#5. 成瀬あかりに学ぶ「パラレルキャリア」という生き方
2024年本屋大賞受賞『成瀬は天下を取りにいく』
2024年本屋大賞を受賞した『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)
著者:宮島未奈さん
滋賀県大津市を舞台とした青春小説です。
書店では、よく入口付近に特設コーナーが設けられているのを見かけます。
知人からも、この本を読んでおもしろかったとの感想を聞いていました。
キャッチーなタイトルと、西武ライオンズのユニフォームを着た女の子の横顔の表紙イラストに興味はありましたが、私は最近までこの本を手に取ったことがありませんでした。
Audible聞き放題の対象に
契約しているAudibleの対象に入っていることを知り、先日Audibleで聴いてみました。
惹かれまくりました。
物語の世界観、ナレーションの巧みさ、そして主人公 成瀬あかりの魅力・・・
私は小説は紙書籍で読むよりAudibleで聴くことのほうが多いのですが、『成瀬は天下を取りにいく』Audibleバージョンは、間違いなく過去最高に惹かれました。
余談ですが、Audible版のナレーターの女性も「なるせ」さんでした。
こちらは成瀬さんではなく鳴瀬さんですね。
続編『成瀬は信じた道をいく』
おもしろすぎて1日で読了
こちらは続編になります。
『天下を取りにいく』はAudibleで聴きましたが、『信じた道をいく』は書店で購入。
購入した帰りの電車で読み、帰宅して読み、気づけば止まらなくなってました。
結果、購入したその日に読了しました。
唯一無二の主人公 成瀬あかり
成瀬の目標は「200歳まで生きること」
発想と行動がぶっ飛びすぎてて、どこまでも真っすぐ。
「成瀬ワールド」に惹きこまれていきます。
完全無欠でクールな女の子というイメージながら、前作では親友が東京に引っ越しすると聞いて動揺したり、今作ではスマホの使い方を友達(同僚?)に聞いたりと、親しみやすさも描かれます。
そして、成瀬の睡眠習慣は理想的です。
毎日21時に就寝し、翌朝4時59分58秒に起きて、2秒後に鳴る目覚まし時計のアラームを止める。
つまり、毎日同じ時間の睡眠リズムで8時間の睡眠を取り、アラームではなく自然と目覚めています。
どんだけ理想的~・・・
成瀬あかりに学ぶ「パラレルキャリア」
『天下を取りにいく』『信じた道をいく』
2作を通じて様々なことに挑戦する成瀬の姿から学ぶこともたくさんあります。
成瀬が挑戦してきたこと
・けん玉
→かなりの実力。『信じた道をいく』のラストでは、成瀬のけん玉が物語のカギを握る
・漫才
→幼なじみの島崎とコンビ「ゼゼカラ」を結成してM-1グランプリに挑戦
・地域の夏祭りの実行委員
→「ゼゼカラ」で毎年、夏祭りの司会をしている
・かるた
→高校の班活動で。成瀬がかるたの札を取る描写がおもしろい。
かるた活動が縁で出逢った男の子が、『信じた道をいく』では成瀬の父の焦燥のきっかけになる
・受験
→成瀬は秀才
・地域パトロール
→成瀬の地元愛は強い
・地元のスーパーでバイト
→正義感の強さ爆発、成瀬はどこまでも信じた道をいく
・びわ湖大津観光大使
→成瀬、あんた最高に映えてるよ
などなど。
決して義務感でやっているわけではなく、趣味や興味で挑戦していることが分かります。
それでいて自らの使命を自分で決めて全うしようとする成瀬の姿が描かれます。
その姿から、パラレルキャリアという生き方を連想しました。
パラレルキャリアとは
簡単に言うと、複数の職業や活動基盤を持つということ。
本業だけでは得られない経験や知見を増やして、生産性を爆発的に上げていきます。
本業の傍らでの「副業」ではなく、すべての仕事や活動を本業と同じように取り組む「複業」が当てはまります。
収入のアップではなく、スキルアップや自己実現を目的とすることが特徴です。
変化の激しい時代の生き方として、パラレルキャリアという言葉をよく聞くようになりました。
200歳まで生きる成瀬のこれから
「何になるかより、何をやるかのほうが大事だ」
という成瀬。
『信じた道をいく』の物語のラストは、大学1年生の大晦日。恐らく彼女は19歳。
200歳まで生きると豪語する彼女の、これからのパラレルキャリアを思い浮かべては、小説の余韻に浸れます。
著者紹介 宮島未奈さん
1983年静岡県富士市生まれ。滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒。
2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。
2023年同作を含む『成瀬は天下を取りにいく』でデビュー。第11回「静岡書店大賞」小説部門大賞、第39回「坪田譲治文学賞」、第21回「本屋大賞」など14冠を獲得し話題となる。
続編『成瀬は信じた道をいく』とあわせてシリーズ累計50万部を突破。
新潮社より特設サイトもあります。
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