弱さを晒け出すマネジメントと弱さを乗り越えるマネジメント
今年もアドベントカレンダー始まりました!今年はシリーズ1,2と2ライン走らせております!シリーズ1のトップバッターは11月からVPoEに就任した飯田が担当させていただきます!
はじめに
この記事では、私のこれまでの振り返りも兼ねて、マネジメントに関わる者としてのスタンスの変化をお伝えできればと思います。
少しだけ自己紹介
過去の記事をみていただければ詳細に書いてありますが、
前職ではエンジニアから執行役員まで経験
2020年にエンジニアとしてログラス入社
2021年からエンジニアリングマネージャー
ということでログラスに入社してからは1年ほど現場で開発を行い、その後はマネジメントとして組織の拡大をメインのミッションとして活動してきました。
2024年11月からVPoEになるにあたって、前CTOの坂本から前VPoEのいとひろにCTOが引き継がれ、いとひろから私がVPoEを引き継ぐ形で体制変更が実施されました。
今回のサクセッションは非常に理想的な形で実施できたと感じていますが、記事の主題でもある “自身の弱さとどう向き合うか” というマインド面の要素が非常に重要であったと思います。
自身の弱さと向き合う苦悩
マネジメントに携わると多くの矛盾と向き合うことになります。
現場の力を最大限引き出し、自身は手を出さないようにしていくこと(→何もしない人に見える)
自身よりも優秀な人を採用し権限を委譲していくこと(→自分の居場所を失うことになる)
成果を残し信頼されなければマネジメントのポジションにはつけないこと(→プレーヤーの側面も少なからず求められる)
このような矛盾をうまく整理できないと「自分には能力がないのではないか?」「バリューが出ていないのではないか?」というインポスター症候群に陥ることがあります。
この矛盾の中で自身の弱みとなる部分を認め、それを他の人にカバーしてもらうということを実現しなくてはいけません。
今回の体制変更の社内発表の際には坂本、いとひろ、飯田のそれぞれの苦悩も併せて語られました。
詳細はそれぞれの発信が今後行われると思いますのでそちらに委ねるとして、私から簡単に紹介します。
坂本の苦悩
坂本はCTOとして創業期の開発をリードしていましたが、私が入社した2020年にはすでに「自分はCTOにふさわしい人間ではない」と語っていました。
本人曰く、技術が尖っているわけではない自分が長くこのポジションにいると会社のボトルネックになってしまうのではないか、と危惧しているということでした。しかし、彼はCTOを名乗り、創業期の開発をリードし、今日までのログラスの成長を作り出しました。
組織が大きくなってからは、いとひろにCTOとしての権限を完全に委譲し、現在では自身はパートナーセールスにコミットするという大きな決断に踏み切りました。
CTO交代の際に坂本が出した「自分はニセモノのCTOだった」というコメントからは、自分はニセモノかもしれないという「不安」とCTOとして成果を出さなければいけないという「責任」に向き合い続けた5年間の苦悩がにじみ出ていました。
私からしてみれば、創業期をリードした彼のエンジニアリングは素晴らしいものだったし(現在も負債が少ないのは彼の戦略のおかげ)、彼がニセモノならどこに本物がいるのだとすら思いますが、自分がそのポジションだったらやはり同じように悩むだろうと思います。
いとひろの苦悩
いとひろは2022年に入社し、2023年5月からVPoEに就任しました。彼にもまた、大きな苦悩がありました。インタビュー記事でも少し触れられていますが、バックグラウンドとしてトップダウンの統率がうまく機能している組織にいた経験が長く、一方ログラスは自律性を最大限に引き出すマネジメントスタイルの組織文化であったため「自身がどうリーダーシップを発揮していくか?」についてのGapに悩まされていたこともありました。また、坂本という強いカルチャーリーダーシップを発揮する創業者CTOがすでにいるなかで、自身がCTOを引き継ぐことへのブロッカーのようなものを感じていたと聞いています。
“ニセモノ”と自称しつつもログラスのカルチャーの源泉として強力なモメンタムを生み出している坂本、そして初期からアジャイルマインドを重視し自律的な組織運営をしてきた飯田がいた中で、どうバリューを出していくのかは非常に難しい問題だったと想像します。
いとひろは入社時からログラスの開発組織の技術力やカルチャーを高く評価し、とても好んでくれていました。だからこそこのカルチャーを壊したくない、自身がこれまでの慣れているスタイルで振る舞うことでマイナスの影響を及ぼしてしまうことを危惧していたと感じます。
今回のサクセッションで私が明確に感じているのは、いとひろがグローバルでログラスの開発組織の強みにレバレッジをかけにいくリーダーシップを発揮しているということです。いとひろがログラスの開発組織のことを語るときはいつも熱がこもっています。その熱を世界に届けにいくぞという気概をひしひしと感じます。そして、これができる人はいとひろしかいないだろう、とも感じています。
厳しい現実を直視し、自ら変化していくリーダーシップ
新旧CTOのインタビュー記事でも書かれていますが、ログラスの経営陣では、「ミッションを実現するために、それぞれのフェーズで必要なリーダーは変わる。その時々に応じて役割を柔軟に変化させることが、急成長企業には不可欠である」という認識を共有しています。
創業期から厳しい現実を直視し、向き合い続け、最後には成し遂げているリーダーの元で働けていることは素晴らしいことだなと感じています。
私の弱さ
ここからは私の話をさせていただきます。
私は前職では執行役員まで担いましたが、CTOやVPoEとは名乗っていませんでした。これは明らかに私の弱さでした。自身でしっかり成果を残し、CTOをやりますと経営に提案することもできたはずです。しかし、それはできませんでした。
技術、組織、ビジネスなど、さまざまな観点がある中で、期待が一人歩きしてしまうことを恐れていました。そして自身が特定の領域にフォーカスし、それ以外は他の人に任せるというスタンスを示すことからも逃げていました。すべてのバランスを取ろうとして、その方法ではうまくいかないと気づくのに時間がかかりました。
ログラスでエンジニアリングマネージャーを担ってからはこの反省を生かし、スタンスを示すことを意識して取り組んできました。結果として、ある程度は過去の弱さを克服することができたのではないかと感じています。
しかしながら、おそらくまた新たな弱さに向き合うことになるのだと思っています。事業成長、組織拡大、グローバル化など大きな変化にチャレンジしようとしている中で「スタンスを示し続けられるのか?」「選択と集中をやり切れるのか?」という大きな不安とプレッシャーがあります。
弱さを晒け出すことの価値
自身の弱さを晒け出すことは、ある意味、自身にその能力がないことを公言するようなものであり、抵抗感を感じる人もいるのではないでしょうか。
しかし、弱さを晒け出すことは周囲から助けを得る上でなくてはなりません。
組織が大きくなればなるほどたくさんの課題が生まれます。一人の人間がカバーできる領域など全体のほんのわずかです。しかしながら、マネージャー自身も、組織全体の認知としても「マネージャーはなんでも知っているし、なんでもできなければいけない」と思ってしまっているケースがあるように感じます。
特にスタートアップのような変化の激しい環境において古くからいる人間は、対外的なイメージとして「あの会社にいるすごい人」というイメージがついてしまっていることがあると思います。
「すごい人」のイメージのまま人が増えていくと、困っていても周囲から助けを得られない苦しい組織ができてしまいます。
役職に関係なく、全員同じように「強み」と「弱み」を持った人間である、という認知を作った上でコラボレーションしやすい環境を作ることが大事と言えそうです。
言い訳を潰して弱さを乗り越える
最後は弱さをどう乗り越えるかについてです。
私が過去抱えていた弱さをさらに深掘りすると、「技術的に中途半端である」ことが最も大きなコンプレックスでした。
それなりに機能開発はしてきたものの、特に尖ったエンジニアリングの深さがないということに悩みを抱えていました。
半端な人間がCTOやVPoEを名乗ることに大きな抵抗があったのだと思います。これは仮に周囲からどれだけ大丈夫だよと言われようと自分がそう思ってしまっている時点で乗り越えることは難しかったのだと思います。
ログラスではまずエンジニアとして入社することで、これまで経験していなかった型のある世界でドメイン駆動設計をベースに開発の経験を積むことができましたし、ある程度大きな機能についても自身のリードでリリースすることができました。
それまで2、3年コードを書くことからは離れていましたが、意外と書けるという自信につながりました。
今思うと、私の弱さは私がコンプレックスに感じていたことを言い訳にしていたのだと思います。
他者からの評価というより、自分が自分のことをどう思うかという側面が大きかったと捉えています。
自分がバリューを発揮できていない、ふさわしくないと感じる場合、そこには何か自身が感じている弱さが存在しているはずです。乗り越えるべきものだと思うのであれば、言い訳になってしまっている要素を潰しに行くような大胆なDeep Diveにチャレンジするのも良いかと思います。
おわりに
以上、CxO、VP、マネージャーが直面する「自身の弱さにどう向き合うか」というお話を、私のこれまでの経験を交えてお伝えさせていただきました。
いつものリンクですが、これからのログラスを助けてくれる方も常に募集しています。ご興味持っていただける方は、ぜひお話ししましょう!