毎日超短話789「来世はギター」
吊り革につかまって立っているとき、電車が急停止した。その勢いでとなりの人にぶつかってしまう。その瞬間、その人から何かポロンと優しい音がした。すみませんと謝りながら、また少し電車が動いて、思わずその人のシャツにつかまってしまう。また、ポロンと。
「大丈夫ですか?」
と聞かれて「すみません」と返しながら、ポロンというその音のことを聞こうか迷う。
「来世はギターになろうと思っているので」
聞く前に、その人は答えた。
これがわたしたちの馴れ初めです、と言っても信じてくれる人はいない。
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