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『クーデター 80年代新日本プロレス秘史』を読みました。

クーデター 80年代新日本プロレス秘史


著者:大塚直樹


内容紹介
日本のプロレス・格闘技史における大きな分水嶺となった80年代新日本プロレスの分裂・移籍劇。
初代タイガーマスクの引退、猪木の社長辞任、そして長州らの離脱とジャパンプロレスの設立、
それらのすべてを知る立場にあった大塚直樹・元新日本プロレス営業部長が当時自身がつけていた
「日記」をもとに真実を告白する。
未公開の記述から初めて明かされるタイガーの引退、ジャパンプロレスの設立秘話などスクープ満載の書。


新日本プロレスの歴史は事件の歴史、と言っても過言ではないだろう。

それはどういうことなのか、少しばかり説明しておきたい。

●猪木・アリ戦。
当時世界チャンピオンだったボクサー、モハメド・アリが
『東洋人で俺に挑戦するヤツはいないか』
と発言。
リップサービスだったであろうこの発言に、本当に挑戦してきたのが、東洋人でしかもプロレスラーだったアントニオ猪木だった。
当時のレートで20億とも30億との言われている、ファイトマネーを用意し、本当に実現。
アリが立ち、猪木が寝転んだ状態のまま15ラウンドは終了。
翌日新聞にも『世紀の凡戦』などと叩かれてしまう。(後に再評価)

●猪木舌出KO事件。
第1回「IWGPリーグ戦」決勝で、ハルク・ホーガンのアックスボンバーを喰らった猪木が舌を出して失神KOされてしまった。
コレは猪木が実はKOされたフリをしただけじゃなかったのか?という疑惑が持たれていて、運び込まれた病院に猪木が入院していなくて、代わりに猪木の弟が病室にいた、とうい謎の話がある。
特にの事件に特に有名な話は、坂口征二が翌日に『人間不信』とだけ書かれた紙をおいて退団しようとした、とう話。

●タイガーマスク突然の引退。
タイガーマスクの華麗な空中殺法でちびっ子人気も高まり、視聴率もうなぎ登り。
そんなタイガーマスクが突然の引退を発表。
理由は、ギャラをピンハネされていた等々。

●新日本クーデター未遂事件。
歴史にたらればはない。
けれど新日をの歴史を語る上でどうしても出てくるのが『アントンハイセル』だ。
早い話、猪木がやっていた事業で、ブラジルにおいてアルコール精製過程から生ずる廃液、愛機物を酵素菌で牛の肥料を作る、ということを行う事業だった。
引退したプロレスラーの受け皿としての役割も猪木は考えていた模様。
しかし、その事業はいっこうに起動に乗らず、新日の売り上げがそこに投入されていたり、選手、社員も事業出資されられていた。
『これだけ人気あって、稼ぎがあるはずなのに給料はいっさいあがっていないのはおかしいじゃないか』
等々の不満が爆発し、選手、社員がクーデターを起こし、社長の猪木に退任させた。
後に三代表制のトロイカ体勢になるも、スポンサーであった朝日放送が、
『猪木なしの中継とかありえると思ってんのか!』
と激怒。
三ヶ月で猪木が社長に復帰する。(一時的退任なので未遂とされている)

●冬の札幌テロ事件。
長州力が藤波辰巳(現・辰爾)に挑戦するWWFインター王者戦で、挑戦者である長州力がなかなかリングに上がってこない。
花道でなにやら騒ぎが起きている。
何事かと思うと、藤原喜明が鉄パイプをもって長州力を急襲していて血だるまにされてしまい、試合は不成立。
藤波辰巳の「こんな会社やめてやる!」は有名な発言。
前座レスラーをしてくすぶっていた藤原喜明は、この事件をきっかけに「テロリスト」と呼ばれ跳ねる。

●UWF誕生
新日本クーデター未遂事件で唯一割を喰ったのが、当時の専務取締役営業本部長であった、『過激な仕掛け人』の異名を持つ新間寿がUFWを旗揚げする。
設立前には猪木を含めた新日本所属選手の参加が噂され、旗揚げ戦の、当時の新日本主力選手、外国人選手+新間寿の写真、そして、『私はすでに数十人のレスラーを確保した』というキャッチコピーまで書かれたポスターは有名。
「俺も後から行くから」と猪木に言われ、前田日明もUWFに行くも、旗揚げ戦でポスターに刷られた選手は全く登場せず、観客からは、『猪木はどうした!』などと怒号が飛んだ。


●第2回IWGP決勝戦。
前回同様、決勝戦はホーガンVS猪木。
熱戦となったこの試合は、
両者リングアウト。

延長。

両者エプロンアウト。

延長。
という経過をたどり、3度目のゴングがなって3分後、突然長州が乱入。
場外で猪木にラリアット。
続いてホーガンにもラリアット。
この襲撃で猪木がリングに戻り、リングアウト勝ちをもぎとった。
しかしこの不可解な長州の乱入は、
「今年こそは」という思いの強いファンの怒りを買い、一部の観客が暴徒化し、国技館を破壊してしまった。

●大量離脱事件。
当時主力選手の一人であった長州力、更にアニマル浜口、小林邦昭、寺西勇、谷津嘉章、永源遙、栗栖正伸、キラー・カーン等々の維新軍の面々が大量に新日本プロレスから全日本プロレスに移籍(引き抜き)。
このとき、猪木の『いい大掃除ができました』発言は有名。

●長州力新日復帰。
1987年2月。長州は「'87エキサイト・シリーズ」を開幕戦から、手首にできたガングリオンを理由に欠場。
誰がどう考えても仮病での欠場。
後に長州力は新日に復帰する。
これにより、新日への出戻り組、全日への居残り組、引退組に別れ移籍したいわゆるジャパンプロレスは崩壊。


これがだいたい、伝え聞く事件の概要だ。
本書はこれらの事件の裏側、真相を語る一冊である。(著者である大塚直樹氏が特に有名なのは、大量離脱事件)

特に著者は当時つけていたという日記、を元に本書は構成されている。
新日のさまざまな事件は今までなんども語られ、何冊も本が出版されいる。
内外からの証言。

一体真相は?

たった、30年、40年前の出来事のハズなのに、多数の答えが提示されるのは不思議でならない。

昭和のプロレス。
昭和の新日本プロレスの裏側を知れる一冊だ。

そう、これは今まで伝え聞いていた事実とは、異なる事実、がいくつか確認された。
それだけでも、読んでおいてよかったと、思ったよ。

ちなみに、事件だけではなく、
『タイガー・ジェットシンの「サーベル」仕入先』
『1週間で用意された初代タイガーマスクのデビュー戦マスク』
『2代目タイガーマスク誕生秘話』
なども注目しておきたいところ。

なお、蛇足であるが、ジャパンプロレス崩壊において、引退組のキラー・カン。このときなぜキラー・カーンは引退したのか、そしてその時なにをしようとしていたのか。
そのあたりは『蒙古の怪人 キラー・カーン自伝』に触れられているので、こちらもオススメしておく。



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