【読書】『漢字百話』 白川 静 中公新書 (2003)
この本は、うまく眠れない時のナイトキャップとして読んでいた。
だから読まない日も多く、いったいいつから読み始めたのかも良く覚えていない。
ただ、この本を買ったときのことはよく覚えている。
2022年2月に札幌に行き、「BOOK LAB.」という素敵な古本屋で買ったのだ。
札幌には観光で行ったのだけど、案内をしてくれた方が読書会を10年以上主催している、という読書家であった。
ここで、小説を読んだら、と勧められて、例えば「谷崎潤一郎」や「吉村昭」など、名前は知っていても読んだことがない作家の本を読むことになった。
札幌の個性的な書店では、「坂口恭平」の本を手に取った。
白川静は、僕がすべての網羅しているわけではないが、『文字講和』を読み、『新訂字統』『字通』を持っていてたまに使っていることから、漢字の碧学として尊敬している。
本書の内容については、カバーのそで(ここを「そで」ということは初めて知った)にある文の最後から引用すると「漢字本来の造字法やその構造原理に即しつつ、漢字の基本的諸問題を考察し、今日的課題を問う。」となっている。
現代の日本では「当用漢字表」なるものが国から示され、「検定教科書と報道機関」が守っているという。
本書では、漢字は、中国から伝わってきたが、日本では訓義を通じて国語化された歴史について語っている。
中国では簡体字を使って、漢字を簡略化し、日本では「当用漢字表」により漢字の訓義を捨てている。
白川は日本の現状を「抑圧された文字環境」とする。
そして、「もしいまの少年たちに書物ばなれの傾向があるとすれば、その一端は、この抑圧された文字環境にあるのではないかをおそれる。」と述べている。
本書は1978年に書かれている。
若者たちの書物ばなれは、本書が書かれた時代よりはるかにひどくなっている。
これは、コンテンツ、つまり内容の問題である、とされることが多い気がしている。
白川のいう視点での捉え方が本質ではないか、と思った。
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