2013年、秋の日記
東京の街に出てきました。
僕は生まれも育ちも東京都下で、上京というものをしたことがない。憧れもなければ、落胆もしない。
ただの東京がそこにあって、そこに僕がいる。
終電、品川へ向かう山手線の中には東京の顔しかないのになんだか全ての世界を包んでいるような不思議な空気があって、僕は息が詰まりそうになる。
目の前で缶ビールを飲んで一人でにやつくじいさんの人生を僕は知らない。
左隣でガムを噛みながら耳障りの声で話す、太った女の人生を僕は知らない。
僕がわかるのは、彼らが東京にいて、品川までの何処かの駅でおりることくらいだ。
人間、人間。東京、東京。
新橋新橋
冗談でも嘘でもなく、全ての人が幸せになればいいのに、と思う。
右斜め前で、悲痛な面持ちで窓の外を眺めるサラリーマンも、その隣で寄り添っているカップルも、みんな幸せであればいいと思う。
僕は誰かの幸せに寄り添いながら自我をなくしてしまいたい。
どうせ大した遺伝子ではないのだから、器としての資格を剥奪していただいて、どこか遠くに行きたい。
遠くに遠くに遠くに。
いつか点になって消えてしまえば、誰も気づかないのかなぁ、と思うと少し寂しい。