【76-81カ国め】己の旅スキルを試され続けたモルドバ〜アルバニア6日間
2024年7月、モルドバ〜ルーマニア〜ブルガリア〜北マケドニア〜コソボ〜アルバニア〜イタリアを10日ほどかけて旅してきました。
アルバニアまでは毎日飛行機かバスに乗り、国境を越える多忙な旅です。
今回は、小さなトラブルが次々に発生し、問題解決のためのスピーディーな意思決定と柔軟な対応が求められる、仕事のような旅でした。これまでの旅経験値とスキルを総動員してなんとか乗り越えた感があります。
この記事ではまずイタリア以外の6カ国、6.5日分の日記をまとめてみます。
【DAY1】2024/07/11(木)羽田→キシナウ
在宅勤務ののち、羽田21:55発の飛行機に乗る日。
実は出発直前まで重めの夏風邪を引いていた。旅に出る前は筋トレをお休みし、走り込みを増やして体力強化に努めるのが習慣なのだけれど(いつだって旅に本気です)、今回は筋トレさえできていない(※トラブル①)。
このようなコンディションで毎日国境を越えられるのだろうか――。不安を抱えたまま飛行機に乗り込んだ。
【DAY2】2024/07/12(金)キシナウ→ブカレスト
9時頃、モルドバの首都キシナウに到着。わずか10時間の滞在を経て夜にはルーマニアに移動するので、急いで街へ繰り出す。
これはたまたま通りかかった教会。
なぜか無性に気になって、そーっと中を覗き込んでみると、小柄なシスターさんと目があった。「どうぞ」と言ってもらえたのでそろそろと入る。こういう小さな瞬間があとあと思い出に残ったりするのだよね。
旅をしていると、足を踏み入れたとたんになぜか涙が出る教会やモスクに出会うことがあるが、ここはその一つらしい。息が止まったような感覚とともに、じわっと涙があふれた。
チェックしていたカフェへ。仲の良さそうなお客さん同士、常連客らしき人と店員さん、ひとり客だけど電話してる人……みんなが私の解さない言葉で楽しそうにおしゃべりしており、唐突に疎外感が襲ってきた。
「どうしてひとり旅なんて趣味にしちゃったんだろう」と思いながら、キャラメルパウダーを多めに振ってもらったアイスラテをすすっていると、景気のいいイントロとともにアヴリルのSk8er Boiがかかる。平成初期生まれの血が騒ぎ、さみしさはどこかに飛んでいった。
最後に聖ティロン大聖堂に寄って、かなり早めに空港へ。雑然とした待合室でだらんと過ごす。
ひとり海外のときは、日本にいるときのようにきちんとしていると浮いてしまうので、あえてだらんと過ごすことにしている。
ここでもベンチに三角座りしてみたり、床に置いたバックパックに足を乗せたり。東京にいる私と海外にいる私、どちらが本当の私なんだろうか、なんて青いことを考えたくなる。
通常、離陸3時間前になるとチェックインカウンターの場所が電光掲示板に表示されるものだが、なぜか待てど暮らせど出ない。1時間近く待った後にやっと「もしやオンラインチェックインしかできないのでは?」と気づき、現地語表示のみのWebサイトで、勘を駆使してチェックインを済ませた。これぞ火事場の馬鹿力(※トラブル②)。
セキュリティチェックと出国を終え、次にすべきはフライト中に飲む水の確保。だけどこの空港の制限区域内にはウォーターサーバーどころかコンビニや自販機もない(※トラブル③)。探し回った挙句、小さな免税店のレジ奥に積まれていたものを目ざとく見つけ、売ってもらった。
ルーマニアの首都・ブカレストに着いたのは21:00すぎ。機内持ち込みしていたバックパックを背負ってアライバルを爆走するも、エアポートホテルのシャトルバスの出発時刻(毎時30分)に間に合わず。正確なバス乗り場がわからないうえ、24時間運行しているかも不明で、不安に苛まれる。
治安の良くない街の夜の空港に、長く滞在したくはない。空港バスの運転手さんに「このバス、このエアポートホテルの近くを通ったりしないですか?」と聞いたり、ホテルに「今日の22:30の便ってありますか?」とメッセージを送ったりするが、空港バスは通らないルートだそうだしホテルから反応はない(※トラブル④)。
22:30にシャトルバスがやってきたときには、心の底からほっとした。
【DAY3】2024/07/13(土)ブカレスト→ソフィア
実は今日も心配ごとがある。夜にブカレストからソフィアへの国境越え夜行バスに乗る予定だが、翻訳アプリとグーグルマップを駆使しても、バス乗り場がいまいちわからないのだ。空港の近くのようだけど……?
ホテルのシャトルバスでいったん空港に行き、夜行バス乗り場を探す。その場を牛耳っていた警備員さんにチケットを見せて尋ねると「乗り場はここで合ってるよ」と返事をもらえた。でもなんだか嫌な予感がするんだよな。
まあ、それをいま考えても仕方ない。ひとまずバスで中心地へ。
ブカレストでも教会をまわるつもりが、ものすごい暑さ。人通りの少ない道で、閉まっているお店の軒先に座り込んでしまったほど。ホテルを取っていない分、バックパックを背負いっぱなしなのもかなりまずい。
ヨーロッパで一番美しい書店ともいわれる「カルトレシティ・カルーセル」へ。本には目もくれず、上階のカフェに一直線。
レモンジュースを一気飲みして人心地つき、書店の美しさに感動する余裕ができた。仕事柄、その土地で有名な書店や図書館は見ておくようにしている。
その後、有名なゴッホカフェに行く予定だったが、通りがかったカフェにビビッときて入店。このゆるいかわいさ、とても好み!店員さん(タトゥー増し増しギャル)がピカチュウのTシャツを着ていたのも良かった。
ネットで見つけた、ソ連みの強い建物を見に行く。何の建物か結局わからなかったし、ただ外から眺めただけなんだけど、わざわざメトロに乗って来た甲斐はあった。
メトロの駅もソ連っぽくてときめく。
空港へ。しばらくインターネットなどをしたのち、早めにバス乗り場に行き、周りの人に「乗り場ってここ?」「あなたはどこに行くの?」などと話しかけておく。
これは長い旅経験を通して身につけたテクニック(というか姿勢というか)。こうしておくと、乗るバスが来たときに「おーいジャパン、君のバス来たよ!」と声をかけてもらえたりするのだ。
だが、悪い予感は的中するもので、やはりバスはこなかった(※トラブル⑤)。それでも明朝までにソフィアへ移動する必要があるし、この時間帯に屋外のバス乗り場に居続けることも避けたい。
よって、予定のバスをすぐに諦め、別のバスを買い直すことに。23時前にバスが来たときは、安心のあまりその場にへたり込みそうになった。
ひさびさの海外夜行バスに緊張していたけれど、地元民らしき若い女性が普通に一人で乗っていたので、安心して過ごせた。
【DAY4】2024/07/14(日)ソフィア観光
朝8時にブルガリアの首都・ソフィアのバスターミナルに到着。美しい街並みを見ながら、30分ほどかけてホテルまで歩いていく。
ホテルで荷物を預かってもらい、中心部を散歩。ソフィアはウィーンに似ている。
80カ国旅してきて、どこに行っても「あの街に似てる」と思ってしまうのが悩みだったけど、ふと「たぶん日本が特殊なだけだ」と気づいた。
チェックしていたカフェでひとやすみ。旅先で居心地のいいカフェを見つけ、異国の空気に身を委ねる瞬間、これぞ最高のモーメント(←と、この日の日記に書いてあった)。
いくつか教会を見て回った後、12時にチェックイン。機内泊、夜行バス泊と続いたので、今日はテンションの上がる宮殿ホテルを予約しておいたのだった。
涼しい部屋でのんびり休んで、ランチに出たり、芸術的なスーパーでブルガリア産のヨーグルトを探したり、メトロの異世界感に興奮したり。
ソフィアは中心部に、モスク、正教会、シナゴーグが勢揃いしているのがとても私好み。
上品な街並みが大量のウォールアートで彩られているのも、清楚なお姉さんの首筋にタトゥーが入ってるみたいな感じで、どこかそそられるものがあった。カフェも充実してるし、もう1泊したかったな。
夕焼けに染まる街を見下ろしながら「来てよかった」としみじみした。
【DAY5】2024/07/15(月)ソフィア→スコピエ→プリズレン
7時のバスに乗り、10時に北マケドニアの首都・スコピエ着。ムスリムの人たちが集まるマーケットを通り抜け、気になっていたカフェへ向かう。
バックパックを背負って滝汗でたどり着くと、店員さんが「支払いは後でいいからとりあえず飲もう!メニュー読めないと思うから、飲みたいものを言ってみてよ」と声をかけてくれ、先客は巨大扇風機横の席を譲ってくれて、その先客が連れていた犬は私の足にすり寄って挨拶してくれた。
写真を撮ってたら常連客らしき人々はにこにこと見守ってくれるし、近くに住んでたら毎日通いそうだ。
スコピエは誰がどう見ても「ん?」と違和感を抱かざるを得ないくらい銅像が多い。それなのに『地球の歩き方』ではほぼ言及がなく、ますます奇妙だった。「!」や「?」が浮かぶ街は大好物。
水分補給のため、スーパーでアイスとヨーグルトを購入。オレオのアイス、海外で見かけるたびに食べてみたかったのだ。
スーパーの中にある小さな書店で面出しされていた本、もしや村上春樹では?と翻訳してみたら正解。しかも持ち歩いていたのと同じ本で、店員さんと盛り上がる。
バスターミナルに行き、16時発のコソボ行きバスを待つも、時間をすぎても来ない(※トラブル⑥)。焦ってまわりの人たちに質問したけれど会話が噛み合わない……と思っていたら、ブルガリア-北マケドニア間の時差を考慮し忘れていた。なんたる凡ミス。何年旅してんねん私。と自分に突っ込みを入れながら1時間待つと、当たり前のようにバスがやってきた。疑ってごめん。
陸路での国境越えはいつだって楽しい。北マケドニアでは「日本から来たの!?何しにコソボ行くの!?」だし、コソボでは現地語で挨拶したら一瞬時が止まったのちに爆笑された。
夕方にコソボの古都、プリズレンに到着。コンパクトな街で、ほどよい生活感があり、イスラムの香りがする。ゆるく見て回って満足した。
【DAY6】2024/07/16(火)プリズレン→ティラナ
早朝、鳴り響くアザーン(イスラム教のお祈りの呼びかけ)で目を覚ます。今日はアルバニアに移動するので、朝のうちに高台に登って、プリズレンの街を眺めてみよう。
工事中でなかなか道を見つけられずさまよった(※トラブル⑦)が、困っているのを察した地元の人たちが次々に声をかけてくれた。
今回の旅では、ほとんどの移動手段を出発前にオンライン予約しておいたのだけど、プリズレン→ティラナ(アルバニアの首都)のバス便は事前購入できなかった。
タイトな旅程なので、今日のバスに乗れないと困る。不安を抱えつつバスターミナルに行くも、ここにはチケットカウンターが存在しないようだ(※トラブル⑧)。近くの旅行代理店に飛び込み、チケットを買い求めた。
プリズレンはやはり人が優しい。本を読みながらバスを待っていたら、近くにいた人に「どこ行きに乗るの?」と尋ねられた。ティラナです、と答えると「いまバスが来たみたいだよ」と乗り場を示してくれた。
プリズレンからアルバニアの首都・ティラナまでは2時間半ほど。バスターミナルそばのホテルを予約していたけれど、市内中心部に差し掛かった頃にグーグルマップを見ると、どうもバスの進んでいる方向がおかしい。
スタッフさんに地図を見せて「このターミナルで降りるつもりだったんですけど、もしかして停まらないですか?」と聞いたら「いやいや停まるよ、安心して」と言ってくれたのだけど、着いたのはやっぱり違うバスターミナル(※トラブル⑨)。巨大なターミナル内を歩き回り、一つひとつのバスに飛び込んで「市内中心部に行きますか?」と尋ねてまわることとなった。
「中心部?行くよ!」と言ってくれたバスに半信半疑で乗り込み、無事に到着したときには、スタッフさんとハイタッチ。
アルバニアはちょっと珍しい国だ。「ヨーロッパの北朝鮮」とも言われており、1990年まで宗教が禁止されていただけでなく、鎖国状態にあった。国民の3分の2がネズミ講で財産を失った時期もある。
そんな国にはそそられずにいられないのが旅人というもので、今回の訪問をとても楽しみにしていた。
また、今でもほとんどクレジットカードが使えない。ATMで現地通貨を引き出すにしても、手数料が1000円近くかかる。2日間の滞在に必要な額を慎重に計算して(足りなくなって手数料をもう一度払うのも嫌だけど、現地通貨が余っても困る)、エイヤッと引き出した。
ティラナはシーフードとイタリアンがおいしいらしい。イタリア料理店でシーフードパスタを食べた。考えてみれば、ひさしぶりのまともな食事だ。パスタにはうるさい私だが、大満足の味。
ずいぶん治安が良かったので、夜遅くまで人工湖のある公園を散歩した。不思議なテイストの建物が多く、すばらしいモスクもあり、非常に好みの街だ。2泊だけじゃもったいないかも。
【DAY7】2024/07/17(水)ティラナ&ベラト
今日はティラナからバスで2時間ほどの世界遺産の街、ベラトへ行く。
ネットで情報収集していると、「アルバニアのバスはカオスで外国人泣かせ」という書き込みが多く見つかる。
もともと公共交通機関が苦手なこともあり、怯えていたけれど、運がよかったのか、バスターミナル行きの市バスにも、ベラト行きのバスにも、ベラトのバスターミナルから市内行きのバスにも、トラブルなく乗れた。
アルバニアに限らず、海外で乗るべきバスを素早く見つけるコツは、あらゆる恥を捨てて「バス停はどこですか?」「●●行きですか?」と聞きまくることであると思う。迷惑かなと思ったりもするが、その分、東京で人助けに励めばいいのだ。
「千の窓を持つ街」とも称されるベラトはとても美しいが、スマホの画面が見えないくらい眩しくて暑い。ティラナでやりたいこともあるし、1時間だけ滞在して、ティラナに戻ることに決めた。これこそひとり旅の気安さだ。
ここでもバス停がわからず、地元の人に教えてもらったし、一緒にバスを待っていたおばさまの日傘に入れてもらったりした。
ティラナに到着し、昨日の夜は外から眺めただけだったモスクの内部を見学。この機会を逃したら一生後悔すると思い、早めにベラト観光を切り上げたのだ。
「このモスクを見られただけでも、今回の旅に出た意味があった」と思えるほどすばらしかった。
ティラナは人口あたりのカフェの数が世界一だそう。今日はチェーン店のカフェでチョコシェイクを飲みながら村上春樹を読むナイトを過ごした。
翌日(アルバニア最終日)の朝、チェックしていたカフェのオープン待ちをするも、ここは海外。予定の時間になっても誰も来ず、すぐにあきらめて空港バス乗り場に向かったのだった(※トラブル⑩)。
ちょっとへんてこな街並みにそそられがちな私として、アルバニアのティラナはお気に入りの街となった。また来たい。
追記:イタリア1日目の日記を公開しました
▼イタリア2〜4日目の日記も公開しました