リターンズ6話 ネタバレ考察~総括
総論
春田(田中圭)と牧(林遣都)の結婚式が描かれたこの6話は、リターンズだけでなく、おっさんずラブのシリーズ全体でも重要だったはずだ。
ところが菊様(三浦翔平)が春田に秋斗(田中圭/二役)のフリをさせたり、二人の周りにいる恋敵のバレンタインデーの応酬など、不要な要素が多すぎたのではないか。
2018連ドラ(以下、S1)は1話あたり40分の全7話だったからシンプルな恋愛の展開が中心で、2019劇場版はあらゆるエンタメの要素をたくさん突っ込んだコメディ要素が強かった。
いずれも制作サイドのやってみたい内容が詰まったものだったのだろう。
このリターンズを見ていて、制作サイドがやりたいのは劇場版に近いのではないかと思っていた。
ただそうであってもリターンズでは、春田と牧が"家族"に変わっていくホームドラマの形を謳っているのだから、その区切りである結婚式は準備から本番までじっくり表現すべきであったと思う。
5話のようにコメディ要素の多い回もあっていいと思うが、この6話に限ってはシリーズ全体の核にもなりうるから、より丁寧な描写が必要だった。
リターンズは1話あたり50分の全9話だから意外と長い。だからこそ各回ごとに緩急をつける必要があった。
毎回たくさんの要素を詰め込まれ過ぎると、視聴者側も新鮮さを失ってしまい、話の内容があちこちに散らばりすぎて、「…で何が言いたいの?」状態になってしまう。
俳優陣の演技が素晴らしいだけに、設定の残念さが際立つ。
結婚式について
肝心の結婚式は1話冒頭の夢オチと同じであった。同じなのはまだいいのだが、まず神父の存在はまずかった。
6話では神父の顔こそ見えないようにしているが、それらしき装束を来た人間は映っている。キリスト教式は世界的に同性同士の挙式をほぼ認めていない。宗教儀式でもある結婚式に関して、明らかに制作サイドの考証が不足している。
次に装花や装飾についてである。
ぜひリターンズ主題歌「Lovin' Song」のMVと6話の結婚式を比較してほしい。同じ教会で同じ監督が短期間で撮っていて、素晴らしい出来になっている。
式場はオーソドックスな白中心のシンプルな装花だが、この会場の長所でもある大きな窓から見える緑を活かしていたりして、雰囲気に重厚感がしっかり存在している。
一方、6話はベンチフラワーや前方にそびえ立つ2つのフラワーベースの赤いバラの密度が低い。また謎の中世騎士風の鎧や、床にただ置かれているピンクや赤の風船まで1話と同じで存在していて、チープな雰囲気が否めない。ドデカいフラワーベースと鎧が窓をふさぎ、この会場の良さを消している。
「Lovin' Song」のMVで同じ場所で同じ監督が重厚感を出して撮影出来ているので、雰囲気がチープになってしまったのは監督よりも上の立場の人の責任ではないのか。
結婚パーティーについて
挙式では参加していた蝶子(大塚寧々)がパーティーにはいなかった。
春田と牧の雰囲気も、1話と同時に撮ったはずの挙式と今回のパーティーではまるで違った。ドラマは順番通りに撮っていないのは知っているが、ドラマ全体の半分以上離れてしまうと役者の雰囲気も変わってしまうのも当然だし、役に既に馴染んだ状態と初期の状態では違うのももっともだ。
パーティー会場も出席人数と比較すると広すぎで、やっぱりチープなパーティーに見えてしまった。
同性カップルの"結婚"について
6話でのとある発言について、LGBTQ+当事者は一部反論をしていた。個人的には当事者サイドにも制作サイドにも肩入れできないが、同性同士の法律婚が認められていない現状では、制作サイドがより細心の注意を払うべきであっただろう。
現状では事実婚も結婚の一部であり、同性カップルには婚姻が認められていないのであって、制作サイドが"結婚"という言葉を使うのは間違ってはいない(下のリンク参照)。
ただ当事者も法律婚が認められていないからこそ、このリターンズの"結婚"がどう表現されるかに注目していたのは間違いない。
6話は誤解されないようにより細心の注意が必要であっただろう。
結婚パーティーのときに、パーティーの主役の春田や牧にバレンタインのチョコレートをあげようとする、好意を持った男性たちの場面も危うかった。もしこれが男女のカップルの結婚で、例えば出席者の女性が主役の男性に本命チョコをあげようとしていたらどうだろう。いくら好きでもあり得ないと思われるのではないか。
ちょっとした発言や場面が誤解を招きかねないからこそ、この"結婚"についての6話は、他の要素を排してでもどの話よりも丁寧に描くべきだった。これ以上足もとを掬われないことを願ってやまない。