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おかえり、たばふじ漫才。(漫才の保存について)

FANYチャンネルに
たばふじ漫才が帰ってきた

ずっと残ってほしい
大好きな漫才たちが

*当方、吉本興業所属の田畑勇一さんと藤本淳史さんを推すオタクです。お二人は「田畑藤本(通称:たばふじ)」という漫才コンビを組んでおられましたが、2020年末で解散。現在はそれぞれピン芸人として活躍されています。

FANYチャンネル

FANYチャンネルは吉本興業が運営する配信サービスで、お笑いコンテンツを多数配信している。

https://osaka-channel.hikaritv.net/

コースが2つあって、
月額480円の「大阪チャンネル」は、
各劇場の過去動画や、テレビ番組、
以前YNNで配信していたライブなど。

プラス月額1500円の「よしもと劇場プレミアム」は、
最近の全国の劇場公演のうち
一部の選ばれたライブを視聴できる。

タイムマシン

大阪チャンネルには、サービスを開始した2017年から
お世話になっている。
当時は、アキナ牛シュタインの3組を薄く推しながら、
大阪よしもとのライブを浅く広く楽しんでいた。
関西のテレビ番組や各劇場の過去の公演が視聴できて、
今でも生活に欠かせない。

2020年3月からの自粛期間中に、
全国の劇場公演をリレー形式でつなぐ
「吉本全劇場生配信」が始まり、
そこで、バイク川崎バイクさんを入口として
初めて東京よしもとのライブを見るようになり、
ダイタクにはまり、たばふじに至る。

大阪チャンネルの、開いたことのなかった
「よしもと∞ホール」のフォルダを開けば、
彩Jr.LIVEをはじめとして、
2013年からのライブが山のようにあって、
まだ20代のたばふじさんの漫才が見られた。

デビュー当時の漫才が
よしもと公式YouTubeから出ていて、
解散宣言が出るまでは、
YouTubeのたばふじちゃんねるにも
2019年の単独イベントの漫才が掲載されていたので、
2020年の4月に知ったばかりの田畑藤本さんの漫才を、
4月から5月にかけて、
12年分一気見することができた。

こんなに面白い漫才師が東京にいたんやな。
もっと早く出会えてたら良かったな。

たばふじさんを知らなかった月日を取り戻すように、
1ヶ月くらいの間に、
大阪チャンネルやYouTubeのタイムマシンに乗って、
たばふじ漫才にどっぷり漬かった。

これから楽しみやな。

その「これから」は、8ヶ月ほどで終わってしまった。


オズワルドさんたら、もう

今年2月に「大阪チャンネルプレミアム」が始まった。
登録するのに勇気が必要な月額だったけど、
コンビとしての田畑藤本さんは
もうアーカイブの中にしかいないので、
可能性のあるコンテンツには入っておきたかった。

そして、9/28。
8月にゲスト出演されていた
オズワルドさんのトークライブ
「オズワルドさんたら、もう」の配信が告知された。

懐かしい。
畠中さんの疑問を
たばふじさんともう中さんが聴くというライブ。
畠中さんのふしぎな雰囲気が印象的だった。

帰ってきたたばふじ漫才

「オズワルドさんたら、もう」の配信、10月からかぁ。
嬉しくて、そこから数日、
別に動画を見るつもりのない時も
何度もFANYチャンネルのアプリを開いて
配信一覧を眺めていた。

そして、とんでもない画像を見かけてしまった。




………え?
「GW特訓」の時の野球部のコント…?…なんで?

わけがわからなかった。

画像の下に、
2019年の単独イベント
「GW特訓」
「梅雨特訓」
「夏期講習」
の名前が連なっている。

この3本が、…配信されてるってこと?

すぐに開いて見ることはできなかった。
とりあえず、身体が震えてうまくタップできない。
心臓がバクバクして、全身が熱くなって、
頭がクラクラして。


田畑藤本解散発表の直後、
たばふじちゃんねるから消えてしまった
「GW特訓」と「梅雨特訓」の漫才が、
また見られるのか!

そして、「夏期講習」って何?
たばふじさん解散してるのに、
私にとって〔初見〕の漫才もあるってこと?

どういうこと、どういうこと?

30分ほどかけて気持ちを落ち着け、
おそるおそる「GW特訓」を開く。

「やりたいこと」
「正しい言葉遣い」
コント「東大野球部」
「バーチャル」

自粛生活を支えてくれた、大好きな漫才があった。

微笑ましいコントがあった。

見たことがないオープニングやVTR企画があった。

「梅雨特訓」の前半2本の漫才は、
YouTubeで見ていた時よりもカメラアングルが良い。
その後、YouTubeには載っていなかったコントと漫才、
しゅんPさんとのトークとコーナー。

「夏期講習」はまったくの初見。
田畑藤本さんの新作漫才なんと6本。
最後にたばふじお二人のゆったりめのコーナー。


信じられない気持ちで何度かリピートした。
これらの漫才を、見たい時に見られるようになったんだ。

たばふじ漫才が、帰ってきた。

FANYチャンネルさん、
本当にありがとうございます。

※ 上記の3本のライブは、FANYチャンネルのうち、
大阪チャンネル(月額480円)の方で視聴できます。

私の推し漫才

好きなたばふじ漫才はたくさんあるけれど、
「3本挙げろ」と言われれば、すぐ思いつくのは、

「やりたいこと」(2019GW特訓)
「正しい言葉遣い」(2019GW特訓)
「童話」(2019梅雨特訓)

何度か書いてきていることで、
読み飽きてる方もおられると思うけど、
ちょっとだけ、推し漫才の好きなところ語り。

「やりたいこと」(2019GW特訓)
初めて見たたばふじ漫才は、
おそらくたばふじ漫才の中で一番有名な「青春」。
青春の魔の手にかかって
ライバルがみんな法政大学に行ってしまう、あれ。
あれを見て田畑藤本というコンビに興味を持ち、
たばふじチャンネルを見始めて、
一瞬で堕ちたのがこの漫才。

田畑さんがやってみたい映画のシーンなどを
「親に見せてもらえなかったから」とできない藤本さん。
逆に藤本さんがやりたいことをやらせて、と提案。

「この場を借りて、僕が全部補助しますから、
 金属製の部品に剪断応力をかけるところを
 やってもらっていい?」

…あぁ、何度聞いても気持ちいい!
共感してもらえる人が多くないのは知ってます。
でも、とにかく私は気持ちいい。

このあとも続く気持ちいいセリフ回し。
1速ずつギアを上げていくように
一段一段盛り上がっていく流れ。
見終わった後にスッキリする漫才。


「正しい言葉遣い」(2019GW特訓)

田畑さんのエピソードトークを聞きながら、
間違った言葉遣いを正していく漫才。
途中から妙な方向に進んでいくのも楽しかった一方、
終盤、藤本さんのこのセリフで
思わずウルっときてしまった。

「いつも我慢してんねん!
 いっつも人と話してて、気づいてるけど、
 空気読めへんかったら嫌われるから!」

小学生時代、先生とうまくいかなかった。
高校や大学では大丈夫だったのに、
大人になって、ママ友の中でまたうまくいかなくなった。

言いたいことを飲み込んで、
黙っておくという手段しかない。
今では当たり前となってしまったその感覚を、
そこで本当は感じているモヤモヤを、
漫才の中で、藤本さんが叫んでくれている。
この漫才が、成仏させてくれている気がする。


「童話」(2019梅雨特訓)
童話を「子供騙しの寄せ集め」とこき下ろす藤本さん。
「おおきなかぶ」や「かさじぞう」などについて、
科学的観点から次々と矛盾点を指摘していく。

漫才版「空想科学読本」。

無駄を削ぎ落とした流れはもちろん、
ちょうどいい理科の知識と
研ぎ澄まされたセリフまわしが好きすぎて、
暗唱できる。



漫才は実にいろんなパターンがあるけれど、
たばふじさんの漫才は、
しゃべくりで、ひととおり展開があって
「面白いなぁ」と笑っているところに
さらにひと山もふた山も積んでくる。

磨かれているから無駄なくキュッとまとまり、
充実していて美しい。

過去形じゃない。
現役でたばふじ漫才が大好きだ。

また見られるようになって、本当によかった。


漫才の保存について


年末からたびたび書いているけれど、
漫才は作品であり遺産(レガシー)であるという文化が
広まってほしいと、切に願っている。

歌は、ひとたび発売されると
作者や歌手から離れて作品として残るし、
落語も、録音・録画として数多く残されてきた。

その中で、漫才だけはずっと、
その場限りの儚さが美徳とされてきたところがあった。

立ち話のような一期一会の漫才も好きだ。
一方で、構成を練り、言葉を研ぎ澄まし、
作り込まれた漫才も大好きだ。


昨今の動画ブームで
YouTube等に保存される漫才が増え、
繰り返し鑑賞することができるようになった。
とても嬉しい動きだが、
漫才コンビが解散する時に動画を消されてしまうと、
客はどうしようもない。

スピード感ある掛け合いで感じる爽快感。
私の気持ちを代弁してくれた時のカタルシス。
思いもよらない角度からのボケで、脳が喜ぶ感じ…。

これらをもう一度味わおうと思っても、
漫才が消えてしまったら、とっかかりがない。
もうあの時の感動に戻ることができない。

解散した漫才師からしたら、
もう見たくない過去かもしれない。

でも、漫才って、
世に放たれた瞬間から、
社会になんらかの波を残している。

客はその漫才からさまざまなものを受けとっている。

だから、消えてほしくない。
我々が漫才を見て感じたものを、
なかったことにしないでほしいのだ。

漫才師が解散してしまっても、
漫才だけは残っていくような、
そんな世の中になったらいけないだろうか。

漫才のDVDを販売する漫才師がいる。
そういう動きが、
もっと広まってくれたらいいのに。
5年目の記念で、10年目の記念で
その時のベストアルバムを出すような、そんな文化が。

今は、DVDよりYouTubeの時代か。
無料で拝見できて、客としてはありがたい。
これが、消えないでいてくれさえしたら!

漫才の保存について、
お笑いに携わる皆さんは、
お笑いファンの皆さんは、
どう思っておられるだろう?


ー・    ー・・・    ・・    ーー・・    ーー・ー・    ・・

たばふじ漫才は、残念ながら現時点で有限。
まだ見ていない過去の漫才はあるけれど、
新しい漫才が生まれることはない。

それでも、
見たい時に見たい漫才を見ることができるようになって、
心の奥底に大きな安心感が芽生えた。

疲れを癒すため、モチベーションを上げるため、
リラックスするため、悲しみを乗り越えるため…
さまざまな目的で、
お気に入りの「歌」を聴くように、
暮らしのさまざまな場面で、
お気に入りの「漫才」を見て、
元気になったり、スッキリしたり、勇気をもらったり…。
そんな、漫才とのつきあい方をしたい。


おかえり、たばふじ漫才。
帰ってきてくれて、ありがとう。

僭越ながら公開しました。