[映画]正体

今をときめく藤井監督と横浜流星さん主演の映画。だいぶ前から企画していたとのことですが、奇しくも袴田さんの冤罪無罪確定の年に公開になりました。すごい偶然。
推しの森本くんの出演が嬉しく、人が亡くなる映画苦手なのに3回観ました。もちろん辞書のように分厚い原作も読みました。推しが出ていてもつまらなかったら一度しか観ないので、相当に面白かったのだと思います。重い主題を素敵なヒューマンドラマに仕立て上げています。

1回目は痛そうな場面にびくびくしながら、場面展開の緊迫感に怯えながら、結末を祈るように観覧。慎太郎くんの「オマエそんな顔してたのかよ」が優しくてとても良かったです(大贔屓)。そして、失礼ですがまったく贔屓ではない主演横浜流星さんだったので、逆に素直に役に没入して感動に浸ることができました。

2回目は俳優さんたちを眺めに。主人公横浜流星さんはもちろんのこと、要の吉岡里帆さん、山田孝之さん、山田杏奈さん、森本慎太郎さんは、ある意味ファンタジーな役柄。そこにどっしりと現実感を与える脇が映画の奥行きを与えていました。皆さん素晴らしかったけど、前田公輝さん演じる刑事の平凡さ、西田尚美さんの憔悴、原日出子さんの錯乱と怯え、宇野祥平さんの淡白な正義、人々の現実感を演じていました。

そして3回目は見どころ探し。この映画、初見は主演の横浜さんの変幻、吉岡さんの美しさ、山田孝之さんの迫力に見入ってしまうのですが、細部もすごい見どころありでした。大阪の日雇いでのお買物場面の温かさと110番通報場面の恐怖感との温度差は息を呑みます、これはきっとカメラワークの勝利。出版社では、何も気付かない(ふりをしている可能性もある)宇野さん記者の背中越しに事件の記事起こしをする鏑木の画、静かな演技合戦。山田杏奈さん演じる女子の成長っぷりも素敵でしたが、慎太郎くん演じるジャンプが、元々根が陽で優しいだけどセルフネグレクト状態の輩から、飯場は抜け出せなくても前向きな青年にという描写も心に残りました。田中哲司さん演じる弁護士さんが、いつもやっているであろう誠実な所作でジャンプを迎え入れる、そのやりとりを眺めて、こういうふとしたところで相手を丁重に扱うこと、扱われることが、人を変えるのだろうなと気付かされました。

圧巻は児童養護施設での木野花さんと山田孝之さんとが対峙する場面。これと松重さんと山田さんとの場面が対なのですよね。素晴らしい作り、2時間たっぷり堪能できます。エンタメ性に寄っているのも含めて、2024年誰にでもオススメできる作品です。

★★★★★
監督 藤井道人
出演 横浜流星、吉岡里帆、森本慎太郎、山田杏奈、山田孝之など
2024年 日本


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