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【書評】『子どものスマホで「困った!」を防ぐ-スマホの与え方•使い方の教科書』
デジタルネイティブ世代の子育てバイブル
スマートフォンが生活に欠かせないものとなった現代において、子どもへのスマホの与え方や使い方に悩む親は少なくありません。本書は、学習塾経営と子育てアドバイザーという二つの顔を持つ野本一真氏が、豊富な経験とデータに基づき、具体的な指針を示してくれる一冊です。
「与えない」という選択肢はもはやない
著者は冒頭で、現代の子育てにおいてスマホを与えないという選択肢はもはやないと明言します。実際、高校生のスマホ保有率はほぼ100%、中学生も80%を超え、小学生高学年でも60%以上がスマホを所有しているのが現状です。学校教育でもGIGAスクール構想により1人1台端末が整備され、デジタルデバイスの活用は必須となっています。
しかし同時に、スマホは包丁のような「両刃の剣」であることも指摘します。正しい使い方をすれば便利な道具になりますが、使い方を誤れば危険な凶器にもなり得ます。親が「知らない」まま安易に与えてしまうことの危うさを説きます。
インターネットの特性を知る
本書では、子どもに潜む危険を理解するために、まずインターネットの特性について詳しく解説しています。特に注目すべきは、フィルターバブルとエコーチェンバー現象です。
フィルターバブルとは、検索履歴などに基づいて自分の好みに合った情報ばかりが表示される現象を指します。エコーチェンバーは、SNSなどで同じ考えの人々と交流することで、特定の意見や価値観が増幅される現象です。これらにより、子どもたちは知らず知らずのうちに偏った情報環境の中で過ごすことになります。
オンラインゲーム・SNS・推し活の実態
本書は、子どものスマホ利用で特に注意が必要な三つの分野について詳しく解説しています。
一つ目はオンラインゲームです。現代のゲームは、マーケティングや心理学の知見を活用して中毒性が高くなるよう設計されています。特に課金システムの巧妙さは要注意です。
二つ目はSNSです。承認欲求を満たす場として魅力的である一方で、いじめや個人情報流出などのリスクが潜んでいます。
三つ目は推し活と呼ばれるアイドル応援活動です。ライブ配信での投げ銭など、金銭トラブルに発展するケースが増えています。
睡眠への影響を軽視してはいけない
本書で特に重要視されているのが、スマホ利用が子どもの睡眠に与える影響です。子どもの成長には質の良い睡眠が不可欠ですが、夜遅くまでのスマホ利用は睡眠の質を著しく低下させます。また睡眠不足は学習効率の低下だけでなく、情緒不安定やメンタルヘルスの悪化にもつながります。
効果的なルールづくりのポイント
本書の核心部分は、具体的なスマホルールの作り方です。著者は以下のようなポイントを挙げています。
まず、親が一方的にルールを決めるのではなく、子どもと話し合って決めることが重要です。子どもの意見を聞き、納得できる形でルールを設定することで、守る意識が高まります。
また、ルールは視覚化して家族が目に入る場所に貼っておくことを推奨しています。人は忘れる生き物なので、日常的に目に入ることで意識付けができます。
PDCAサイクルを活用した学習への応用
本書は単なる規制の方法論に留まらず、スマホを学習に活用する方法も提案しています。特にPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)を意識した学習方法は、子どもの自立的な学習習慣の形成に役立ちます。
最終目標は子どもの自立
著者は、スマホルールの本質は子どもの自立を促すことにあると説きます。親の過度な干渉や規制は、かえって子どもの成長を阻害する可能性があります。
重要なのは、子どもが自己効力感(自分はできるという感覚)と自己肯定感(自分を受け入れる感覚)を育むこと。そのために親は「応援団長」として見守る姿勢が大切だと説きます。
まとめ:現代の子育ての指針として
本書の特徴は、単なるスマホ対策マニュアルではなく、現代の子育て全般についての示唆に富んでいる点です。技術の進化は止まることなく、新たな課題が次々と生まれる中で、本質的な親子関係の築き方を考えるヒントが詰まっています。
特に印象的なのは、著者が繰り返し強調する「できない理由を考えるのではなく、できる方法を考える」という姿勢です。子どもと共に成長していく「共育」の視点は、デジタル社会における新しい子育ての形を示唆しています。
具体的な事例や実践的なアドバイスが豊富で、読みやすい文体で書かれているため、子育てに悩む親の良き指針となることでしょう。デジタルネイティブ世代の子育てに関わるすべての人におすすめしたい一冊です。