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朝ドラ「虎に翼」の弁護士考察・第11週/第12週(戦前の少年法、家裁発足の苦難ほか)

第11週から第12週までは、いよいよ寅子が家庭裁判所の立ち上げに尽力します。

NHK連続テレビ小説「虎に翼」を視聴して、弁護士目線で気になったことを、noteにしたためています。


家事審判所・少年審判法統合の課題

家事審判所と少年審判所とを統合して家庭裁判所を設立することに対しては、ドラマだけではなく、現実にも、厳しい反対の声がありました。

その理由として、同じ行政機関として少年院と少年審判所が密に連携してきた戦前の仕組みが、両者を行政機関/司法機関として切り離すことによって崩れてしまうのではないか、との考えがあったようです。

多岐川幸四郎のモデルである宇田川潤四郎は、最高裁判所事務総局家庭局長として家庭裁判所の設立に大きく貢献しました。その宇田川自身も、戦前の少年審判所が、行政機関として矯正院(現少年院)と緊密に協調していたことを、美点として挙げています。

戦前の少年法は、行政機関である少年審判所が、罪を犯した少年を、矯正院(現少年院)などの施設に送致するか、保護者のもとに返すかといった処遇を決めていました。少年審判所と矯正院(現少年院)などの施設との間では、お互いに人事異動があり、密な連携が図られていたそうです。家庭裁判所の設立はGHQの意向で進められたものですが、実際のところ、GHQ内でも、家事審判所・少年審判所の統合に対しては、否定的な意見もあったようです。

少年の処遇を決める裁判所と、少年を現場で教育する少年院とが完全に切り離された現行制度のもとで、お互いがどうやって「連携」を図っていくかは、現代に続くテーマであると感じました。

「虎に翼」は、「歴史ドラマ」でありながら、現代の司法につながる重要なテーマを投げかけてくれるところが魅力です。

家庭裁判所の「教育的性格」

ドラマと同様、多岐川のモデルである宇田川も、家庭裁判所の性格の1つとして、「教育的性格」を掲げています。裁判所が教育者の役割を担うことは、当時の社会において画期的であったとともに、「本当にそんなことができるのか?」「理想論すぎないか?」という不安の声も多々あったと想像します。

現在の家庭裁判所では、心理学、社会学のプロフェッショナルである家庭裁判所調査官の意見が、「教育者」の視点で大きな役割を果たしています。家庭裁判所の発足当時には、このような制度も確立されておらず、前途多難な状況であったと思います。

ドラマで描かれた苦難の道のりから、家庭裁判所の礎を築き上げた法曹界の先人の偉業を感じました。

少年の更生

第12週は、1人の少年の更生がクローズアップされていました。作中では、「家族の愛」が1人の少年の心を開いていく姿が描かれていましたが、まさに、「家庭裁判所が目指す理想」というべき形です。

ただ、実際の少年事件において、ここまでの更生環境が整えられることは、かなりレアケースであると感じます。法曹の1人として、理想と現実との乖離にどう向き合うべきか、改めて考えさせられました。

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