マガジンのカバー画像

シロクマ文芸部参加

34
シロクマ文芸部参加のショートストーリーです。
運営しているクリエイター

2023年10月の記事一覧

浄化  :  「#珈琲と」

浄化 : 「#珈琲と」

珈琲と飛行機雲。

テーブルに頬杖をついて、
はぁ〜と、ため息をついた。

人って、みんな違う。
そんなの当たり前だけど、
それが許されないことって沢山ある。

「同じ事をしても、それの目線の先が誰かの幸せか、お金かで、考え方は全然違うじゃない?
私さぁー、どうしてもお金を目線の先に置けないんだよね。」

と、栞に愚痴ると、

「知ってる。紗織は優しいもん。」

と、栞が言った。
ん? そこに優し

もっとみる
りんご箱を探して  :  「#りんご箱」

りんご箱を探して : 「#りんご箱」

「りんご箱。
昔はりんご箱を机にしてたのよ。」

そう母さんが言う。

母さんは昭和初期のものが好き。
引き出しにくい桐の箪笥とか、
木の木目が浮き出た椅子やテーブル。
今回は、木箱のりんご箱が欲しいと言う。

「でもね、昔はりんご箱が簡単に手に入ったかもしれないけど、今はかえって割高でしょ。」

「そうねぇ。
りんご箱が売られてるのなんか見た事ないわ。」

「じゃあ無理じゃない。」

「だけどさ

もっとみる
生き方の正解  :  「#走らない」

生き方の正解 : 「#走らない」

走らない。
…よね〜。

「急いで。」
と、私が言うと余計にゆったりと景色を眺めだした。

「日光は何回も来たことある。」
と言って、連れてこられた感が強くて興味なさそうだから、山葡萄の蔓籠バックを作っている人がいるから、そちらに行こうと言うと、興味を示したものの、だからと言って、動きは緩慢だ。

時間が遅くなると、見学出来なくなると言っても、のんびりと参道を歩く。
そんな母を、母の友達の知子さん

もっとみる