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アメリカで実践された「正直営業」――営業の目的は売り上げではない!嫌われる営業はもうやめよう
「アメリカ版正直営業」と言える、ロバート・フリッツの構造アプローチを応用した営業手法をご紹介します。
主なポイント:
正直さを重視
顧客との信頼関係を築くために、誠実さを基本とする
構造アプローチの応用
ロバート・フリッツの理論を営業活動に適用
成果を上げた実績
アメリカの企業で実際に効果を発揮した
以下『プロフェッショナルの営業鉄則 何が営業を殺すのか』より
従来の営業手法の罠
世の中には営業に関する無数の書物がある。そして無数の営業手法が過去半世紀にわたって確立されてきた。しかし本書は従来の書物やテクニックとは全く異なる独創的なものだ。本書の中では営業プロセスを徹頭徹尾考え直していく。そうすると、従来の営業手法に見られる通常の想定が、実際には営業の邪魔になっていることがわかってくる。本書で営業プロセス全体を見渡すことによって、営業に従事する読者は、もしそこに受注の可能性があれば、最も高い確率でその案件を成約できるようになる。
営業のプロのための鉄則は「顧客の意思決定プロセスにおけるコンサルタントになること」である。
この鉄則を決して侮ってはならない。「ああ、よく聞くコンサルティング営業のことね」と思ったとしたら、実際には全く違う。何が違うのかを説明しよう。従来の営業手法は出発点からして間違っているのだ。「どうすれば売れるのか」という問いからスタートしている。つまり従来の営業手法のゴールは「売ること」になっており、「売ること」こそが営業担当者の仕事だと思われている。歩合制の営業担当者だったら受注によって金銭的報酬を受け取る。歩合制でない営業担当者だったら売上成績を上げることによってクビにならずに済むというわけだ。つまり従来の営業手法においては「売ること」が至上命令だったのである。
それに対し、もし営業担当者が本当に顧客の意思決定プロセスにおけるコンサルタントになったとしたら、出発点が変わる。「自分の売り物と顧客の求めるものがマッチしているか」が問いになる。つまり、営業の初期段階において「売ること」は目標になりえない。売ることではなく、「ビジネスとして十分なマッチがあるかどうか」という問いに焦点を当てるのだ。
営業の初期段階において、売り物と顧客の求めるものがマッチしているかどうかはわからない。現実に基づいて考えれば「わからない」ということだ。「きっとそうだ」「こうにちがいない」「たぶんそうだろう」などと推論したり理屈をつけたり、わかったふりをしたとしても、正直に真実を言うなら「わからない」し、わかりようがない。
「わからない」ということから健全な行動が始まる。わからないからこそ見つけ出そうという気になるのである。
しかし顧客は自分が本当に何を求めているのかを率直に教えてくれるのだろうか。ここで従来手法がつまずくことになる。従来の営業手法に慣れた顧客は、営業担当者に操作されることを嫌って、自動的に防御的な態度をとる。つまり、たいていの顧客は、自分が売りつけられる対象だと悟った瞬間に防御を固め、営業担当者に胸のうちを明かすのは危険だと感じるのである。
これによっていくつかの不都合な結果が起こる。顧客は営業担当者を信用できない。何を言われても話半分に受け取る。営業担当者と本物の人間関係を築けない。だから無難にやり過ごすための作戦をとるしかない。
たとえて言うなら、友人とチェスをするのとビールを飲むのとの違いである。チェスでは対決している。ビールを飲むのはオープンで楽しい時間を過ごしている。従来の営業手法はチェスのようなものだ。友人との楽しい時間ではない。
人は教わらなくても相手が自分を操ろうとしているかどうかを察知する。また、フェアなゲームかアンフェアなゲームかを察知する能力も備わっている。アンフェアなゲームでフェアにプレイしようとすれば相手に手玉に取られてしまう。
それに対して、人はフェアなゲームではフェアにプレイするものである。フェアプレイの中には、本当に自分が求める目標と営業担当者の売り物とがマッチしているかどうかを見極めようとする作業も含まれる。営業担当者が自分を手玉に取ろうとしているのでないことがはっきりとわかれば、顧客は心を開いて話し始める。もう防御などしない。防御すべき対象が何もないからだ。「売ること」を目標にせず、バイアスなしに営業が始まると、全く異なる展開になっていく。
心理操作と信頼関係
自分自身が顧客のときの体験を思い出してみてほしい。営業担当者にあっさり情報を明かしたら不都合なことになることを心配して、心を閉ざしたときのことを。理由はわからなくても、防御的になったときはそれがわかるものだ。
営業と、そして人生について、この単純な原則を知っておくといい。
心理操作は人間関係をぶち壊しにする。
たとえそれがほんのかすかな操作だったとしても、相手は本能的に自分を守ろうとする。人は押しつけられるのを嫌うのだ。きっと多くの人は操作に感づいても気がつかないふりをしてその場を和やかに保ち、礼儀正しく振る舞うことだろうが、決して本物の人間関係を築くことにはならない。顧客と「信頼関係を構築」して顧客に買ってもらおうとする従来の営業手法は、それが操作であり、本物の関係をぶち壊しにするという事実を理解していない。
ビジネスをともにするための基本的なふたつの要素を紹介しよう。
1.顧客が求めているもの。
2.顧客に提供するもの。
もし売り物と顧客のあいだにマッチがあれば、ビジネスをともにする礎になる。もし十分なマッチがなければビジネスをともにする礎がない。もし十分なマッチがないときに売ろうとしたら、私たちは営業のプロとしての信用を失うことになる。
私たちは暮らしの中で誰でも顧客になっていて、顧客としていい営業と悪い営業がどんなものかを体験して知っている。悪い営業がもし購買につながった場合にはそのあとで後悔を生んでいる。この「買い手の後悔」についてウィキペディアでは次のように解説されている。
「買い手の後悔(Buyer's Remorse)」とは、買い物をしたあとに後悔する感覚のこと。自動車や不動産などの高額な商品を購入したときに生じることが多い。買い手の後悔は、認知的不協和、特に決断後の不協和に起因すると考えられている。この不協和は、たとえば、同じような魅力を持つふたつの選択肢のあいだで多額の投資をして購入するなど、難しい決断をしなければならないときに生じる。買い手の後悔に影響を与える要因としては、投資した資源、買い手の関与、購入が買い手の目標に適合しているかどうか、購入後に遭遇する後悔を含む感情などが考えられる。
買い手の後悔は、不十分でアンプロフェッショナルな営業プロセスから生まれる。顧客が自分の下した決断を気に入らないから後悔が生まれるのである。
実際のところ、私たちはいつも正しい決断をするわけではない。プレッシャー、プライド、チャンスを逃したくない気持ち、突発的衝動、理想、自意識をくすぐる要因などに目がくらむことがある。言うまでもなく、従来の営業手法の多くは、こうした人間の弱さにつけ込んで売り込もうとするものだ。それによって失われるのは顧客の生涯価値である。買い手の後悔によって、もう二度とそういう営業担当者とは取引するまいという気持ちになるのだから。
売り物と顧客の求めるものがマッチしている場合においても、典型的な従来手法では顧客関係にヒビが入ってしまう。仮に契約が成立したとしても、それは営業手法のおかげで成立したのではなく、営業手法が足を引っ張ったにもかかわらず成立したのである。
ここで営業担当者たちが学んできたさまざまな従来の営業手法を見てみよう。たとえばこんなものがある。
難しい見込み客をコントロールするには
フレンドリーな力を使いなさい。気難しい相手にどういう言葉をかけたらいいか具体的に説明しましょう。
1.相手を支えるように話しかけなさい。
「業者(ベンダー)と購入者の典型的な関係においては、それはとてもいいプロセスで、あなたの役に立っていますよ」
これは顧客の抵抗感を称賛することで自意識に訴え、抵抗がなくなることを期待している。「私に抵抗してくれるのは素晴らしい。今までそれでうまくやってらしたのですね。あなたは本当に素晴らしい方です。というわけで」(言外の意味: 私からお買い上げください)
2.課題を再定義しなさい。
「単なる業者(ベンダー)ではなく、御社のパートナーになりたいのです」
顧客の親友として相手の側に立っているというふりをするのは現実から乖離している。この発言は真実ではないから、本物の信頼関係を損ねるものになる。
3.論拠を構築しなさい。
「パートナーになるには私たちのソフトウェアのユーザーニーズを理解することが重要です」
顧客のニーズを理解することはもちろん大切だ。それは「論拠を構築」するのとは違う。自分の論拠を構築するために顧客を理解しようとしているなら、あなたのやっていることは顧客の目標に反してでも自分にとって都合のいい情報を集めているのに等しい。
また、顧客が話している間中、何とか売りつけるチャンスを見つけようとしているのである。顧客の話を聞きながら、その中に成約につながる情報がないかと聞き耳を立てているのだ。
4.許可なく自分の最初の質問に移りなさい。
「ここまでよろしいでしょうか。うちの製品を紹介するうえで3つの大切な問いがあります」
こうした手法がやろうとしているのは、とにかく主導権を握ることである。そして顧客を制御するのだ。たとえば商談中に顧客の電話が鳴ったとしよう。すると営業担当者が顧客に「どうぞお出になってください」と言う。それによって、まるで営業担当者が場を仕切っているように見せろというのである。もちろん顧客は自分の電話に出るに決まっている。それでも営業担当者が顧客に許可を与えているかのように振る舞うのは、ただ一枚上手に出ようとしているだけなのである。
反対に、顧客から断られたときはどうしたらいいのでしょうか。
まず、すっかり話をさせてしまうことです。反論などせず耳を傾けましょう。
顧客が話し終わったら、「おっしゃったことの中で、致命的な要素、大切な要素、あったらいい要素は何ですか」と質問して、致命的な要素を扱うことに焦点を合わせましょう。
さらに「これらの要素を扱うことができたら、うちの商品をソリューションにふさわしいとお考えになりますか」と尋ねるのです。
もしそれでも断られたら、「他に必要なことは何でしょうか」と尋ねてください。
致命的な要素と大切な要求を扱い終えるまでは、あったらいい要素を無視してください。
この典型的な営業手法の特徴は、顧客を「克服すべき問題」と捉えていることである。断られる理由をすべてつぶしていけば成約に至るという前提に立っている。しかし考えてみればわかる。そもそもなぜ断られるのか、だ。十分なマッチがないからである。
さて、こうした操作的なテクニックだけでなく、あなたがこれまでに受けたことのあるあらゆる営業教育について考えてみよう。あるいは聞いたことのあるものでもいい。営業手法について書かれた本を読んだことがあれば思い出してほしい。こうした従来アプローチには「状況をコントロールする」という共通点があることに気づくだろう。なぜコントロールが必要なのだろうか。どうして状況をコントロールしなくてはならないのだろうか。
ビジネス作家のブライアン・プレストンは言う。
嘘と操作に騙されるな
営業や広告の世界には嘘や操作が蔓延はびこっています。次々と約束が破られるし、商品の宣伝は信じられないほど誇張されています。自分たちの売り物について正直で率直な会社や営業担当者からだけ購入するのが一番良いのです。自分の売っているものが素晴らしいと本当に知っていれば、それがどれだけ生活に価値をもたらすものか何でも正直に話すことでしょう。ものを買うときは商品をきちんと評価し、宣伝が正当なものか、真実を伝えているのかを確かめてください。もし話がうますぎるように聞こえるなら、たぶんそれは虚偽です。
営業担当者に教えられている操作的なテクニックをもっと紹介する。操作していることを隠しながら顧客に買わせようとしていることに気づいてもらいたい。以下、ネット上に掲載されている「営業のコツ」をいくつか見てみよう。
犠牲者と召し使いを演じる
人を操るには、自分に都合の良い目的を隠すために、高貴で献身的な目的をほのめかしたり押し出したりするものです。とてもよくあるやり方で、見破るのは難しいこともあります。
何かを販売するときはこの操作テクニックを参考にしてください。自分はただの顧客の仲介役であって、誰かが喜ぶのを見るのが何よりの喜びだというふうに装えばいいのです。あなたはあたかも顧客に仕えるために存在するかのように見せるのです。
これはあなたが自信過剰で攻撃的なタイプの人でないときに有効です。もしあなたが内向的だったら、謙虚で無欲な姿勢を貫くことでこの戦術を活用することができます。
見込み客のための道具になる
操作というのは自分の欲しいものを手に入れるために必要なことをすることです。それは、透明性や前向きな姿勢であると同時に、巧妙な策略です。マーケティングの内容で見込み客をおびき寄せ、販売に結びつけることで相手を操るのです。
相手がコントロールしているかのような幻想を与える
見込み客を製品仕様や統計データで圧倒するのではなく、シンプルに伝えましょう。関連する情報を提供し、相手に質問させるように仕向けます。そうすることによって、実際にはあなたが会話の主導権を握っているのに、相手は自分が主導権を握っているように感じるのです。
競合に目を光らせる
スポーツチームが対戦相手を研究して試合に備えるように、営業チームも競合他社のパフォーマンスを知っておく必要があります。だからといって他社の悪口を言ってはいけません。それは不安を暴露してしまうだけです。
悪口ではなく、「敵」の弱点を見つけたら他社の名前は伏せながらそれをあなたのプレゼンに入れ込むのです。たとえば、あなたの会社が初回の購入に20%ディスカウントしていて、他社が10%しかディスカウントしていなかったなら、こんなふうに言うことができるでしょう。「たったの10%しかディスカウントしない会社があるのですが、当社では初回購入のお客さまに20%のディスカウントを提供しております」
初期段階で顧客が複数の業者を検討しているとき、あなたは他社を時代遅れの存在のように位置づけて自社のポジションを高めることができるのです。
さらに、次のようなクロージングテクニックを用いると営業担当者の信用を傷つけ、成約も失うことになる。
勝手に決めつけるクロージング
まだ相手が買うとも言っていないうちに、勝手に買うものだと決めつけて話を進める。営業担当者が「ではいつから始めましょうか」などと尋ね、顧客が購入する気になることを期待する。
「揺り籠から墓場まで」のクロージング
これは「今は買うには早すぎる」という顧客に対して「人生において買うのにいいタイミングなどない」と言い、どうせ買うなら今がいいと説得する戦略である。
選択肢提示のクロージング
勝手に決めつけるクロージングのバリエーションで、「赤い靴と青い靴ではどちらがよろしいでしょうか」のように選択肢を提示して買わせようとする。
特別オファーのクロージング
今日買ってくれたら無料で、または大幅割引で別の商品をつける、というオファーをする。
営業コンテストのクロージング
営業担当者がコンテストで勝ちたいので無料のおまけをつけるとか大幅なディスカウトをするなどと言って顧客の同情を集めようとする。
急回転のクロージング
見込み客が「この製品でこんなことはできますか?」と質問してきたら「もしできたら今日お買いになりますか?」と返す。
オプション外しのクロージング
顧客が価格面で躊躇している場合に営業担当者が「400ドル以上が難しいということですが、優先サポートのオプションを外すことになります。優先サポートがとても大切だとおっしゃっていましたが、400ドル以下ということになると外さざるをえません」などと言い、顧客の望むオプションを外してしまう。
最後に、この引用を見てほしい。
見込み顧客の現状打破
営業担当者は営業プロセスを直線的なものと見なしています。見込み顧客が同じステップを踏んでいって、自社か他社のどちらかを選択して終了するという想定です。しかし実際の顧客には3つ目の選択肢があります。それは「決断しない」という選択肢です。研究によると、見込み案件の4割以上が他社に奪われるのではなく「決断しない」ことによって失われています。これは「現状バイアス」と呼ばれるものです。見込み顧客は現状ではない新しい決断を自然と回避する傾向を持っているのです。
営業担当者のあなたは、顧客が現状に留まろうとする「惰性」と戦っているのです。現状ではなくあなたを選んでもらうように説得するには、見込み顧客の現状を打破し、変化する必要を説き、他社と差別化する購買ビジョンを打ち出す必要があります。
ただ単に自社のソリューションの特徴や利点をアピールしても駄目です。現状を打破して変化する必要を感じてもらわなければ、ソリューションに興味を持ってもらうことはできないのです。
おわかりだろうか。これは高度な心理操作によって顧客の平衡感覚を掻き乱そうとするものだ。変化の必要や現状への不満を感じさせ、実際には欲しいものなどないときでも顧客が欲しい何かがあるかのような錯覚を与えるやり方である。営業担当者と顧客が対立関係にあることを想定している。その結果、営業担当者はマキャベリ的な、狡猾で、悪意に満ちた催眠術師のような存在になってしまう。
顧客の嗅覚を侮ってはならない。操作的テクニックを使えば顧客は惑わされまいとして必ず対策をする。顧客自身はなぜ自分がそうしているのかわかっていないこともあるが、自分が欲しい製品やサービスであっても、営業担当者を警戒して守りに入ってしまうのだ。
本書は、営業のプロが自分自身に誠実であること、自分の志に忠実であること、自分の価値観を大切にすることに戻る道を指し示す。誤った思い込みによって堕落し、常に顧客の心理を操ろうとし、顧客が買えば営業担当者が勝ち、顧客が負ける、という理不尽なゲームから脱却し、営業のプロであることのプライドを取り戻すことができる。
本書のベースとなっている営業教育はいくつかの決定的な原則を実証している。このトレーニングを受けた営業担当者たちは、営業職に就いていることにようやく誇りを持つことができるようになった、と証言している。気持ちよく、誠実であり、高いプロ意識を持つことができる。同時に営業実績が上がり、生涯顧客やロイヤルカスタマーを育成する能力がどんどん高まっていく。それこそが本書の肝である。本書は営業職に新たな人生の輝きを与えることを目的としている。
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次回は、アメリカ版正直営業のエッセンスを書いてみたいと思います。