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【書評】『親子で知的好奇心を伸ばす-ネオ子育て』

新しい時代の子育ての指針を示す

本書は、9歳と0歳の息子を育てる二児の母であり、アーティストとしても活動する著者・草野絵美氏による子育て論です。従来型の教育ママとは一線を画し、自身を「ネオ教育ママ」と称する著者が、約10年の子育て経験から得た知見を惜しみなく共有しています。

特筆すべきは、本書が単なる育児のノウハウ本ではないという点です。著者は子育てを通じて、親自身も成長し続けることの重要性を説きます。また、デジタル技術やインターネットを積極的に活用し、子どもの知的好奸心を育む方法を具体的に提示しています。

子どもを一人の人間として尊重する

著者は、子育ての根本として「親が子を独立した別の人間として尊重する」ことを挙げています。子どもは親の所有物ではなく、親とは異なる価値観や夢を持つ存在です。そのため、親の価値観を押し付けるのではなく、子どもの意思を尊重しながら導いていく姿勢が重要だと説きます。

具体的には、子どもに選択肢を与え、自己決定の機会を設けることを推奨しています。例えば、着る服や週末の活動内容を子どもに選ばせる、勉強方法について交渉の余地を残すなど、日常的な場面での実践方法が示されています。

知的好奇心を育むための環境づくり

本書の特徴的な点は、子どもの知的好奇心を育むための具体的な方法が豊富に提示されていることです。著者は、STEAMという教育理念(科学、技術、工学、芸術、数学を横断的に学ぶ)を取り入れながら、家庭でできる知育活動を紹介しています。

例えば、マインクラフトというゲームを通じて空間認識能力を養ったり、「はたらく細胞」というマンガを読んで免疫システムについて学んだりするなど、子どもの興味に沿った学習方法が提案されています。

デジタル技術との付き合い方

現代の子育てにおいて避けて通れないのが、デジタル技術との関わり方です。著者は、YouTube やゲーム、SNSなどのデジタルコンテンツを全面的に禁止するのではなく、適切にコントロールしながら活用することを提案しています。

具体的には、iPadの使用時間を制限する、フィルタリングを設定する、親が一緒に視聴するなど、現実的な対応策が示されています。また、デジタルコンテンツを通じた学習方法についても詳しく解説されています。

お金との関わり方

著者の長男がNFTアートで成功を収めた経験を基に、子どもとお金の関係についても深い考察がなされています。単にお小遣いを与えるのではなく、お金の価値や使い方を理解させることの重要性が説かれています。

また、教育にかかる費用についても現実的な視点から言及されており、高額な教育サービスに頼るのではなく、公共のサービスや無料のコンテンツを活用する方法が紹介されています。

親自身の成長の重要性

本書の重要なメッセージの一つは、親自身が学び続け、成長し続けることの大切さです。著者は、子育てを通じて自身のスキルや価値観が更新されていく過程を率直に語っています。

特に、子育てで得たスキルが仕事にも活かせることや、逆に仕事で培った経験が子育てに活かせることなど、相乗効果についても言及されています。

多様性を認める視点

本書では、ジェンダーや人種など、現代社会における重要なテーマについても触れられています。子どもに偏見のない視点を持たせるために、親自身が固定観念を見直し、多様な価値観を受け入れる姿勢を持つことの重要性が説かれています。

まとめ

本書は、現代の子育てが直面する様々な課題に対して、具体的かつ実践的な解決策を提示しています。特に、デジタル技術やインターネットを効果的に活用する方法、子どもの自主性を重んじながら導く方法など、現代の親が直面する課題に対する示唆に富んでいます。

また、著者自身の経験に基づく具体的なエピソードが随所に織り込まれており、理論と実践のバランスが取れた内容となっています。さらに、親が自身の生き方を諦める必要はないという主張は、子育てに悩む多くの親にとって励みとなるでしょう。

子育ては正解のない営みですが、本書は現代の親子関係における新しい可能性を示唆しています。デジタルネイティブ世代の親による等身大の子育て論として、多くの読者の共感を得られる一冊となっています。

ただし、本書で提案されている方法は、あくまでも著者の経験に基づくものであり、すべての家庭に当てはまるわけではないかもしれません。各家庭の状況に応じて、本書の内容を参考にしながら、自分たちに合った子育ての形を見つけていくことが望ましいでしょう。


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