これから教頭(管理職)になる先生へ!【高校教員応援マガジン】
管理職になるということ。
自らなろうと思った人。
勧められてなることにした人。
いずれにしても、最後は自分で決心されたと思います。
今回は私の経験をもとに、これから管理職へなられる皆さんへ、エールを送らせていただきます。
私の場合は――
私が管理職をめざし始めたのは、2005年(H18)です。
それまでのことを思い返してみます。
教務部時代
高校教員になり、2校目に配属された学校でのことです。
担任をしながら教務の副部長を5年間務めました。
教務部では教育課程や時間割編成を担当していました。
学年の学習指導チーフとして5教科会議を運営し、ホームワークや講習の調整を行い、定期考査前の全体指導、成績処理を総括していました。
学年通信の作成や、総合的な学習の時間の企画実施も担当していました。
2003年。前の教務部長が教頭へ昇任し、部長職を提示されたとき、私は3年生の担任になる予定でした。
最初は断ろうと思いましたが、55分授業の導入を含む、教務の「文化」を継承・発展させなければならないと考え、全校生徒960名の担任をやる気概で教務部長になることを受諾しました。
当時の学校では「教務部長になる=管理職に進む」という流れがあり、「林もそうか」と言われましたが、当時は直接生徒に関わることを辞めるなど微塵も考えていませんでした。
部長になったときの校長には、反発する場面が何度もありました。
しかし翌年O校長に替わり、その識見の高さ、洞察力、迅速な判断力、責任感、そして対話的な姿勢に惹かれました。
実は、校長にそうした魅力を感じたのは教員生活で初めてでした。
管理職をめざす
2005年、その高校で12年目を迎えました。
当時は15年、中には20年以上勤める先生もいて、それほど珍しくはなかったのですが、いつまでも同じ環境ではいられないだろうとは思っていました。
しかし、自分の子どもたちの教育環境や家計を考えると、どこに行っても構わないとはなりません。
単身赴任にならざるを得ないとしても、車で2時間ぐらいの高校への異動希望を出そうかと考えていました。
悩む中、O校長のことを思いました。
あんな校長がいるなら、自分もなってみたい。
なれないだろうか。
今、教務部長として、直接教えていなくても、全ての生徒の担任をやっているぐらいの気持ちがある。
そうであれば、生徒が学びに喜びを感じ、生徒が「行きたい」、先生が「勤めたい」と思うような学校づくりのリーダーになるという生き方があるのではないか。初めてそう思い、当時の教頭からも勧められ、試験を受けることにしました。
試験には3回落ちました。
挫けそうになりましたが、次にやってきたH校長にも激励され、4回目で合格しました。
北海道の場合、2月上旬に合否がわかります。
受かったことがわかったときは、嬉しく、新しい航海に挑む思いでした。
そして、60歳定年まで、14年間管理職を務めました。
お陰で人生が豊かになりました。
O校長、H校長との出会いに、今も深く感謝しています。
選考試験の学びを通して
私が幸運だったのは、結果的に、教頭になるための勉強が4年間できたことです。
試験は論文(1200字)と面接(15分)でした。
※現在は面接のみになりました。
試験対策として――
本、雑誌を読み、ネットの情報もチェックしました。
法令、国や北海道の教育の動向の勉強をしました。
道内の教育情報が詰まり、国の動向もフォローしている「北海道通信」という日刊紙にも目を通しました。
校長、教頭から多くの資料をもらいました。
出身大学の組織による勉強会にも参加し、論文と面接のトレーニングもしていただきました。
また、北海道大学スクールリーダーシップ研修という公開講座にも半年間参加しました。
課題の資料を読み、大学の先生や行政の方のレクチャーを受けますが、一方的ではない研修でした。
実践発表を行い、ビジョンを描き、学校づくりのプランも立てました。
他校種の先生たちとの学び合いが、とても刺激的でした。
学び、考え、書いた4年間を通し、管理職としての視点が高くなっていったと思います。
私はハードワーカーで、やらなければならないこともやりたいことも、限界までやろうとする人間でした。
数多くの締切に追われ、目の前のやるべきこと、自分の学校のことで精一杯で、他のものに目を向ける余裕がありませんでした。
しかし、こうして学んだことによって視野が広がりました。
私が「教頭だったら」「校長だったら」と考えるようになりました。
「教頭はわかるが、なぜ校長の視点も?」と疑問に思う人もいるでしょうか。
教頭の職務は、学校教育法第37条で「校長を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童の教育を司る」と定められています。
「助ける」ためには、校長の職務を具体的に理解しなければなりません。
校長の視点がなければ、教頭の職責を果たすことはできません。
「もし私が校長だったら」を教頭の時から考える必要があるのです。
管理職になる皆さんへのアドバイス
これから教頭(管理職)になる皆さんは、ここまでどのような道のりだったでしょうか。
今、どんな心境でしょうか。
残り3ヶ月弱。
生徒の進路、高校入試、卒業式、次年度の準備など、忙しくない人はいないと思います。
何かの参考になればと願いながら、次の5点をアドバイスします。
1.読む
1日15分でも構いません。
落ち着いて、教育に係る本を読みましょう。
教育委員会や文部科学省の最近の通知等を読み直しておきましょう。
北海道では2月の議会において、教育長が教育行政施行方針を説明します。
現状認識、課題解決の考え方、思いが詰まったものです。
何度も何度も読み込み、自分の言葉として語れるようにしたいものです。
この代ゼミ教育総研のnoteもお勧めです。
年末には、教育に係るウェブサイトで、その年の重大ニュース、キーワードをまとめた記事が掲載されました。
2.備える
教頭としてのマネジメントには、当然ながら「管理」「監督」の面があります。
危機管理が適切でなければ、学校の「通常の」運営及び教育活動に大きな支障が出ます。未然防止、事故発生時の対応を頭に入れておきましょう。
危険なところはないか、自分に「万が一」の視点があるか、今ここで事故が起きたら、何をするか。
日常的に想定する癖をつけましょう。
▼学校の危機管理マニュアル 作成の手引(文科省)https://anzenkyouiku.mext.go.jp/mextshiryou/data/aratanakikijisyou_all.pdf
服務や勤務に係る知識は必須です。
懲戒処分の基準を確認しておきましょう。
残念ながら、教員の不祥事は後を絶たず、学校教育に対する信用を失墜させています。
事故が起これば、事後対応に多くの時間とエネルギーを費やします。
呼びかけるだけでは防げません。
具体的に何をすればよいか。しっかりと考えておきましょう。
▼懲戒処分の指針(北海道教育委員会)https://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/fs/1/1/0/9/2/6/2/3/_/指針(R6.2.26).pdf
また、着任し、すぐに職員会議を進行することになります。
年度の方針や計画への共通理解を図る重要な職員会議があります。
私の経験上、会議が有意義に、また適切に行われていない可能性も少なくないと思います。
職員会議の法令上の位置付けや4つの機能を確認し、異動後すぐに会議資料を点検し準備を進めるとよいと思います。
▼学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行について(通知)(文科)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakko-hyogiin/05111801/002.pdf
3.調べる
赴任先が決まると、その学校の噂話が入ってきます。
私の時も、しばらく連絡していなかった人がわざわざ電話をかけてきて、
「あの学校は、実は大変なんだ」と、(余計な)アドバイスをしてくれることがありました。
しかし、噂はあくまで噂です。
耳に入る情報は昔のことかもしれません。
誰かが大袈裟に騒いでいるだけかもしれません。
問題のない人も組織も存在しません。
必ず、よさと課題があります。
必ず、SWOTがあります。
したがって、人のイメージに左右されるのではなく、学校のホームページに記載されている情報を見ておくとよいと思います。
4.OJTする
皆さん、4月1日まで多忙な日々を過ごすことでしょう。
現任校の業務をしっかりと行いながら、異動の準備をしなければなりません。
パートナーや子どもたちと一緒であれ、単身であれ、引越が伴うなら一層大変です。
上記の「読む」「備える」「調べる」に十分な時間がとれないかもしれません。
しかし、「十分な時間がとれる日」は訪れないのではないでしょうか。
私たちは、1日24時間の限られた時間をよりよく使うしかありません。
1時間欲しくても、3分しかない。
いいのです。その3分の質を高めましょう。
そして、OJT(オンザジョブトレーニング)です。
もう、教頭や校長になりきりましょう。
もちろん、間違っても、偉ぶってはいけません。
偉ぶる人、権威を笠に着るリーダーは、失格です。
自校の教頭、校長をよく見てください。
自分がその立場だったら同じようにするのか、考えてください。
同じならよいです。
模範があるなら、そのとおりにやりましょう。
もちろん、欲を出したり、背伸びしたりしてもよいです。
自分なら、もっとうまくできる。
その方がよい、という言動を考えてみましょう。
「私も同じようにできるだろうか」などと、臆病になる必要はありません。
臆病になるのは、自分が失敗したくないという自己愛に過ぎません。
大事なのは、学校であり、生徒であり、職員です。
自分も大切にするべきですが、変なプライドは捨てることです。
「もし私が教頭なら」「私が校長なら」で物事を見る習慣をつけましょう。
忙しくても、OJTはできます。
5.覚悟する
覚悟を決め、管理職になります。
4月からは教頭になります。
多くの人が「まだ1年目だから…」「少し様子を見て…」「なったばかりなので…」と言うのを聞いてきました。
全て、言い訳です。
それは、生徒に関係ありますか?
4月1日から教頭なのです。
来たばかりであろうと、教頭です。
4月1日、自分が一番学校のことをわかっている、そんな気概を持ちましょう。
もちろん、わからないことは謙虚に聞きます。
知ったかぶりがアウトなのは、1年目でもベテランでも変わりません。
また、仕える校長がどんな人か気になるのは自然なことです。
しかし、評判は評判。
噂は噂、イメージはイメージです。
相手がどんな人でも変わりません。
自分がどう関わっていくかが全てです。
「よさと課題の両方がない人も組織も存在しない」。
よって私は、よさをいかに生かすか、課題にいかに取り組むか、それしか考えません。
校長であれ誰であれ「他人」であり、「過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる」のです。
全ては関係性の問題であり、生き方が問われるだけです。
覚悟を決めていても、必ず「想定外のこと」があります。
私は、某進学校に着任した4月1日の8時から引継に全くなかった難題を突きつけられました。
「私のせいではない」
「どうしてこんな尻拭いをしなければならないんだ」と思いました。
理不尽なこと、ベストを尽くしても妥協しなければならないことがあるでしょう。
それでも、あなたが顔を上げて立ち向かえば、必ず、誰かの助けになります。
それは、教育のため、生徒のためになります。
いかがでしたか。
厳しく感じた人もいるでしょうか。
しかし、教頭にしか、校長にしかできない仕事があり、責任に見合ったやりがいがあります。
他の職にはない喜びがあります。
もちろん、それは黙っていて与えられるものではなく、自ら見出し、つくりだすものです。
私は、生徒にもよく言っていました。
労せずして、幸運にも訪れる喜びがある。
それはありがたく享受しよう。与えられる喜び。
しかし、苦労ある生き方の中にある喜びがある。つくる喜び。
深く、味があるのは、こっちだ。
そのことを覚えておいてほしい。
自分にも言い聞かせていました。
最後になりますが、小児科医、東京大学先端科学技術センターの熊谷晋一郎さんは「自立は、依存先を増やすこと」と言っています。
上手に依存することが、自立。
それは子どもたちも、大人たちも変わりません。
困ったときは、誰かに相談すれば大丈夫です。
辛いときは、学びましょう。
何が助けになるのか。
自分に何ができるのか。
それは進んでみなければわかりません。
管理職の道へ進む皆さんに、エールを送り続けます。
〈参考〉
▼【人生を変えた恩師】教育者としてもリーダーとしても、最高のお手本となる校長に仕えたことは、私の幸せです。
▼【ヒヤリ!ハット!】繰り返される個人情報流出の理由、防止について考えてみましょう【高校教員応援マガジン】
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