熱い風

石ノ森章太郎の「佐武と市捕物控 熱い風」を読んだ。
唐突だが、会社を辞めるということは一つの防衛である。追い詰められてキレるということも一つの防衛である。コーナーに追い込まれて人格否定され続けたら、反抗するほか身を守る術がないではないか。
ガードし続けるより反撃に転じるほうが易しい。それは実は自分を守るものが薄い皮膚一枚しかない弱さを知っているからでもある。弱いからこそ、反撃する。自分を守るために。
それは強さではない。反撃がどんなにうまくなっても、自ら争いを作り出すことはない。松の市はそういう男であった。その彼に肌身一枚でそっと寄り添う佐武。そのなまめかしさ、美しさ。

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