あなたの知らない経絡の世界~任脈の巻
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記事開いていただきありがとうございます。ゆーのすけです。
最近の私の連載ではこれまで、十二経絡の流注(経絡の流れ)ひととおりみてきました。
今回は、奇経の1つ、任脈についてまとめていきます。
経穴だけを結んで覚えるだけなら、お腹側の正中を流れるシンプルなものですが、古典における原文の記述を紐解くとよりクリアに流注が見えてきます。
今回の、任脈は、多くの腹部募穴が含まれているので、重要穴ばかりであるし、任は、妊娠の妊であるという話もあり、衝脈と共に妊娠にとってかなり重要な経脈であることは間違いないでしょう。
不妊に対する鍼灸が盛んですが、しっかり任脈について知っておくとよりクリアに治療効果が想像しやすいかと思います。
では、最初にそもそも奇経とはなにかを簡単に説明してから、任脈の流注を見ていこうと思います。
奇経とは
奇経とは、正経(十二経脈)とは異なる特異な性質を持つ経脈です。
奇経八脈として知られる8つの経脈があります。
陰維脈、陽維脈、陰蹻脈、陽蹻脈、衝脈、任脈、督脈、帯脈です。
奇経の主な役割は、正経の気血の調節です。正経の気血が満ち溢れると、奇経がその余剰を受け取ります。
奇経は、放水路のように機能し、正経の「洪水」(気血の過剰)を防ぐ働きをしています。
また、正経十二経脈の気血が不足しているときには蓄えた気血を供給し、双方向の調節機能を持っていると言われます。
正経十二経脈と異なる奇経の特徴
ただし、任脈、督脈は特殊で、自経の経穴や流注をもちます。
滑伯寿の経絡経穴の本「十四経発揮」という書名からも、十二経脈+2経である任脈と督脈を加えるという、別格となっています。
また、奇経は臓腑に属絡しないものの、奇恒の腑との関係深いです。
例えば、督脈は脳・髄と関係し、任脈と衝脈は女子胞と関係します。
なお、奇経は肝腎に属する、奇経は腎に属する、と言われます。
おそらく間接的に臓腑と関係し、身体機能に関与していると考えられます。
特に経絡の流注を踏まえると、奇経と腎経は密接ですし、肝経は陰維脈と肝経深いと言われます。
任脈流注図
任脈の流注
まず、経絡経穴の教科書に書かれている流注をみていきましょう。
胞中 (小骨盤腔)からはじまり、腹部正中を上行し、顎、顔面、目に入って終わることがわかります。
では、原文ではどのような記載になっているでしょう
骨空論篇の記載では、「胞中」とは言わず、「中極の下」から起こると言っていますが、ほぼ同じようなことを言っています。(詳しくは後述)
ちなみに、任脈は、「陰脈の海」と言われます。
任脈と手足の陰経、陰維脈とも交会しながら流注するので、全身の陰経脈を統率しているから、この呼び名で呼ばれます。
ここから、任脈の流注のポイントをまとめます。
ポイント①任脈は、「胞中 (小骨盤腔)」からはじまる
上述の通り、任脈は「中極の下」から起こります。
と『類経』に解説があるように、「中極の下」は「胞中」を指していることがわかります。
一方、教科書でも習う「奇恒の腑」の1つに、「女子胞」があります。
そして、女子胞=胞宮と言われます。
女子胞(=胞宮)とは、子宮を中心とした女性の内生殖器官全体を指します。
子宮のない男性のことも踏まえると、「胞宮」とは、小骨盤腔(この表現は、代田先生の鍼灸治療基礎学より)ということになるでしょう。
というわけでまとめると、任脈のはじまりである「中極の下」「胞中」とは、「女子胞(=胞宮)の中」という意味と思われます。
胞宮の主な働き
胞宮の主な働きは、月経、懐胎や出産を司る事、肝血と腎精を主原料とする精血を蓄える事です。
精血や衝脈・任脈・督脈の失調が起こると、胞宮にも不調が現れることになります。
月経では、月経不順・月経痛・帯下・不正出血・閉経など
懐胎では、悪阻・胎児の不育・逆子など、
出産では、微弱陣痛や流産など
として症状が現れます。
よって、任脈(衝脈と督脈も)は婦人科系の症状を診るときに大事になってきます。
衝・任・督は「一源三岐」
ところで、任脈は「胞宮」からはじまりますが、実は、督脈、衝脈も「胞宮」からはじまります。
衝脈・任脈・督脈、この3本の経脈は、「胞中」すなわち子宮など骨盤内の生殖器からはじまる経脈であり、主に生殖機能を調節する作用があります。
衝・任・督は「一源三岐」だといういい方がされます。
これの意味は、任脈、衝脈、督脈は、一つの源である「胞宮」から三つに分かれる、すなわち、一源三岐だということです。
「一源三岐」は、張景岳『類経』内の記述より、啓玄子(王冰)が言い出したことと言われます。
詳しくは原文見てみましょう。
以下は素問の督脈の流注説明の一部で、下のカッコ内は、素問の記述について『類経』で解説しています。
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