[映画]ナミビアの砂漠

そもそもナミビア砂漠(ナミブ砂漠)を知らなかったのですが、世界最古の砂漠で世界遺産。数多の映画撮影にも利用されている有名景観地なのですね。素晴らしい場所です。

そしてネタバレになってしまうかもなのですが、LIVE Cameraも実在していました。めちゃくちゃ楽しい。ドキュメンタリー好きですから。しかしこれ見てたら社会生活できなくなりそうです。

さて、映画の舞台は東京です。めちゃくちゃスタイルが良い美しく若い女性、カナが主人公。最近の東京なんて強くて美しければ暮らしやすいだろうに、初っ端から、彼女が何かに鬱々としていて、周りが雑音に聴こえていてという感じの描写。毎日お仕事はしているものの投げやりな生活をしているのが感じられ怖くなります。河合優実さんは彗星のように現れたスターですね、すごい存在感。ドラマも楽しく観ましたがスクリーンで映えること。それでも、この役は楽しく生きている感がまったくない。

結構問題のある性格をしていると思うのですが、美人で独特の雰囲気があるからか、めちゃくちゃ献身的な恋人ホンダと同棲しています。ホンダは見かけ上、水商売とかヒモかと思いきや、実際はサラリーマン。生活感溢れる小さなお部屋を整え、ハンバーグを作り、酔ったカナの面倒を見る。働き者のお母さんみたいな彼氏。後から貫一郎と気づきました。貫一郎はお父さんがイイ男すぎて、デビュー当初は頼りなく見えましたが、なかなかに骨太に育ったようで。情けない男を演じられる格好良い俳優さんになってきました。先が楽しみ。

カナが自由気ままに選んだ次の相手はハヤシ。こちらもチャラいのでろくな生活していないのかと思ったら、意外とエリート。海外駐在経験のある、つまり大きな会社でたくさん給料もらっているご両親に、親戚知り合い呼んで開催する本格的なバーベキュー、官僚エリートの友達。ハヤシは会社を辞めて独立したクリエイターです。若い女の子はそのエネルギーに夢中になりそうですが、見るからに真面目さとそれに起因する不安が漂っています。ハヤシを演じるのは金子大地さん、顔は可愛いのになかなかえげつない役です。どこかで見たなと思ったら、おっさんずラブのマロ役。あれも可愛いのにある意味ふてぶてしい役でしたね。不思議な俳優さんだな。

若い監督が撮ったというのに、映画で描かれる現実が辛いです。エステでの脱毛に効果も意味もないのに通ってしまう中高年女性、退屈に感じながらも給料のためにせっせと脱毛するエステティシャン、海外駐在するハイスペック夫がいるだけでポジショントーク始めそうなおばさま。全部私ではないけれど私のような痛々しさ。こんな大人に囲まれてカナは夢をみられるのだろうか。

終盤に差しかかるにつれ、畳みかけるようにカナの感情が動き、その不安定さが可視化されていきます。そこに現れる唐田えりか演じるお姉さんとの「キャンプだほい」(byマイク眞木)。大変に楽しくて同じだけこわい。唐田えりかさんが絶妙な配役で良かったです。
ハヤシとカナの関係が進む様は見ているだけで動悸が上がりますが、最後はなんだか希望が見えたような気がします。人生は一度きり、悔いなくやりたいことをできれば幸せですが、壮大な暇つぶしともいえるもの。カナも他の登場人物もかけがえない人生を楽しんで欲しいなと祈る気持ちで映画館を後にしました。

★★★★☆

監督 山中瑶子
出演 河合優実、金子大地、寛一郎など
2024年日本


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