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( 引用 ) 住野よる『麦本三歩の好きなもの』#02
不器用ながらも化粧を終えて、テレビに目をやるとまだいつもの家を出る時間まで七分もあった。余裕だ。ひとまず朝一番で怒られる可能性を一つ排除できたことに嬉しくなる。
椅子に座って残りの紅茶を飲みながら三歩は特に何もせずぼうっとテレビを眺めた。やることが見つからないわけじゃない、このなんでもない時間が三歩は好きなのだ。朝きちんと準備が出来て問題なく仕事に行ける状態になってから出来た余りの時間、ちゃんとしている自分へのご褒美みたいなこの時間の甘さは、働き始めてから初めて知ったものの一つだ。