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夕月
2024年11月6日 19:00
※こちらはスレッジ稚内さん投稿の短編ボイスドラマ「副隊長たちの休日」のその後を描いています。リレー形式のお話になっています!←前の話はこちら!花調酔之奏〜花酔譚(by 高橋朋さん) ハナヨイとメイネが突然の腹痛に倒れ、成り行きで繭と買い物に来ることになった。女と二人で買い物とかいつ以来だ……いや、したことあったか……? 過去に、予定を立てたこともあったかもしれないが。「ま、急に行く
2024年10月15日 12:13
アマネが生まれて、約5年が経ったある日。「本日を以て、九番隊隊員ウキグモを九番隊副隊長に任命することとする」 軍本部の大広間に覇王ヴァサラの声が響く。腹の底にまで届く低い声は、改めて背筋を伸ばすのに充分な威厳を含んでいた。「謹んでお受けします」「フフ、おめでとうウキグモ君。これからも頑張ってねぇ」不敵な笑みを浮かべながら、九番隊隊長ロポポが祝福する。「まあ、堅苦しいのは抜きにして
2024年9月19日 00:51
むかしむかし、あるところに貧しい家がありました。そこには村一番の甘党で有名なワグリという男と、村一番の料理人のメスティンが住んでおりました。 ある日、ワグリが竹を取りに山を登ったときのことです。グゥゥゥゥゥゥゥゥ…….。「えっ、なになに!?」まるで地響きのような、はたまた獣の唸り声の様な大きな音が響きました。クマなどに襲われしないかとひやひやしながらも、竹やぶを探索していると一本の竹だけ
2024年8月31日 21:16
<此山、夜間通るべからず。掟を守らざる者、立ち所に鎌鼬に喰われるであろう> 侍の国のとある山の入り口に、いつからかそんな御触書が出されていた。夜にこの山を通る者は皆、鎌鼬に喰われて一人として帰ってきた者はいないという。「人を妖怪呼ばわりしやがって」御触書を鼻で笑いながら、葉巻を吹かすこの男こそが『鎌鼬』だ。本人にとって名前などはどうでもよかった。「ま、そんなことより修行だな。さァて、
2024年8月8日 23:16
「おはようございます、ウキグモさん〜。今日もいい天気ですね」「何がおはようだ、こんなに高く太陽が上ってるってのに」カトレアは自警団団長のウキグモに挨拶をするが、早速呆れられてしまう。時計を見るともうすぐお昼になろうかという時間である。 カトレアは非常にマイペースだ。出勤時間や集合時間を過ぎたり、ギリギリだったりは日常茶飯事だ。時間感覚が曖昧なところがあるようだが、本人はあまり気に留めていな
2024年7月8日 23:07
エタンセル王国は「七夕祭り」の真っ最中だった。発起人は、他でもないこの王国の王女プラチナ姫である。自らのポケットマネーから費用を捻出し、盛大な祭りを催していた。 国の大通りには様々な屋台がひしめき合い、吹き流しや網飾りが丁寧に飾り付けられ、時折ひらひらとそよ風に舞っている。中央の広場には、短冊を書くスペースとそれを飾る笹が設置されて、賑わいを見せていた。 七夕という文化には馴染みがなく、最
2024年6月16日 01:26
ヨモギはいつものように鍬を持ち、畑を耕していた。もうすぐ季節は夏になろうとしており、気温も日毎に上がってきている。そろそろオクラの植えどきだ。トマトの様子も見ておかないと……。 そう思っていた矢先に、敵襲を知らせるサイレンが鳴り響いた。「敵襲です! 北方よりカムイ軍と思しき勢力がこちらに急接近してきている模様!!」どこからともなく颯爽と現れた軍の伝令係が敵の方角を告げる。自分の生まれ育
2024年1月24日 23:06
※ウキグモ、副隊長就任より前の時空の話です。 「ジャンニ、この後暇か?」陽が傾き始め、日勤帯の人達は終業準備を、これから夜勤警護に当たる人たちが準備をし始める頃だった。「ええ、まあ。カウンセリングの予定は全てこなしましたので」藪から棒に予定を尋ねるウキグモに、やや戸惑いつつも返答する。「なら、ちょうど良かった。今から飲みにでも行かねえかなと思って」飲みに行くことへの誘いについては別段
2023年11月23日 00:53
「あの日、死ぬべきだったのはボクの方だったんだ。ボクが死ねば良かったんだ!!」 最愛の兄を最悪の形で失い、絶望に沈んでいた。兄の反対を押し切ってまでヴァサラ軍に入り、ママンであるマルルからは隊長の座を引き継いだ。だが、極みの力は制御が効かず、挙句の果てにはライチョウの攻撃から庇われる形で兄を喪った。 こんなことの為に軍に入ったんじゃない――。兄一人守れなければ、仲間や民など到底守れ
2023年11月15日 02:55
「母さん!」少年ピルスは、ドアもノックせずに母親がいる執務室に押し入った。彼の眼差しは輝いており、その眼差しは母親の顔に向けられる。「いけないわ、ピルス。ドアはちゃんとノックしませんと」「そ、そうだった、ごめんなさい。そんなことより、ほら見てよ」母親の忠言は素直に聞き入れつつも、ピルスは持っていた紙切れを見せる。100点と花丸が大きく書かれたテストの答案用紙だった。「今日のテスト、完璧
2023年9月30日 12:51
「……よお、今年もこの日が来たな」目の前に友人がいる体で話しかける。当然、反応等あるはずがなく、声が空気を震わせて、響き、やがて溶けて消えていくだけだ。 街が激しい炎に包まれ、この街で生きていた人々や生活が一瞬にして奪われた。そして、己の親友の命も自分の手の中からすり抜けて消えてしまった。ただ、何もかもが無くなったわけではない。ソラトとコハルの産んだ子供……アマネとカスミはソラトが死ぬ直前
2023年6月30日 00:17
※挿絵は高橋朋さんより頂きました!! ウキグモがヴァサラ軍に入り、数年。元々の剣の才や極みが発現したこともあり、副隊長入りも秒読み段階に来たある日のこと。今日はスラム街での暴徒を沈静化する任務に赴いていた。 「ったく、キリがねぇな……」自分たちの暮らしが逼迫し、精神的に余裕が無い彼らの攻撃は想像以上の力を発揮している。まともな仕事にも就けずお金もない。食糧もなく、満たされた状態ではない。
2023年6月30日 00:18
アマネとカスミは、自分達の生みの親であるソラトとコハルが眠る墓の前で手を合わせていた。街の花屋で限られたお小遣いで買ってきた綺麗な花束が手向けられていた。 今日は父の日。もうこの世には血の繋がった両親は居ないが、毎年巡ってくる命日以外にも父の日や母の日にこうして花を手向け、手を合わせている。 親孝行する前に母は病に倒れ、父は戦火に巻き込まれ、命を落とした。こうして、祈りを捧げることが生み
2023年12月25日 00:15
「くりすます? って何だべか?」定期的に開催しているお料理教室がひと段落し、おやつの団子をメンバーで食べている時だった。 「先生? クリスマスがどうかしたの?」あまりに唐突な質問だったから、イネスもやや戸惑い気味に首を傾げている。「最近、軍の中でチラチラそういう言葉を聞くようになったからだべ。新しい食べ物か何かだべか?」クスリと笑いながら、イバンが説明を始める。「師範。クリスマスと