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元気でいろとは言わないが、日常は案外面白い

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作家による日記風エッセイ
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2024年11月の記事一覧

夜の深さを知る人に、幸福な明日が訪れればいい

一瞬で消えた秋に冬が顔を出す。寒さに震える朝と夜、陽が出ない雨の日は部屋と外の気温差に驚いてしまう。夏は湿度が高く、虫が何とか言ってたくせに、今だけは感謝していたりする。 一瞬で過ぎ去った季節の中、別れや新たな出逢いを通し、世界はまた、少しずつ色を変えていく。 そんな中、私は何をしていたかと言うと、季節の変わり目に気づかず部屋でカタカタ仕事を続けていた。昼時に少しだけ外に出た瞬間、あれ、寒いんですが?と気づいたのである。 毎日同じことを続け、同じ部屋で、少し違う物語を書

世界が終わる日にきっと、

世界が終わるとしたら 子供の頃、よく考えていた。 明日、世界が終わるとしたら。 その瞬間はどのように訪れるだろうか。幾度なく見た映画や小説のように、隕石が落ちてきたり、怪物に破壊され、大地震、津波、アトランティスのように海に飲まれ消えるのかもしれない。 ただ世界が終わるなら、さっさと死んで生まれ変わりたいと思っていた。 人生に意味など無く、未来に希望は存在しない。スポットライトを浴びる人間を陰から見て唇を噛み締めるくせに足踏みする。そんな生き様がお似合いだとでも言うよ

雨音を聞くその時に、私が私であればいい

つんとした、空気の冷たさに目を細める。 子供の頃、雨が好きではなかった。 濡れたランドセル、浸水した靴、水浸しの廊下、鬱々とした空気。 成長した後も雨はいつだって私を憂鬱にさせていた気がする。制服が濡れ、ローファーの隙間からぐちゅぐちゅと音を立て溢れる泡に、心底吐き気がしたのを憶えている。 高い湿度、乾かない洋服、家路につく足が速まるのに気分は億劫。水溜りを踏んでしまえば尚の事。 でも子供の頃から私は、本当の意味で雨が嫌いなわけではなかったりする。 静かな部屋で電