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夕月
2022年12月28日 03:14
よく晴れた日の午後。ヨモギは街のパトロールを命じられ、異常がないかを確かめていた。ヴァサラ軍は戦いだけでなく、日常を守るパトロール業務や民衆の困りごとも解決する、そういう組織だ。 今日は特にトラブルや事件もなく、ヨモギはホッと胸を撫で下ろした。その瞬間、ヨモギの腹の虫がグゥと一鳴きした。昼ご飯は、パトロールに出る前にきちんとお腹いっぱいに食べてきたが、元々燃費の悪いヨモギはおやつの時間にもなる
2022年12月24日 17:26
ヨモギがヴァサラ軍に入り、数ヶ月。夏が過ぎ、秋の気配が訪れていた。カラッとした晴れた青空が広がり、時折そよ風が頬を撫ぜる心地よい天候の中、ヨモギは三番隊隊舎の庭の一角で、畑を耕していた。 この畑は、ヨモギ自らが希望して用意してもらった畑で、隊長のヒジリはもちろん、ヴァサラ総督にも許可を貰い、庭の一角を畑として利用することが叶ったのだ。 “許可”とはいうものの、実際は「軍の兵糧にもなるし、美味
2022年12月13日 09:54
ヨモギは、暗闇の中にいた。「ここは……どこだべ……?」問いかけるその声は、静寂な闇の中へ溶けて消えていく。自分がどこに居るのか、周りに何があるのか……。そもそも自分は地に足がついているのか、それさえ分からない。「ヨモギ……」その時、聞き慣れた声が響く。優しい母の声だ。「ヨモギ!」「姉ちゃん……!」続けるように父、ズンダとキナコが姿を現し声をかける。「父ちゃん、ズンダにキナコ! あたし