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とても綺麗なわたぐもをみると何故か5月のあの日を思い出します

今でも思い出す5月のあの日は、僕が初めてバースデーケーキをお客様に提供した日です

今から20年前、僕は新宿にある服部調理師学校に調理師になる為に通っていた。

当時の僕はフランス料理人を夢見る18歳だった

そんな僕がパティシエを目指すきっかけとなったのはとある製菓の先生の言葉

「料理とお菓子には大きな違いが一つあります。それは有から有を作るのが料理、無から有を作るのがお菓子です」と

要するに粉や牛乳のような形の無いものから形のある物を作り上げるということ

この言葉に惹かれ製菓の道を志すことに決める。

けれど、ただ一つ大きな問題があった。僕は製菓の成績が悪いのである

ただ悪いのではない。筆記はともかく実技に関しては毎回赤点で補習合格という有様

流石にこれはまずいと思った僕は毎朝5時に起きて絞りやナッペ(ケーキにクリームを塗る作業の名称)を学校に行って練習した

卒業まで毎日続け、仕事が始まっても毎日夜遅くまで残って練習していた

そんな入社から1ヶ月程たったある晴れた日、比較的落ち着いていたその日は仕事が早く終わりみんな閉店前に帰れる事になった

けれどその日はバースデーケーキだけが売り切れてしまっていた。

もう閉店間近だったのだが、それを求めてお客さまがお見えになったことで急遽残ったメンバーで追加をする事になった

いつも僕が残って練習している事を知っていた厳しい先輩が僕に声をかけてきた。

どぅー、お前やってみるか?

即答でハイと答える

遊びじゃ無いぞ、しっかりやれ。

もう手は震えていたと思う。それでも必死に仕上げ、お客様の元へ届けた時の喜びは今も忘れる事はできない

その帰り道、僕はこの仕事を一生続けるんだと強い決意をした事を覚えている

その時の僕の心は確かに晴天だった

まるで綺麗なわたぐもの浮かぶ真っ青なあの空のように

そして僕は初心に帰り今日も仕事へと向かう

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