ウサギ洞窟の入り口には、土器や人骨のかけらが散らばっていた。 カルロスの指示のもと、昨年大学の考古学科を卒業したばかりの若い助手、アレックスが、内部の様子を見に洞窟の中へと入っていく。しかしすぐに、首をふって引き返してきた。洞窟は下へ下へと垂直に続いていて、これ以上はロープがなければ進めないという。おそらく、誰かがかつてこの洞窟を下まで降りて、中の遺物を入り口まで持ち出してきたのだろう。めぼしいものは、既に持ち去られたあとかもしれない。いずれにせよ、下まで降りるには相応
現地入りして約2週間後。我々はとある洞窟遺跡へと向かっていた。 シピボ族のガイド、エリックのおかげで、近隣のいくつかの村で遺跡情報が手に入った。早速、遺跡探索のスケジュールを組む。その日の探索予定地は、大きな川を渡った先にあった。エリックが事前に話をつけてくれ、地元の人のカヌーに乗せてもらうことになっていた。 ティンゴマリアの街から車で約2時間。パバヤクの船着場に向かう。パバはスペイン語でメスの七面鳥、ヤクはケチュア語で水を意味する。アマゾン川の支流の支流、そのまた
遺跡探しは、順調にスタートしたとは言い難かった。 アマゾンの入り口の街、ティンゴマリアの郊外に拠点を定める。州都のワヌコほどではないが、ほどほどの大きさの街である。このあたりでは、険しい山と森の合わさった独特の自然を生かした観光業が盛んだ。今年はコロナ禍での厳戒態勢が解かれたことで、観光客も戻り、街は活気にあふれていた。 実は昨年、私たちはこの街から車で2時間ほど山側にすすんだところにある村の近くで、発掘調査を行っていた(そこでの発見が、今年の調査を始めるきっかけに
南米ペルー、ワヌコ市からティンゴマリア市へと抜ける山道の峠付近に、そのトンネルはある。標高2800mの峠、カルピシュ。ワヌコの街を出ていくらも行かないうちに始まる、つづら折りの長い山道を上った先で、アンデスの乾いた土色の山並みは、突如として鬱蒼とした森へと変貌する。 ワヌコ-ティンゴマリア間を結ぶこの国道は、ペルーの太平洋岸から東のアマゾンまでを繋ぐ重要なルートの一部だ。首都リマから一気に山を上り、標高4000mを超えるフニン高原を抜け、アンデス東斜面の中規模都市である