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2018年4月に始動した落合陽一×日本フィルプロジェクト。
テクノロジーを活用してオーケストラの可能性を広げ、新しい音楽体験を生み出す「オーケストラの聴き方をアップデート」を目的としています。最先端の技術を用いて、オーケストラの演奏や音響効果を向上させ、観客がより身近に感じることができるような空間を創出することを目指しています。
落合陽一さんはメディアアートやテクノロジーと伝統的な文化(ダイバーシティー)が融合することで新たな価値を生み出すことができると考え、プロジェクトを通じてオーケストラが今までにない形での表現を可能にし、新しい聴衆層にもアプローチできることを願っています。
また、デジタルテクノロジーが音楽に与える影響についても研究しており、それを活用してオーケストラの音楽体験を進化させることで、より多くの人々がクラシック音楽やオーケストラの魅力に触れる機会を増やすことができると信じています。
主役はオーケストラの皆様。
テクノロジーを駆使してオーケストラの伝統的な枠組みをアップデートし、新しい音楽体験を提供することで、クラシック音楽の魅力をより多くの人々に広めるプロジェクトです。
今回は過去6回7公演の取り組みを振り返りまとめつつ、今年8月23日(水)に東京オペラシティ コンサートホールで開催される講演についても考察します。
プロジェクトのきっかけ
落合陽一さんが共同開発で進めていた「ORCESTRA JACKET」。数十の小型スピーカーを搭載した特殊なジャケットで、着用すると身体中に音が響く体験ができる。これを試着したデフサッカーの仲井健人選手がツイッターで以下のように感想をツイート。
このツイートを日本フィルハーモニー交響団(以下、日本フィル)関係者の目に留まり、「これならば聴覚障害の方にも音楽が届けられるのでは」と落合陽一さんに話を持ちかけ、新しい音楽体験を作りたいという想いが一致しプロジェクトがはじまりました。
VOL. 1:耳で聴かない音楽会
2018年4月22日(日) 開催
音楽を単なる聴覚体験ではなく、身体全体で感じられるものとして捉えることを目的とし、オーケストラの演奏を聴覚だけでなく、視覚や触覚を通じても楽しめるような独自の演出が行われました。
落合陽一さんは、音楽は五感全体で体験するべきであり、それを実現するためにデジタルテクノロジーを活用することが重要で、伝統的なオーケストラの演奏を、視覚的な表現やインタラクティブな要素を取り入れることで、新たな価値を生み出すことができると考え開催されました。
ダイジェスト
Vol.2:変態する音楽会
2018年8月27日(月) 開催
オーケストラは約300年間、基本的なスタイルを変えずに楽しまれています。しかし、メディアや娯楽が多様化する中、クラシック音楽は敷居が高く感じられ、オーケストラ離れが進んでいます。日本フィルと落合陽一さんは、現代の人の心に響く確かな力があるオーケストラ音楽をもっと身近にできないかと考えました。
通常、オーケストラは主に聴覚で体験されますが、コンピュータを使えば視覚や触覚にも変換できるのではないかという発想で、落合陽一さんと日本フィルはプロジェクトを展開。Vol.1では音楽を光や振動、触覚と結びつける新しい体験を模索し、Vol.2では80人を超えるフルオーケストラでそのアイデアを拡大させます。
テクノロジーを活用してオーケストラの聴き方や楽しみ方をアップデートしました。
ダイジェスト
VOL.3:耳で聴かない音楽会2019 / 交錯する音楽会
2週連続のW公演で開催されたVOL.3。
方向性の異なる2つの公演が、東京オペラシティと東京芸術劇場と異なる会場で開催されテクノロジーでオーケストラを再構築(アップデート)されました。
第1夜 Diversity《耳で聴かない音楽会2019》
2019年8月20日(火) 開催
「耳で聞かない音楽会」は、ジョン・ケージ「4分33秒」の第二楽章に集約されており、時間と空間に存在するもの全てが音楽であるという考えから、多彩な解釈が可能だと考えられ開催されました。サウンドハグ、オンテナ、ボディソニック、ピクセルなどを使って、楽器の動きを視覚化したり、タイプライターやサンドペーパーを使った音を演奏したり、映像を演奏者として組み合わせることで、音楽がどのように複雑に感じられるかを探求する音楽会でした。
楽曲構造、楽器の構造、光と音の相関性、身体と器具を使った表現、匂いと音と聴衆の体験を含む前半パート、動物に戻した映像と音楽の対話を含む後半パートで構成されました。耳だけでなく目でチューニングするか、耳以外の要素でチューニングするかが難しい点であり、練習とリハーサルの時間制約も課題だったと落合陽一さんはイベント後に振り返っていました。
ステートメント
ダイジェスト
落合さんのnote
第2夜 Art《交錯する音楽会》
2019年8月27日(火) 開催
アートの観点からオーケストラを再構築し、映像演出を進化させて聴覚以外の感覚も刺激する音楽会でした。このイベントでは、アナログとデジタル、自然と工業、主体と客体、そして洋と和の交錯がテーマとなり、明治期から約100年の日本のオーケストラ史を辿り、新しいページを加えることを目指しました。
オーケストラの質量とデジタルがもたらす原始的な共感覚化、感覚の変換、音と光と身体性のシナスタジア(共感覚)。オーケストラが90年以上の歴史を経て、デジタル技術と融合し、音の持つ感覚を変換することに焦点が当てられ、多様化する感覚とデジタルの原点回帰の中で、日本の風景とオーケストラやデジタルの美的感覚を結びつけることを目指しました。
ステートメント
ダイジェスト
落合さんのnote
VOL.4:__する音楽会
2020年10月13日(火) 開催
コロナ禍により当初の企画が見直され、オーケストラの未来を模索する挑戦と捉えられました。ディスタンスを保った音楽会の形として、ホールでの鑑賞とオンライン鑑賞の2つのスタイルが提供され、ライブ配信ではホールでの体験と同等の体験が提供されることを強調しています。また、8Kでの収録も行われ、後から鑑賞する楽しみ方も用意されています。
分断されたオーケストラと新しいデジタルの地平をテーマに掲げており、時空間的な分断に対して実験と共有を重視されました。デジタルの地平から再び世界の触覚や調和を取り戻す作業は、赤子が世界を認識する姿に似ていると述べられました。オーケストラの原義に立ち戻りながら、デジタルの触覚や共有空間に対する想いを実現させることを目指しました。
白紙の状況から新しい演奏会を模索する「試行錯誤」の状況もYouTubeにアップされました。
ステートメント
ダイジェスト
落合さんのnote
VOL.5:醸化する音楽会
2021年8月11日(水) 開催
五感をフルに活用し、新しい音楽体験の共有を試みました。音楽会のために特別に調合された香りと味覚を刺激するアイテムが提供され、落合陽一さんと指揮の海老原光さんが時間をかけてテストを重ねて決まったものです。
コロナ禍によって分断された中で深まった独自の価値観や土着の文化から継承されたDNAのようなものをテーマに、五感をフルに使って分断された五感体験を呼び覚ます方法を探求しました。
デジタルのもたらす新しい自然や原始的な共感覚化、感覚の変換、音と光と身体性のシナスタジア(感性間知覚)を探求。コロナ禍によって分断された身体性と、それぞれの文化圏における土着の発酵性から生まれる新しい可能性を追求しました。東洋的美的感覚と西洋的美的感覚の対比構造、発酵の意味性の違いに目を向け、持続可能性との対話に入り、科学技術と人間性の調和の夢を反芻することを目指しました。
ステートメント
ダイジェスト
落合さんのnote
醸化するモノリス
音楽会開催時に「醸化するモノリス」が展示されました。
コロナ禍で分断された風景と人々の身体について考えています。巨大なモノリスは、デジタル技術がもたらす新しい自然の風景を調整しながら物質化しています。このモノリスは、人工の滝や岩、水しぶきに囲まれた都市の中で、本来の自然とつながり、新しい身体感覚を表現しています。
オーケストラと質量
音楽会開催時に「日本フィル落合陽一写真展」が展示されました。
VOL.6:遍在する音楽会
2022年8月25日(木) 開催
「音楽の身体的体験」を再評価し、音楽の持つ身体性や祝祭性を探求しました。イベントは3つの見どころ・聴きどころがあり、
映像と音楽がライブで共演する新作を発表。藤倉大氏による新作が初演され、映像と音楽によるライブパフォーマンスが行われました。
ジョン・ケージの《ミュージサーカス》を通じて、観客は自由にさまざまなパフォーマンスを体験できる「遍在」の楽しみ方を披露。
縄文の「焔」をテーマに、音楽の持つ身体的な祝祭性を問い直しました。
コロナ禍を通じたデジタルとオーケストラの統合を総括し、定在遊牧性やグローバルヴィレッジの観点からジョン・ケージのアイデアを再評価し、時間の制約のない音楽をどのように捉えるかがキーワードでした。
音楽と光の関係、デジタル技術と現代社会、森林生態系や縄文社会の重要性、そしてジョンケージの音楽について検討し、耳だけでなく他の感覚を使って音楽を楽しむことについて言及しました。また、デジタル技術が私たちの生活にどのように影響しているか、そしてそれがどのように大きな変化をもたらしているかについても考察しています。
森林生態系と人間社会の関係性、きのこがネットワークを作るように、音楽という観点で考えました。さらに、縄文時代の人々が持続可能な社会を築いたことに学ぶべきことがあると考えています。そして、ジョン・ケージの音楽の中で「キノコの音楽」と呼ばれる作品に触れ、物質や時間を超えた音楽の体験について考えています。
最後に、私たちが過去と現在、そして未来の中でどのように平和を求め、文化や歴史を通じて新たな価値観を見つけることができるかを問いかけました。
ステートメント
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VOL.7:帰納する音楽会
2022年8月25日(木) 19:00 開演( 18:00 開場 )
テクノロジーを活用してオーケストラを再構築し、音楽と身体性を回復するという取り組みをさらに深化させます。
今回の見どころは
フィールドワークによる「新しい民俗と伝統の発見」を音楽に取り込む:落合陽一は6月上旬に沖縄でフィールドワークを実施し、8月の公演ではその成果を取り入れた演出を予定しています。
藤倉大とのコラボレーション「オーケストラでの日本文化探訪」を開始:英国在住の作曲家・藤倉大とのコラボレーションが始まり、日本各地の伝統的な音素材を長期的に探訪します。今年は「琉球古典音楽」に焦点を当てます。
クラシックの「あたりまえ」を揺るがすプログラム:通常のクラシック音楽とは異なり、日本人の現代作品集を前半に、そしてクラシックの辺境の地でクラシックを目指したものや、いずれ「古典」(クラシック)と呼ばれるに違いない作品を後半に集めました。
AIを取り入れた演出、一体となる客席:AIによる画像生成手法を活用した演出と、客席がオーケストラと一体となる「マンボ」を計画しています。さらには、会場では泡盛の試飲体験も提供します。
室内楽サテライト公演で「音楽の喜びあい」をより広く:本公演後、初の室内楽サテライト公演を実施し、東京以外の地域でも音楽の体験の機会を提供します。
このプロジェクトは、音楽とテクノロジー、そして文化的探究を融合させた挑戦的な試みで、様々な視点から音楽の可能性を探求します。
ステートメント
落合さんのnote
まとめ
今年も本公演が楽しみですね!
そして、東京以外の場所で開催される室内楽サテライト公演もさらに楽しみです。私は「《帰納する音楽会》サテライト公演 in TAKAYAMA Yoichi Ochiai ✖ JPO Project Satellite Performance in TAKAYAMA」のチケット予約しました。ぜひ、皆さんも!