映画『愛に乱暴』
この映画は、とにかく没入感がすごいです。
ワンカットで主人公の桃子を中心に撮る事で、桃子の内へと自然と集中していきました。
そして、それだけ中心に据えられても、揺るがない江口のりこさんの演技力というか、もう存在感そのものというか、とにかく圧倒されます。
そして、これまたそれに相対する夫の真守役の小泉孝太郎さんも、また新たな境地を見せてくれます。
正直、台本をもらってキャスト表を見た時、「え⁉」と思いました。
まったくイメージになかったので、「どうなるんだろう?」と思っていたら、完璧なまでに真守でした。
真守がそこにいました。
僕は、見どころの一つとして、推したいところです。
僕が演じる上で、もちろんいろいろ考えた事もあるのですが、それを語るには、脚本の一部を明かさなければ話ができない事もあり、ここでは語れません。
(ちなみに、2024年9月号の「月刊シナリオ」で、脚本は公開されていますが念のため)
なので、現場であった僕個人の驚きのエピソードを(誰も興味ないかもしれませんが…)。
台本をいただき、スタッフ表を見ていたら、ちょっと気になるというか、記憶に引っかかる名前がありました。
あれ、どこで見た名前だ…と記憶を探り、「あ!」という人を思い出したけど、確信は持てないまま現場へ。
で、現場でその人に会ったら、「やっぱり!」となり、「10年以上前に、あなたが学生の頃に映画を撮っていた時に参加した者なんですけど」と話し掛けたら、なんとか思い出してもらえた。
学生映画には、ありがたいことに山ほど出演させていただきましたが、そこで出会った学生さんが、みんながみんな映画やドラマ、そもそも映像の道に行く訳でもなく、行ったとしても、途中でまた別の道を歩んでいく事もあり、実は、なかなかこうして現場で会える事は少ないです。
そんな中、映画の現場で、10年以上前に一緒に映画を作った人と再会できるのは、本当に嬉しかったです。
続けていれば、こんな嬉しいこともある。
そういう機会を与えてくださった森ガキ監督には、また別の意味で感謝しています。
(監督は知らないエピソードなのですが笑)
皆さまは、この映画で何に出会いましたでしょうか?
新しい江口のりこさんでしょうか、新しい小泉孝太郎さんでしょうか、印象的な電車のシーンでしょうか、チェーンソーでしょうか、乱暴なまでに愛を求める姿でしょうか、愛が人を乱暴にさせる姿でしょうか。
僕は、語れるほど体験できてはいないのかもしれませんが、去年の夏真っ盛りな中、スタッフ、キャストが一丸となって、一つの映画に取り組みました。
僕も、その熱の中に居ました。
そうして完成した映画が、世界の映画祭で上映され、そして、皆さまの元へ届き、何か感じていただけるものがあったら、これほど嬉しい事はありません。
そして、その「映画」を1番感じられるのが、映画館のスクリーンです。
是非、映画館でご覧いただけたら幸いです。