毎日超短話256「不安と後悔」
夜中にドアホンが鳴る。ドアを開けると、めっちゃ明るい声で、彼らが言った。
「どーも、不安です!」
「後悔です!」
センターマイクに向かって彼らは話し出す。
「いやー、勢いで来ちゃいましたけど、めっちゃ不安ですわー、もうやめようかなー!」
「ぼくも後悔してますわー、来なきゃよかった! 人生後悔だらけ!」
不安と後悔を交互に話すだけで、とくにボケもツッコミもしないので、笑えるところはない。
「いい加減にしろ。どうも、ありがとうございましたー」
彼らはドアを自ら閉めた。
「この前ね、こんなことがありましてね……」
センターマイクに向かってわたしはひとり、漫談をはじめている。とくにオチもないけれど「良い加減」になって、ふっと肩の荷が降りていることに、気が付いた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?