農業機械とベーシスト
「見る人全員を置き去りにして自分たち『だけ』が気持ち良くなるためだけに、職場の夏まつりを乗っ取ってライブをする。」と友人と決めたのは農業機械の研究所に入所した新卒の一年目。
「タートルヘッズ」という、コンプライアンスの割とキワキワを攻める、今じゃ簡単には付けられないであろう名前と、「裸にエプロン」というこれまたポリティカリー・コレクトに歯向かうアナーキーなコンセプトとともに誕生したそのバンドには、ボーカルが一人とドラムが一人とベースが三人いました。ベースが…三人…?
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およそ企画モノ以外でロックバンドにベースが二人以上、というのはほぼ100%例がないし、ギターのいないロックバンドというのも聞くことはほとんどありません。
のちに日本の穀物乾燥機の世界を変える大きな仕事を成し遂げることになる先輩が、学生時代に(クラシック)ギター愛好会にいたらしい、という理由だけで、悲痛な叫びとともに無慈悲に(エレキ)ギターへと飛ばされ、残された私ともう一人の先輩の二人がベースという、変則的な構成で行われた初回のライブ。
ボーカル(♂)がお姉さま方からの悲鳴にも似た歓声とともにガーターベルトで登場したそのライブは、当初の意気込みとは裏腹に案外好評となってしまい、2年目3年目には夏祭りのトリまで務めたのち「これ以上脱げる服がない」という理由で惜しまれつつ解散したのでした。
時は流れて。
昨年(2020年)のちょうど今頃、社内では音楽熱が昂まりを見せていました。
もともとメンバーが関東と北海道、北海道内でも札幌、帯広、釧路というそれぞれ100km単位で離れて仕事をする私たち農業情報設計社。
毎朝行われるZoomミーティングでの雑談の中で「いつか集まってセッションしたいねえ」が盛り上がり「リモートでバンドやろ!」という話に。
そこで、楽器ができるメンバーをカウントしたところ、ボーカルが一人とキーボードが一人とギターが一人とベースが…四人。(タートルヘッズの時からさらに)一人増えとるやん。
軽くめまいを感じつつも(嘘)わたくしは長年ぼんやり感じてきた「農業機械に縁のある人間にはベーシストが多い」という考えに確証を得たのでした。
農業機械という地味(業界のみなさま申し訳ありません)だけど農業生産に必要不可欠な技術を支えることに喜びを感じるというドM、じゃなくて献身的なマインドセットは「いるかいないかわかんないんだけど、でもいないとバンドが成立しない」というベーシストの存在と共鳴するからではないか、という仮説を立てているのですが、いかがでしょうか。
皆様のお近くの農業機械関係者の方々はどんな感じか、差し支えなければいつかお目にかかる機会があった際にでも、こっそり教えてくださいませ。
※画像はイメージです