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【読書】『捨てられないTシャツ』 都築響一 筑摩書房(2017)

最近のマイブームは、都築響一であるので、続けて読む。

タイトルどおり「捨てられないTシャツ」についてのエピソードが70人分用意されている。
もっとも気軽に着ることができるTシャツ。
「下着から勝負服へ−20世紀後半から21世紀にかけてもっとも地位が向上した衣服は、Tシャツだったのかもしれない」

そして、Tシャツについて、次の内容を本にしたのだ。
「最初のうちはTシャツにまつわる思い出を持ち主から聞いて、それに略歴を加えてこちらで短い文章にしていた。そのうちに持ち主自身に書いてもらうのもおもしろいかもと思い始め、「書いていいよ」と言ってくれる人にひとには「てきとうにメモでくれたらこっちできれいにしますから」とお願いするようになった。最終的には本書に登場するTシャツ70枚のうち、半分以上は持主自身による文章である。」

この持主の人生が、これでもか、というくらいいろいろある。
僕は決して悲喜こもごもではない、と思いたい。

読んでいて気をつけよう、と思ったことがある。
さっきの「悲喜こもごも」というのは僕の見方であって、当人にとっては関係ないことなのだ。
都築が毎週発行しているメールマガジンの中に「アウトサイダーアート」がある。
「アウトサイダーアート」は、「精神疾患患者など美術の正規教育と受けていない人々が他者を意識せずに創作した芸術のことを指す。」とされている。
この「他者を意識せず」という点が大切だと思っていて、人の根源的なところ、「魂」からあふれ出る力が直接表現されるものが、直接出ている、と感じる。
ここに「精神疾患患者」と「」を入れてしまいがちなのである。

いといろな人がいて、いろいろな人生がある。
当たり前のことだけど、これがTシャツのこと、中にはTシャツのことはほんの一部で、その人の人生が書いてあると、最初に思いがちなことが「」をつけてしまうことだと思う。

自分の知っていることなんて本当にちっぽけなんだ、とわかる本だ。
このちっぽけな世界から世の中をみると、上から目線になっていることに気づいて赤面してしまう。

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