「思いついたまま」で終わらないために
12月6日に発売を迎える『26文字のラブレター』(遊泳舎 編/いとうあつき 絵)。書店営業に行くと、「都々逸? 珍しいですね」と言われることがよくあります。そこで、noteでは全5回にわたる連載企画「『26文字のラブレター』制作記録」と題して、どのように本書が誕生したのか、その経緯や想いなどを綴っていきたいと思います。
・第1回「出会いは学生時代。10年越しに生まれた企画」
・第2回「「思いついたまま」で終わらないために」
・第3回「遠回りしたからこそ訪れた出会い」
・第4回「どうすれば手にとってもらうきっかけを作れるか」
・第5回「関わる人が増えるほど、本は成長してゆく」
企画の種に花を咲かせるには
編集者の仕事における楽しい瞬間の一つが、企画を考えるときです。「こんな本があったいいな」「こんなテーマを世間に送り出したいな」など、ある意味好き勝手に想像を膨らませることができるからです。
ひとりで電車に乗っているとき、お風呂に入っているとき、あるいは誰かと食事をしているとき、ふいに企画の種がぽこん、と生まれることがあります。ただし、その種の多くは、花を咲かせることなく終わってしまいます。本当に大変なのは、その種に水や栄養を与え、いかにして芽を出し、花を咲かせるところまで持っていくか、だからです。
本書も、企画の種は生まれたけれど、どのようにして本の形にするのか、そこに頭を悩まされました。
まず考えたのは「どんな都々逸を載せるのか」です。都々逸には、社会風刺を唄ったものから、洒落のきいた言葉遊びまで幅広い作品があります。しかし、限られたページ数の中で、すべてを紹介することはできません。「広く浅く」になってしまうと、結局、都々逸を知っている人にしか手にとってもらえない可能性が高いと思ったからです。
本のテーマは「恋愛」に決定
そこで、「都々逸」という要素に加え、もう一つ大きなテーマを立てることにしました。それが「恋愛」です。もともと、都々逸には色恋を唄ったものが数多くあります。そこで、恋愛にまつわる都々逸だけを集めて紹介すれば、都々逸のことを知らない若い世代にも興味を持ってもらえるのではないか、と思ったのです。
現代で都々逸づくりを行なっている作家の方々に作品を寄せていただく、という案もあったのですが、今回は基本的に江戸から明治にかけて流行した、古い都々逸に限ることにしました。古典にはやはり、歳月によって古びなかった力強さがありますし、100年以上前につくられた唄が、当時どのような気持ちでつくられたのか、今と比べてどんな違いがあるのか、あるいはこんなところは今も昔も変わらない、などと想像しながら味わって欲しかったからです。
そして、ひたすら文献探しの日々が始まります。
(第3回へつづく)
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