アパレルの険しい道のり
2週間ほど前、アパレル大手のレナウンが倒産し民事再生手続きに入った。その大きな要因は主要販路の百貨店の低迷である。2019年の全国百貨店売上高は、前年比2.2%減の5兆7547億円で6年連続のマイナスとなり、ピークとなる1991年の9兆7130億円からは4割も減っている。
また「UNIQLO」「ZARA」などファストファッションの台頭や、米アマゾン・ドット・コムなど電子商取引(EC)の拡大などで顧客離れが進んだことも大きい。
そして、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけたことが、止めを刺してしまった。
しかしすでに述べたように、レナウンだけでなくアパレル業界そのものが厳しい環境にある。今朝の新聞によると「同じくアパレル大手の三陽商会が株主総会を経て、新しい企業体制を発足した」とあった。
三陽商会は1969年から英ブランド「バーバリー」社製のコート等、海外のコートメーカーとの技術提携により、各メーカーの製品の国内ライセンス生産を行ってきた老舗アパレル企業だ。
しかし2015年にそのライセンス契約が打ち切りになって以降、20年2月期まで4期連続の赤字を出し続けていた。
そして今回の株主総会で、社長ら取締役の刷新を要求する株主提案を否決し、会社提案であった人事異動が行われることになった。
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ただ一刻を争うのは、この環境への対応である。上述から明らかなように、百貨店に頼った経営手法を脱却し、オンラインショップなど他販売経路による対策を急がなければならない。
しかし「UNIQLO」「ZARA」などファストファッションが業績を伸ばしつつあることは、服装にお金をかけない消費者が増えていることを示唆している。ではこの課題にどう向き合わねばならないのだろうか。
一つ考えられることとして、既存客に対してのブランド・ロイヤルティーを(さらに)向上させることが挙げられる。
もちろんすでに取り組んでいると考えられるが、このブランド・ロイヤルティーの質をどこまで高められるかが大切だろう。顧客・非顧客同士がSNS等で接続している環境だからこそ、一人ひとりの顧客に宣材として活躍してもらうべきだ。
ブランド・ロイヤルティーを向上させる方法は、例えばDMや会員限定のイベントといった一般的なカスタマーエクスペリエンス(CX)だけでなく、商品をモニターに使用してもらって意見をもらうなど、いろいろ考えられるはずだ。。。
いや、それが難しいからこんな状況なのかもしれない。
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今朝の新聞には、今後の情勢について「新社長の手腕にかかっている」と書かれていた。しかしそれを委ねられているのは「そこで働いているすべての人」ではないかと、店舗で働く販売員を想像して言いたくなった。