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思考の整理学【読書記】

外山滋比古氏の著書。

ハウツー本というよりはエッセイで、著者の考える、思考、記憶、学習の方法について実体験を元に考察されている。

初版は1986年と、30年以上前に書かれた本だが、内容は今でも参考になるものが多い。中でも思考を深化させる方法(著者の言葉で言うところの「醗酵」や「情報の"メタ"化」)について述べられている章などは、読んですぐ試してみよう と思える内容である。

興味深い点として、この本の中では思考法を大きく二分して、「拡散的思考」と「収斂的思考」と位置づけている。

拡散的思考とは、事実を拡散し思考を創造すること、収斂的思考とは求める解に対し事実を整理すること、とまとめられており、現代教育は収斂的思考に重きを置きすぎるあまり、拡散的思考法を教えられていない と著者は本の中で述べている。


これまでの自分を振り返っても、授業やテスト勉強などで脳に覚えさせた記憶を引っ張り出し、テストで先生に求められる解を出す、ということを今までやってきたと思う。

ただこれはあくまで、A = Bを答える収斂的思考に過ぎず、ただA = Bであることの記憶とその再生を繰り返していた。ただ現代において、記憶と再生は機械が行うことのほうが多い。『パンセ』の著者がパスカルであることを記憶、再生できなくても、機械はそれを答えてくれる。そんなことは日常の一部になっている。

機械が収斂的思考に長けているため、人間が収斂的思考を行うことが全く無駄である、ということではないが、これからは拡散的思考により重きを置くべきではないか、という危機感を、自分は本著に感じさせてもらった。

A = Bを記憶の中から再生するだけでなく、別々の事象であるAとBを拡散する(A × Bを行う)ことで、新しいCを生み出すことを考えていく必要があり、如何にして新しい式(A × B = C)を生み出せるかが問われる世の中になると思う。

拡散思考法こそが、これから先の人間に求められるものなのではないだろうか。


おわり。

この本が気になった方は、是非一読してみてください📖


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