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毎日超短話846「息子」

小さなころはお喋りだったのに、思春期を迎えた息子は、聞かれたことしか喋らない。男の子ってそんなものだよ、聞かれたことを答えるだけでもいいじゃん、と夫は言う。そうかと思ってふと、背を向けてる息子に「どうしてお母さんのところに生まれたの?」と聞いてみた。さすがに答えられないか、と思っていると、息子は答えた。
「このまえ、自販機でコンポタ買おうと思って押したらさ、おしるこ出てきてさ。そんな感じ」
「間違えて来ちゃったの?」
と、強がって笑うが、私はちょっとヘコんでいる。聞かなきゃよかったと後悔しながら。
「うん、でも、間違えてよかった」
背を向けながら、息子はそう言う。私は息子の背中にそっとハグをする。嫌がらない息子が、たまらなく可愛い。


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