本を読む前が一番ワクワクした話。
わたしは、働きながら司書資格の勉強をしている。
新卒3か月で転職して間もない頃で、周囲と自分を比べてしまい、なんとなく引け目を感じていて、自分自身に自信が持てずにいた頃だった。
ただ、働くとなったらやっぱり、好きなものに囲まれて仕事をしたい!
そう思い、司書資格の勉強を始めた。
私は、本、接客、静かで落ち着いた環境がとても好きだ。
図書館に来る人は、小さい子から年配の方、学生の方、主婦さんなど様々であり、接客もとても楽しそうな印象だ。
資格を取って、図書館で勤められたら、好きなものに囲まれて仕事ができる…
わたしはそんなことを考えてニヤニヤしながら、スーパーの帰りに
ふらりと本屋に立ち寄った。
本屋に入ると、入り口には、夏にオススメの本が並んでいた。
学生は夏休みだ。
小中学校の時に、読書感想文を学校が始まる1週間くらい前からようやく書きだしたことを思い出した。
自分の学生時代を懐かしみながら、おもむろに本棚を見てまわる。
本の声が聞こえてくる、というのはこういうことなのかもしれない。
ふと、目に入った本があった。
司書になることを夢見ていた私は、図書館という言葉だけで、その本に魅かれてしまったのだ。
「『お探し物は図書室まで』?…どんな話?」
そう思って、裏表紙にある、あらすじになんとなく目を通した。
「お探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか?」
その一文に、ビビビッときてしまった。
そしてあらすじには、こんな続きがあった。
今の私にぴったりだと、感じた。
この5人と同じかも…
なけなしの期待を持ち、本を持ってレジへ足を進めた。
本を買って本屋を出ると、すっかり秋の空が広がっていた。
冷たい風、澄んだ空と羊雲。
カラカラと音を立てて、落ち葉が足元をかけていく。
私が司書になれたら・・・
これから本の中の司書に出会うわくわくした気持ちと、自分が図書館で働いている姿を想像しながら、足取り軽く駅へとむかった。
-Fin-
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