまで個性を全面に出していたデザインを客目線にアジャストしていく。
過去に買った服でもコーディネートできるよう、長いスタンスで考えられる企画を確実にやっていった。
生産体制の見直しにも着手。凝りに凝ったコシノの服は工場からしたら懲り懲りで、敬遠されたり納期が遅れがちだった。そこで、不況を逆手にとり工場と交渉する。
「バブルが崩壊するということは、例えば私の洋服を縫っている所の人たちが、どんどん手薄になるということでしょ。他が潰れるから仕事が来ないでしょ。今まで敬遠されてた、うちの商品を縫ってくれる可能性があるやん」
こうして、良い工場をつかまえたコシノはオンタイムに適切な商品を店に出していく。会社は黒字転換。当初10店だった店が250店にまで拡大した。
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コシノは、逆境で自分を支えてきたものをこう振り返る。
「試練というのは、あればあるほどいいんです。試練というのは、それを体験して乗り越えたときに、もっと大きなものになるんですよ」
「だから、試練?逆境?どんどんいらっしゃい。これをバーンと乗り越えてやるよ。乗り越えたら、もうひとつ上になるねんから。これを楽しみで頑張ろうみたいな。だから怖くないの」
こうなるともうジャンキーだ。
だが、このマインドセットこそ肝かもしれない。逃げ腰で受けるのではなく、攻撃的に向き合う。そうすることで自分のテンションを高めるのだ。
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というようなことを、コシノヒロコのコートに掛かっている15万円の値札を横目に思い出した次第である。