僕らは金木犀の奴隷なのかもしれない
金木犀が増えるのは魅了された人間が堕ちていくからだ
隣町にかかりつけの歯医者がある。歩いて向かうのは電車代を浮かせたいからという理由ではなく、純粋に運動不足解消のためだ。信じられないくらい運動をしていないので、人間は程々に歩いた方が良い。そのうち一歩踏み出すだけで悲鳴を上げる身体になるかもしれないから。
道中金木犀の生垣がある。良く晴れた、秋晴れの空だった。淡い青が空高く、雲は薄っすらキャンバスの上に広がった絵筆のように伸びている。顔を上げれば木漏れ日の隙間から覗く青に、