[読書]昨夜のカレー、明日のパン

本屋大賞2位の作品。ドラマ「すいか」の脚本家によるもの、ということは、面白くないはずがない、と、手に取りました。

最初は、ずるいって思ったのです。
なぜって、主人公とおぼしきテツコさんの夫は、二十代という若さで病死しているのですから。
それに、穏やかな義父と古い民家での丁寧な暮らし。
涙腺を刺激する材料が揃いすぎていると、。

でも、泣かせる小説ではなくて気に入りました。

少し笑える、そして、すとん、すとん、と、
一つ一つが心に落ちてくるエピソードが詰まっています。
現実の世の中は、良い人ばかりではないし、
悲惨な事件や災害もあるし、
私は小説の中では、こわい思いはしたくない。
なので、この小説は手元においてあります。

ちょっとめげたとき、
どうしたものか途方にくれたとき、
きっと「岩井さんのスペシャルカード」があるなら、
前に進めるでしょう。
八木重吉を暗唱する大人びた少女が「うつくしいもの」
がきっとあると信じたように。。
そういう些細なことが大切に描かれています。

今回は再読でした。
良い本は読むたびに違うところが響きますね。

今年は、個人的に色々ありました。
会社員としても先が見え、
昇進も出来ずたいした成果もなし、
教育ママとしても必死でしたが、ごく普通の進路。
無事に大きくなったけど、それは運が良いだけ。

自分の人生ってなんだったのかなあ。。
コロナ禍もあり、
友人と一緒に過ごす時間もなくなり、
在宅勤務で時間もできてしまい、
なんだか空しくなっていました。

本書で、夕子さんが病気になって、
「でも、自分は何のために、この世に生まれて来たのだろうと、それを考えると気持ちがざわざわする。死ぬのかイヤになる」と思うくだりを読み、心が少し動きました。
ああ、そうなのかもな。と思いました。

まだじたばたするけれど、きっとそれは私一人ではない。
表題になっている「昨夜のカレー明日のパン」の、
一樹くんのように、一期一会を大事にすれば、
きっとその先には何かある。

明日も頑張ろうって素直に思うことができました。
ありがとう。

☆☆☆

著者 木皿泉
刊行 河出書房新社
刊行年 2016年文庫
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309021768/

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集