哲学の専門家とお話ししました
今日は、東京大学名誉教授、武蔵野大学教授であり、原部の高校の大先輩でもある一ノ瀬正樹先生を訪問しました。
八郷留学の教育的価値をより深くするために、私たちも学びを続けなければなりません。
八郷留学を自然教育とカテゴライズするのであれば、哲学の専門家である一ノ瀬先生は直接の専門分野ではありません。
しかし哲学はあらゆる学問のトドのつまりであるし、多方面からリベラルアーツ的に八郷留学を考えることが大事だと思い、面談をお願いしました。
自然教育はなぜ自己肯定感を高めるのか?
この質問に対する一ノ瀬先生の考えは以下の通りでした。
まず第一に、「健全な精神は健全な肉体に宿る」という格言があります。
よく、Healthy body, healthy mind. って言いますよね。
言い換えれば、肉体的に健康でなければ心も健康であれないということです。
自然の中で身体を動かすことは、豊かな心の第一歩ということですね。
次に、昆虫や動植物など、あらゆる対象に熱中することがミソだそうです。
人は、自分の外に関心を向けていることが幸福の必要条件です。
逆に言えば、自省、過去への執着、後悔など、意識が自分の内側へ向いている時は、不幸になってしまうということです。
ここで言う幸福とは、well-being のこと。happiness とは少しニュアンスが違います。
これは、思い当たる経験がある人も多いのではないでしょうか。
最後に、人に限らず、他者との関わりの中でこそ幸福を感じるということです。
「自己肯定感」という言葉を聞いて、他者からの承認に依拠しない、自分で自分を認めてあげられる、純然たるものを思い浮かべる人も多いと思います。
私も、それこそが真の自己肯定感だと思っていました。
しかし、利他的な行為が well-being に必要不可欠だとされているそうなのです。
例えば、見返りは求めずに、ただボランティアをして気持ちがいいという状態がそれにあたります。
自己肯定感と well-being は、後者の方が広義な概念だと思いますが、利他的な行為の結果、相手が喜んでいる姿を見たら、直接感謝の言葉を伝えられなかったとしても、自分の存在意義を認められる気がしますよね。
それに、誰かから認めてもらう経験があればこそ、自分でも自分のことを認められるとも考えられます。
今回、八郷留学のプログラム作りに活かせそうなアドバイスをもらえたらいいな、と思っていましたが、特に何か新しいことをする必要はないのかもしれません。
今日のお話で、普段から私たちが感じていることを、理論的にサポートしてもらっている感覚がありました。
2時間以上にわたり、質問に対してものすごいボリュームで答えていただきました。
一つの解答をサポートするのに補助的な論にいくつも飛び、それら全てが興味深く、全体的にも、断片的にも人生を豊かに生きる考え方を学ぶことができました。
本当に濃い時間でした。
あれ、八郷留学のためにお話を聞きに行ったのに、人生のためになるようなことを教えてもらってしまった。。
哲学って面白い。
学ぶことを止めない大人でありたいです。