三月短歌自選
彼岸の狭目に影揺れる
土耳古桔梗のはらり純白
遠き海想えばふるさとなき躰
液体に目覚めし意識の宿命に溺ゆ
かの黒猫おとめに贈りて
ことば忘れし祖父イブのよに発つ
たましいの葬い願った心は
どんな産声を上げたの re-birth in the fluid
古物市に拾ひし十字は青錆
交差接点 触合う指先は一千年のしじまに
微熱にぐずるシーツの糊目は
病床の夏に忘れし命の湿度のくたくた
河津桜 言葉負ひし痛みに早咲
うらら季節へ焦げる躰さみしさ
「空なんて選ばないわ」
フリルの重層コンクリに羽撃き
棘棘ドレス纏ひし君と電話は明け方
おやすみを告合うアナーキズムの秘境で
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