夢をかなえるカンカンクッキー
「カンカンクッキー」
いただきもので登場するクッキー缶のことを、私は今の今までこう呼んでいる。幼少期のおしゃべりの名残というものは、不思議なことにずっと消えないもので。
缶はずっとカンカン。たぶん一生カンカン。
オロナミンCはずっとオミロナンC。最近CだかDだか怪しくなってきたけれども。
幼き頃に登場するカンカンクッキーといえば、それは宝石の詰め合わせと同義である。甘くうっとりとした夢の世界。
限定色が楽しみな資生堂パーラーの花椿ビスケットでしょ、渋い模様が脳裏にこびりついているモロゾフのアルカディアでしょ。そして「あの青いカンカンといえば?」で大抵の人は思い浮かぶヨックモックのシガール。一家に一台ドラえもん、一家にひと缶ヨックモック。全日本カンカン所持され率No.1と踏んでいる。
なかでも特に、すごいクッキーなのよとのフレコミでいただいた村上開新堂のクッキー缶との出会いは衝撃だった。謎のキスチョコみたいな形のやつに、はじめて食べる妙にスパイスの効いたクッキーたちがギッチギチのモッリモリに詰め込まれていて、幼心にカンカンクッキー=夢の食べものという概念が確立された。
そんな幼い頃の夢がつまったカンカンクッキー。これはあくまで、どなたかからの贈り物でいただくものであって、自らつくるなんて想像だにしたことがなかった。
が・・・・!
noteってのはもの好きが集まるところでして。だから私も、かれこれ4年も続いているんですがね。
類は友を呼ぶといいますか、フルモードで勉強とか仕事して、夜中に粉活にいそしむとかいうかつての私のような異常行動に似た動きをみせる方をちらほらと発見。そしてそんな方がいともさらっと見目麗しいクッキー缶を作っていることに驚愕。作れるものなのね自分で、夢のカンカンクッキーって。
ここでとりあえずセンスのかたまり・天才みちさんのクッキー缶マガジンを貼っときます。やっぱり、すげえ。ため息。こんなの贈られたら感動して号泣しちゃう。
そうそう、今回の一時帰国で出会った2つのカンカンクッキーも素晴らしかった。
ひとつが、妹が買ってきてくれたもの。塩尻にあるパティスリークルールさん。シェフがパリのジャン=ポール・エヴァン本店で修行されていたそうで、ショコラものは特にハズレがない。
カンカン自体はただの缶なのだけど、このショコラサブレが本当に美味しくて。「ほっぺが落ちる」ってこういうことを言うのねトトロ。
もうひとつが、サブレ・ミッシェルのカンカンクッキー詰め合わせ。親友Yたんと麻布ごはんしたときに、彼女からのお土産でいただいたもの。フランスに戻ってからのお楽しみにと思ってそのまま大事に持って戻り、時差ボケ4時起きの朝、開封。で、感動に次ぐ感動。
フランスのエスプリが光る玄人仕事のショコラ・カンカンクッキーに、日本の仕事の丁寧さとかもののキュートさとかがあふれ出ているカンカンクッキー。
サブレミッシェルのカンカンクッキーを食べ終える頃、もろもろのコンディションに大きく左右されがちな我がモチベが突然、コンディションなんて気にしねえとばかりに大きく上に振れた。なんか、今なら作れそうな気がする。夢のカンカンクッキー。
夢は見るものじゃなくてかなえるものなんだって誰かいってたよね?
いつまでも夢見る少女、じゃなかった不惑じゃいられない。
いきなり何種類も生地を作ってむにゃむにゃってのはハードルが高い。何事も小さな一歩から、である。
とりあえず鉄板のスペルト小麦のサブレはつくるでしょ?Otto氏も私も好きだからサブレ・オ・シトロン、色がもう一色あったほうが良さそうだからココア味の型抜きクッキー、これくらいかな。
今回日本で仕入れてきた新入りの型は、レモンとかハトとかユニコーンとかマーガレットとか。
ここまで作ったらラップに包んで冷蔵庫でお眠りいただく。私も就寝×2夜。
翌々日、今日こそ俺は・・・!
気合いを入れて型抜き及び焼きに取り組むことにする。
まずはおニューのレモン型でサブレオシトロン。合羽橋で仕入れたアクリルルーラーが大活躍。
ココア生地は小さめの型メインで。マーガレット型に星型に葉っぱ型。
スペルトサブレ生地は、メインのハト。夢を運ぶハト。
あと、ココア生地でつくったマーガレット型が予想以上にかわいいので、スペルト生地もマーガレット型を量産。
アクリルルーラー、3mmだとスタンプクッキーとかつくるときに扱いにくいという声をみたので、それならばと5mmにしたけど、5mmだと必然的に出来上がるクッキー量が少なくなるな(当たり前)。次回3mm買おう。
そしてさらに翌日。詰め込む前におめかししようね。レモンアイシングとピスタチオを準備。
そうそう、俺🐶がしょっちゅうキッチンまで様子を偵察に来ていたので、俺用もついでに作ってあげようね。イッヌにはとことん激甘なわたくし。
米粉と小麦粉と黒胡麻きな粉を混ぜたら、油をちょい加え、さらに牛乳を少しずつ加えて塩梅のいい硬さになるまでまーぜまぜ。
ボーン型🦴は大中小とサイズを取り揃えてございますよ。
おおっと、俺がいると脱線しがち。
ヒト用カンカンクッキーの話に戻って、さあ、あとは詰め込むだけ。
夢をかなえてくれるカンカンは、これに決めた。
最後の詰め仕事。むしろここからが本番。
ワックワクで1枚ずつ底面に並べてみたけど、どう並べてみても隙間ができまくる。これは困った。あのキスチョコみたいなやつ(メレンゲですよね)をつくる気力は残ってないし・・・と、ふとセンターテーブルに目をやると、あった!あったよ!ボンボニエールに入った金平糖が!
先ほど登場したサブレ・ミッシェルのカンカンクッキーで学んだこと、「隙間には金平糖」。即真似っこして、隙間に金平糖を詰め込みましたよ、ええ。
それでは初めてのカンカンクッキー、ご開帳。
いーち、
にー、
さん!
うおおおお、初めてにしては上出来じゃないの私?やるじゃん!
派手さにかけるけど、あえてのこの素朴さがウリ。
やっぱり丸型より四角のほうが詰めやすかったのカナ?とも思うし、ズボラ発動して下にも側面にも何も敷いてないし、味にバリエーションが3つしかないし、反省点は山積み。それでも、小さな夢をかなえられたのがうれしくてもう。
どんな大きな夢でも小さな夢でも、最初の一歩をほんのちょっとだけ踏み出してみるのが大事なのかな?出来なそうだけどダメ元でちょっとやってみるくらいな感じで。
なーんてことをハトサブレ片手にむにゃむにゃ考える、カンカンクッキーの夢をかなえたゾウ、じゃなくて不惑のお話。