僕たちが八郷留学で本当に伝えたいこと
あけましておめでとうございます。
八郷留学の原部直輝です。
本当は、ちょうど一周年だった8月にまとめの記事を書こうと思っていたのですが、なかなか消化が進まず4ヶ月が経ち、年が明けてしまいました。
今回は、これまでの八郷留学の成長と、1年経って思うことについて書きたいと思います。
「これ終わったら遊んでもいい?」
八郷留学を始める少し前から、似たような活動をしている方々のもとを訪ねて見学させてもらったり、お話を聞いたりしていました。
「子どもをお客さんにしない方がいいよ」
「大人が楽しいと思うことを全力で楽しんだら、子どもも自然と楽しむよ」
「自然教育は子どもの自己肯定感と非認知能力を高めるんです」
このように、子どもとのかかわり方や活動の意義を再確認させてくれた方々は多く、本当に勉強になりました。
しかしながら、これをいざ実践しようとすると本当に難しいのです。
自然遊びに慣れている子だったり、そもそも興味関心がプログラム内容に近しい子であれば存分に楽しんでもらえるのですが、その日のプログラム内容がたまたまその子の興味のないことだったりした時に、どう楽しんでもらうか?
ある時、プログラム中に子どもから「これ終わったら遊んでもいい?」と聞かれた時は、改めて考えさせられました。
何か課題を強いているつもりでもなかったし、楽しんでもらうために考えた内容だったのに、子どもからしたら「やらされてる感」があったのはなぜだろう?
それは今思えば、我々スタッフが一回の八郷留学のイベントを運営することで精一杯になっていたからだろうと思います。
無理に楽しませようとするのではなく、かえって自分達も一緒に楽しんでしまえばよかったのです。
目玉になるようなコンテンツは確かに必要だけど、大事なのはそこじゃない。
ぐりとぐらのカステラを作ることも、ツリーハウスを作ることも、それ自体がゴールではないのだと、改めて気づくことができました。
子どもの成長に気づけた時、自分達も成長できた
「コンテンツそのものはゴールじゃない」ということを再認識した次に、「では八郷留学の真のゴールは何なのか?」という疑問にぶち当たりました。
まずは、これまで以上に子どもたち一人ひとりと向き合うべきだと考えました。
しかし、どうしたらいいのかわからない。
自由な発想で好きなことをして楽しんでほしい一方で、安全管理の面から行動を制限しなければならない場面もあります。
安全と自由とのバランスの取り方や、他の子との接し方を注意しなければならない時の姿勢などを学ぶ必要がありました。
そこで知り合いに紹介してもらったりして、数名の保育士さんにお手伝いに来てもらうことになりました。
普段から子どもとかかわり成長を見守っている人の視点や接し方は、そういうことか!と思うことがとても多く、元々のメンバーも自然とそれらを吸収していくようになりました。
すると、子ども一人ひとりの成長に気づくことができるようになりました。
最初の頃は静かだった子が、「自分もそれやりたい」と意思表示してくれるようになったり、遠くから来た子たち同士が友達になったり、我々スタッフとの絆のようなものまで感じたりとか。
こういうことを一番はっきりと感じることができたのは、8月の2泊3日の一周年記念プログラムでした。
夏休みマジックもあったかもしれませんが、子どもたちもスタッフも本当に楽しい時間を過ごせたと思います。
これは後日保護者の方からお聞きしたことですが、一番楽しかったのは何?という質問に対して、「人とのかかわりが一番楽しかった」と言ってくれた4年生がいました。
まさかそんなことを言ってくれるなんて。
八郷留学が子どもたちに与えられることが何なのか?
自問し続けてもいまいち腑に落ちる答えが見つからなかったところに、期待以上のヒントをもらうことができました。
僕たちも確かに成長している。
八郷留学はただの自然体験プログラムじゃない。
ちゃんと子どもたちと向き合えている。
そう思えた瞬間でした。
僕たちが八郷留学で本当に伝えたいこととは?
八郷留学が子どもたちに与えられるものについては、一つ答えが出たとします。
では、僕たちが八郷留学で本当に伝えたいこと、つまり世の役に立つことファーストで出てくるものではなく、自発的かつ積極的にやりたいことは何か?
子どもたちと一緒に時間を過ごしていると、よく懐かしさを覚えます。
小さい頃におじいちゃんおばあちゃんに教わった遊びや昔話、ちょっとした暮らしの知恵。
そしてそれらのあたたかさ。
優しい思い出は、いつも自分を強くしてくれます。
僕たちは、子どもたちにそんなあたたかな思い出を作ってあげたいのです。
八郷(石岡市)のみならず、多くの地域が人口減少に苦しんでいます。
八郷留学のメンバーのほとんどの出身小中学校は、統廃合が予定、またはすでに廃校しています。
家を継ぐ者がいなければ畑も裏山も荒れ、代わりにソーラーパネルや産廃の埋立地が増えます。
自分の子供は、賑やかな教室で友達をたくさん作り、放課後は野山を駆け回って遊ぶことができなくなるかもしれない。
自分のじいちゃんばあちゃんがしてくれたことを、自分の孫にはできなくなるかもしれない。
漠然とした不安が湧いてくることも少なくありません。
八郷が八郷であり続けるために、、、
「俺たち、大学生になったら八郷留学でバイトする!」
9月の八郷留学では、市内から来てくれている子たちがそんなことを言いながら、東京リベンジャーズになぞらえて「八郷卍會」を名乗りだしました。
「ありがとう!それまでにバイト代たくさん払えるように八郷留学でっかくしとくからな!」
嬉しくて、声が震えるのを堪えながらそう言いました。
きっと彼らは都市に散り、八郷にはないような面白い仕事をする。
きっと、八郷にはいないようなタイプの、たくさんの面白い人に出会う。
きっと、八郷では感じることのない刺激を受けて、多くのものを吸収する。
むしろ、そうであってほしいと思います。
そして、どんな形でもいい、いつか八郷を思い出して戻ってきてくれたら、それ以上の幸せはありません。
写真: 三浦奈央