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物盗られ妄想のおばあちゃんの対処法

認知症の症状の一つに物盗られ妄想がある。
原因→アルツハイマー型認知症による、記憶障害と思考力の低下
   不安感や喪失体験の連続による怒りと悲しみ

物盗られ妄想は、アルツハイマー型認知症の人だけでなく、うつ病・統合失調症の人にも見られる症状。
でも、どうして、そんな妄想が起こるのかは、詳しい原因は分からないけど、記憶障害と心が不安だから、妄想が起こるんだろうな~というのが、いま分かっていること。

治療は、薬で、精神安定剤を飲んで、気持ちを落ち着かせることしかない。

介護施設に務めると、必ず遭遇する妄想。
つい最近、遭遇したおばあちゃんの物盗られ妄想。

「私がデイサービスに行っている間に、これだけの物がなくなっている」
と、いつも、見当たらない物を、メモに書き出してくる、物盗られ妄想のおばあちゃんがいる。

ただ、訴え方は、騒ぎ立てるでもなく、静かにやんわりとした口調で、上品な様子で、物がなくて困っている!と伝えてくる。
決して、ケンカ腰ではないから、まだ対処はしやすい。

メモには、
・テレビのリモコン
・財布
・帽子
・通帳

と、書かれている。
財布は、事務所にあると、説明できるけど、通帳はもとから預かってない。
説明すると、「そんなことは、ない!」と押し問答。
とりあえず、預かっている財布を見せて、鍵付きの金庫に保管していることを、説明して、渋々納得する。
通帳は、また家族さんに連絡して確認するとその場限りの対応
(実際には、確認はしない)

誰かが、部屋に勝手に入ったという場合は、「鍵もかかってるし、だれも入っていない」という事を、説明し、リモコンと帽子は本人さんの部屋へ行って、探す…ふりをする。
これで、本人がさがしてるものが、1個でも見つかったら、ラッキー( 〃▽〃)
実際、テレビのリモコンがぽろっと出てくると、ありがたい。

でも、見つからなかった時は、5分ほど、探して「また、探しとくね~」とお伝えすると、ぶつぶつ(# ̄З ̄)言われながらも、今日1日物盗られ妄想は、おさまる。

とりあえず、話術も何もない、私には、基本の対処法しか実践できないけど、本人の、物がなくなった!という話を聞いてあげて、探すふりをする。それしかできない。ただ、それは、その場限りの効果しかない。

でも、この基本の対処法は、いつでもできるわけではない。
オムツ交換で走り回っている中や、食事介助をしている途中で来られると、基本の対処法もできず、「また、お部屋探しとくね~」としか言えない。

そんな時の物盗られ妄想の、おばあちゃんは、肩を落としてさみしそうにお部屋へ帰っていく。

心の中で、「ごめん・・・(>_<)」と謝る。

物盗られ妄想のおばあちゃんは、上品でお金持ちのおばあちゃんだ。
お部屋には、高価な桐ダンスと、立派なお仏壇。

物盗られ妄想のおばあちゃんは、背筋もピンと伸びていて、化粧はちゃんとしている。
会話が通じる利用者さん同士、笑顔で楽しく仲良くお話している。

どんなに、高価なものを持っていて、身なりがよくても、どんなに人とお話しても、埋められない心の穴が、物盗られ妄想のおばあちゃんにはある。

心の不安は、外から見えないから厄介だ。
いつも、心に不安を抱えているのは、みんな同じ。
みんな同じだから、「財布がない」って騒いでたら、少し話聞いてあげようかな・・・と、みんなが、駆け寄って、話を聞いてあげたら、物盗られ妄想も消滅していくかな。

心の不安は、電車のように、走り去っては消えていく。
そんなものらしい。
電車のように、通り過ぎるのを待つだけ。

電車が通り過ぎるのを、待つように、利用者さんの不安も電車が通り過ぎるのと同じ感覚で消えるのを待つしかない。
いま、自分が出来るのそれだけだ。






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