#345 臆病で地味だからこそ、最終的には勝てる。#項羽と劉邦
もっと明るくならなきゃ!とか、
あんな風にはつらつと話せるようになりたい。
とか思ってしまうことってないですか?
臆病な自分を変えたいとか、慎重な自分を変えたいと考えちゃう。
でもそういう自分だからこそ長期的に見ると成果を上げられるってことはある。
慎重で臆病な自分にも他の人にはないすごい長所がある!
そんなことを「項羽と劉邦」を読んでいて思った。
キングダムの後の話
項羽と劉邦は司馬遼太郎の代表作の一つだ。
時代背景は始皇帝が秦を作った後の話。
キングダムの後の話っていう方が馴染みがある人も多いかと思う。
中国が始皇帝によって統一され安定するかと思われたが、実際にはまだま混乱が続いていた。
打倒秦を目指し、様々な勢力が台頭している。
その中で一番大きい勢力のリーダーが、圧倒的なカリスマと武力を持つ項羽と臆病で地味だけど部下の意見を取り入れる劉邦である。
面白いのは最終的に勝利するのは圧倒的な勢力差と凄みのある項羽ではなくて、うだつの上がらない劉邦というところ。
劉邦が部下の意見を取り入れて勢力を拡大し、民衆からの信頼を得ながら戦う姿が痛快である。
臆病だからこそ大きな失敗をしない
劉邦の臆病さが最終的な勝利を導いた。
このことが現れる有名なエピソードがある。それが鴻門の会だ。
劉邦は運も味方し項羽よりも先に秦に攻め入り制圧することができた。
新たな国主として秦の人民を収めていくのだが、これを見た項羽が激怒した。
項羽が秦国の主戦力を倒したからこそ、劉邦が先に攻め入ることができたのだ。それなのになぜ勝手に国を納め始めているのだ。
項羽は会談の席を開き、そこで劉邦を打ち殺してしまおうと画策する。
その会談の席を鴻門の会と呼ぶ。
これは有名なシーンで、高校の古典でも登場している。
結論としては劉邦は殺されずに済んだ。
劉邦が最初から最後まで項羽にひれ伏して、謝りまくったからである。
プライドも何もあったものではない。
だがこのために殺気だっていた項羽の気が削がれてしまったのである。
「こんな雑魚を殺したって仕方がない。劉邦とはこんなに弱かったのか」と。
最大の窮地を脱した劉邦はその後勢力を立て直し、項羽を倒してしまう。
これは劉邦が臆病で慎重だったからこそできた立ち回りだった。
もしも劉邦もプライドが高くて、尊大に返答したら速攻で首をはねられてしまっただろう。
臆病だからこそ大きなリスクを回避できて、長期的に見たら大きな成果を生む。
地味でも謙虚さと優しさがあれば、良いリーダーになれる。
部下からしたら劉邦のようにうだつが上がらないリーダーというのは、意見をしやすいというのもあるだろう。
劉邦の部下はどんどんアイディアを出し、それによって勢力が拡大していく。
一方で項羽は確かにカリスマ性もあるが、その反面自分の力に頼りすぎてしまう。
部下は意見することを恐れるし、反発する人も多い。
短期的に見れば項羽は華やかで人を惹きつけるが、その華やかさが故にだんだんと周囲の人を疲弊させる。
項羽はその強大な力に任せて、略奪や殺戮なども躊躇なくやってたらしい。
だから民衆も項羽に恨みがあった。
一方で劉邦は部下の忠告で略奪を禁止してたらしい。
そういう意味でも劉邦に次第に信頼が集まっていった。
結局は短期的な成果よりも、長期的にどうやって信頼を構築するかが大事だ。
劉邦的な、地味だけど長期的に信頼を集めるリーダー像というのは胸を打つし、自分もそうでありたいと思えた。