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元気でいろとは言わないが、日常は案外面白い

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作家による日記風エッセイ
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2023年10月の記事一覧

僕らは金木犀の奴隷なのかもしれない

金木犀が増えるのは魅了された人間が堕ちていくからだ 隣町にかかりつけの歯医者がある。歩いて向かうのは電車代を浮かせたいからという理由ではなく、純粋に運動不足解消のためだ。信じられないくらい運動をしていないので、人間は程々に歩いた方が良い。そのうち一歩踏み出すだけで悲鳴を上げる身体になるかもしれないから。 道中金木犀の生垣がある。良く晴れた、秋晴れの空だった。淡い青が空高く、雲は薄っすらキャンバスの上に広がった絵筆のように伸びている。顔を上げれば木漏れ日の隙間から覗く青に、

結び目を解けば、いつも同じ場所に辿り着く

人は触れてきたもので出来ている 先週歩いた道に咲いていた彼岸花が枯れていた。ただ枯れているのではなく、鮮やかな赤が抜けるように白くなっていた。花弁の先に僅かな薄桃が残っている。茎は茶褐色、水分を失っていた。 彼岸花ってこう枯れるんだ。思わず足を止めた。咲き誇る姿しか知らなかったから、こんな風に色彩を失って枯れるなんて思わなくて、美しいと感じた。 だって真っ白になっていた。色水を吸わせて虹色に変わったカーネーションが、ただの水につけたら元の色に戻っていくのと同じように。繊

僕も君も、人間は足りない物ばかりで

多分きっとさ 彼岸花が咲いていた。気づいた時、そろそろ書けると思った。 毎年夏になるとバテる。いやバテというより色んな事が上手くいかなくなる。私はこれを、魔の期間、7月~9月と呼んでいる。 面白いくらい何をしても身にならず、何も叶わない期間である。何でそうなった?What?問いかけたいくらいには何も上手くいかない。さらに暑さが邪魔をして気分が下がる。そして創作意欲があるにも関わらず自己否定的になり書いても出さなくなる。 そう、負のループ期間なのだ。 もう四半世紀生き